第28話 ウォークの町へ

「健! 準備できた?」

「ああ、大体できたぞ。大翔は?」

「僕も大丈夫」

 俺たちはバカンスに行くための準備をした。

 といっても、二泊三日の小旅行だから、着替えくらいしか持ち物はない。


「ウォークの町って、どんなところかな?」

「海辺の町ってレンは言ってたから、魚介類がおいしいんじゃないか?」

「わあっ! それは楽しみだね!」

 大翔は嬉しそうに笑うと、俺に抱き着いてきた。

「はしゃぎすぎじゃないか? 大翔」

「だって、健と旅行なんて、小学校のサマースクール以来じゃない?」


 俺は抱きつかれたまま、頬をかいた。たしかに、二人で旅行に行くのは久しぶりだ。

「それじゃ、明日の朝起きられるように、早めに寝ようか、大翔」

「楽しみで眠れないかも……」

 そういっていた大翔は部屋にはいると、すぐ静かになって、やがて寝息が聞こえてきた。

「……楽しみ、だな」

 俺も目を閉じて、眠りについた。


 翌朝は、青い空がどこまでも広がっていて、絶好のバカンス日和だった。

「それじゃ、看板に三日間お休みするって書いておくね」

「ああ」

 大翔は表の看板の上に、三日間お休みします、と書いた紙を張り付けると、大きな荷物を持ち上げた。


「いってきまーす!」

 俺たちは誰もいない家に別れを告げると、ウォークの町にむかう馬車を待った。

 街はずれの看板の下に、だんだん人が集まってくる。みんな、たのしそうな表情で大きな荷物を抱えている。

「あ、健! あの馬車じゃない?」

「ああ、そうだな」


 六人は乗れそうな大きな馬車が三台やってきた。

「ウォークに行かれるお客様はお乗りください。料金は前払い、銅貨50枚です」

「行こう、健」

「ああ」

 俺たちはそれぞれ銅貨を馬車の御者に渡すと、荷台に乗り込んだ。

「それでは、ウォークの町に向けて、出発します!」


 馬車が動き出した。俺と大翔はぴったりとくっついて、馬車の揺れに身を任せた。

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