第8惑星(4)穴という穴をほじくられる

「えい!」


「おっと!」


 ビアンカの振るった注射器を俺はなんとかかわしてみせる。あ、危なかった……。それを見たビアンカが苦笑する。


「避けないで~怖くないから~」


 いや、基本注射って怖いから。それに『避けないで』って~フレーズのチョイス、絶対におかしいから。ネラが苦笑する。


「先生、しっかり狙って下さい~」


「分かってる……って!」


「どわっ!」


 俺は再び注射器の攻撃をかわす。鋭さがあるが、かわせないほどではない。


「くっ……」


 ビアンカが少しふらつく。こ、これは……ビアンカたちの様子もおかしいのか?


「大丈夫~?」


「大丈夫、大丈夫……本気でいく!」


「うおっ!」


「!」


 ビアンカの振るった注射器を、俺は三度かわす。針が壁に刺さる。俺はそれを見て、注射器を手で思いっきり払いのける。


「おらっ!」


「む!」


 針が折れ、注射器が床に転がる。俺はとりあえずパンツだけを急いで履いて、その部屋から抜け出そうとする。ケイたちはどうしたんだろうか? 先ほどの様子から判断すると、睡眠薬のようなものが料理に混ざっていたのだろうか? しかし、ビアンカたちの様子もおかしいのはどういうわけだろう? ネラの呆れ声が聞こえてくる。


「だから、も~ビアンカ、『コスプレキノコ』をウチらの料理に混ぜないでよ~」


「う、うん……」


 コ、コスプレキノコ⁉ な、なんだそりゃ⁉


「この金星に生えるキノコを食べると、無性にコスプレしたくなってくる上に、副作用で頭がぼや~っとしてくるのよ」


 と、とんでもないキノコだな! とにかくこの場から離れないと!


「し、失礼します!」


「まだ治療は終わってないわよ~」


「治療じゃないでしょう!」


「仕方ない、荒療治と行きますか……!」


「はううっ⁉」


 ネラの両人差し指が俺の尻の穴にぶっ刺さった。パンツを履いていて助かった……ネラがケラケラと笑う。


「あら~こんなに見事にお注射出来るとは……手袋しておいて良かった~」


 あまりにも予想外の攻撃に反応することが出来なかった。いや、予想がついても反応は難しかったかもしれない。なんせ腕利きの賞金稼ぎの浣腸だ。俺でなくてもかわせないね。し、しかし、これは……なんというか……。


「あ、ああ……」


 初めての感触、というか快感に俺は崩れ落ちてしまう。こ、これはあれか? いわゆるひとつの……『開発』されちまったってやつか⁉ たった一撃で……恐るべし!


「あ、大人しくなった……媚薬の効果も出たかな?」


「ベッドに戻りましょうね~」


 薄れていく意識の中、俺の体が持ち上げられる。やや間があってから俺は意識を取り戻す。


「……う、うう……んん⁉」


「あ、起きた~?」


「⁉」


「あ、暴れないでね~」


 暴れようにも体ががっしりと固定されて動けない。自分の状態を確認する。俺は横向きの体勢で寝ている。頭がビアンカの柔らかい膝に乗っている。こ、これは膝枕……⁉


「え、え?」


「耳かきしてあげるから~」


「は?」


「溜まっている耳垢を綺麗に取ってあげるから、アタシ上手いんだよ~」


「は、はあ……」


 俺はわけも分からぬまま、頭をビアンカに委ねる。


「良い子だね~。じゃあ、耳掃除していくね……うん、結構溜まっているね……」


「あ、あ……」


 ビアンカが耳かきで俺の耳の穴を掃除していく。大雑把な性格かと思ったが、どうしてなかなか繊細だ……。思わず吐息がこぼれる。女医の恰好はあまり意味ないと思うのだが……。あれか、耳鼻科の先生ってことか。俺はとりあえず自分で自分を納得させる。


「は~い、次は反対側ね~」


「むお⁉」


「どったの~?」


「い、いえ……」


 体を反転させられた俺の視界に飛び込んできたのは、ビアンカの豊満な胸だ。その胸の谷間に吸い込まれそうだ……っていうか、実際吸い込まれている? か、顔が密着している⁉


「深いところの垢も取ろうね~」


「むむむ……」


 頭と頬あたりに胸が乗っている……! ど、どういうことだ、これは……。


「ウチも綺麗にしてあげようかな~」


 ネラの声がする。綺麗にって、まさか、尻の穴を⁉ お、お手柔らかにお願いしたい。


「え、えっと……」


「さてと……」


「ふえっ⁉」


 俺は驚いた。ネラの細やかな指が俺のへその穴をほじくり始めたからである。


「こういうところもちゃんとお手入れしないとね~」


「へ、へああ……」


 ローションかオイルかボディーソープのようなものを塗りたくり、ネラがあらためて、俺のへその穴をいじってくる。未知の体験に俺は思わず変な声を出してしまう。


「ふふっ、変な声……」


「い、いや……」


「もっと変な声聴きたいなあ~。ふっ……」


「のおっ⁉」


 ネラが俺の脚を広げ、太ももを脇で挟みながら、おへそのあたりに息を吹きかけてくる。爽やかな風を感じた俺の下腹部は熱くなる。ビアンカが笑う。


「あっ、じゃあ、アタシはこっちの穴にしよっかな~」


「ぬえっ⁉」


 ビアンカが体の向きを変えて、完全に仰向きになった俺の鼻の穴をティッシュで拭きとり始める。こ、これまた初めての体験⁉ そ、そして、豊満な胸が俺の顔の上半分に乗っかってきた! これが本当の眼福ってか……。ネラが笑う。


「ふふっ、治療は順調ね……」


 治療なのか、これ?


「お次の穴はこっちかな~」


「ふへっ⁉」


 ビアンカの指が俺の口に伸びてくる。


「ティッシュで拭くのもあれだから、舌で舐めとってあげようかな~」


「!」


「じゃあ、ウチは最後に残ったもう一つの穴を……」


「‼」


 さ、最後の穴⁉ も、もうあれの穴しかないじゃないか! 俺の期待があれに集中する。


「見つけた! なにをやってんのよ!」


「⁉」


 ケイが飛び込んできた。同時に俺の溜まっていたものが出た。俺、再び終了のお知らせ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る