第24話 森の探索

「ここに来るのも、もう何度目だろうね」

「そうだな」

 俺と大翔がはなしていると、アイラが声をかけてきた。

「今日は奥まで行ってみる?」

「……いけるところまで行ってみようか」

 大翔は杖を構えてから、アイラに言った。

 俺も剣を鞘から取り出して、右手に握る。


「そろそろアイラの家だよ」

 アイラはひらひらと住んでいた木のそばに飛んでいった。

「この辺には野菜が沢山生えてるんだよね」

 大翔は背負っていた袋をひろげ、ニンジンや玉ねぎ、ジャガイモを掘り出した。


「俺は向こうで探してくる」

 そう言って、俺は木の反対側に向かった。

 少し広くなった草原には、キャベツやトマトがなっていた。

 俺はめぼしい野菜を取って、自分の持ってきた布の袋に丁寧に入れていった。


「アイラ、木の実摘んでくる」

 そう言うとアイラは木苺の木の方に袋を小脇に抱えて飛んでいった。

 しばらくして、アイラが戻ってきた。

「沢山採れたよ!」

 アイラの持っていた袋は木苺の実でパンパンになっている。


「あとは……肉が手に入ればいいんだけど……」

 大翔が言うと、アイラが答えた。

「それなら、動物たちの水飲み場があるよ。案内するね」

 アイラが森の奥に進んでいったので、俺たちも後に続いた。


「ここだよ」

 アイラの案内した場所には、小さな川が流れていた。

 川の水は透明で美味しそうだ。

「あ、なにかの足跡がある」

 大翔がそう言ったとき、茂みがざわざわと音を立てた。


「何かいるぞ!?」

 俺は剣を構えた。

「ブモーツ!!」

 茂みから、大きなイノシシが現れた。


「ウォーターアロー!!」

 大翔が呪文を唱えると、水の槍がイノシシに突き刺さった。

「ギッ!?」

「やあっ!!」

 俺は剣を振り下ろした。イノシシの頭が、がくり、と下がった。


「やったか?」

「……」

 大翔がおそるおそるイノシシに近づいた。

「……死んでる」

「よし! じゃあ、持って帰ろう!」


 俺たちはイノシシを大きな木の枝に括り付けて、運ぶことにした。

「重いな……」

「うん」

「頑張れ! 健! 大翔!」

 アイラはのんきに俺たちの周りを飛んで励ましの声をあげている。


 俺たちは森を出て、宿屋に帰った。

「じゃあ、イノシシを解体するぞ」

「うん」

 大翔と俺は協力しながら、イノシシを毛皮と肉に切り分けた。


「大きいイノシシだね」

 大翔は汗をぬぐいながら言った。

「ああ」

 俺たちはイノシシの肉の半分をベーコンや干し肉に加工した。もう半分は冷蔵庫に入る大きさに切って、その中にしまった。


「野菜も沢山採れたね」

「ああ、そうだな」

 大翔は持ち帰った野菜もしまうと、冷えたお茶を持ってきてくれた。


「はい、健、アイラちゃん、どうぞ」

「ありがとう」

「いただきまーす」

 俺とアイラがお茶を飲んでいるのを見てから、大翔もお茶を飲んだ。

「今日は楽しかったね」

「ああ、そうだな」


 俺たちは順番にシャワーを浴びて、夕食の準備を始めた。

「今日は、イノシシのステーキだよ」

「美味そうだな」

「やったー!」


 食事を終え、寝室に行こうとした俺に大翔が声をかけた。

「明日も、楽しいといいね」

「……そうだな」


 俺たちはそれぞれの部屋に戻り、ベッドに入って目をつむった。

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