第8話

 新しい住居に移り住んで最初の日は、埃っぽい寝室を最低限寝られるように掃除をした。もう一部屋片づけるのは大変そうだったので、大翔と俺は一緒に眠ることにした。


翌日、早起きした俺たちは、生活をする場所から掃除をはじめた。

「すごい埃だな、大翔」

「そうだね。僕、洗濯から始めるよ」

「それじゃ俺は埃をはらって掃き掃除をしよう」

「頑張ろうね」

 大翔の笑顔に、思わず俺も微笑む。


 俺はキッチンの掃除を始めた。

 幸い、キッチンの油汚れは少なかったので、棚を拭いたり床を拭いたりするだけで使えそうな状態になった。

 次に掃除をしたのは二階の寝室だ。


 シーツを外し、大翔に渡す。

「ほかに洗うものない?」

 大翔の問いかけに俺は答えた。

「今のところはないかな」


 大翔は寝室にあったパジャマや、食堂にあったテーブルクロスなんかを一生懸命洗っては、裏庭にあった物干しにかけていた。

「天気が良くて、助かったね」

「そうだな」

 俺はキッチンの掃除を終えると、客室と食堂の掃除を始めた。

 モップなども倉庫に置いてあったので、特に困ることもなかった。


「健、そろそろおなかすかない?」

「そうだな……」

 食堂にかけられた時計は、お昼の時間を示していた。

「食事、どうしよう?」

 大翔はくびをかしげて聞いてきた。

「昨日買ったパンとチーズ、卵が残ってなかったか?」

「それは今日の朝ごはんにしたじゃない」


 大翔の答えに俺は首をすくめた。

「ああ、そうか。じゃあ、買い出しに行こうか」

「うん。あ、ちょっとまってね」

 大翔は洗いかけの洗濯物をジャブジャブ洗い、干してから言った。

「お待たせ。それじゃ、町に行こう」

「ああ」


 金貨は俺が胸ポケットの中にしまい、銀貨と銅貨は大翔がカバンにしまった。

「今日は服も買おうよ。この格好じゃ目立っちゃう」

 大翔は改めて学生服を見せるように、両手を広げた。

「そうだな」


 確かに、町の中でも時々振り返ってみられることがあった。

「あと、本屋さんにも寄りたいな」

 大翔の言葉を聞いて、俺は不思議に思った。

「いいけど、なにかほしい本があるのか?」

「うん、ちょっとね」


 大翔はそれだけ言うと、町の中心に向かって歩き出した。

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