第9惑星(1)ドタバタ収録

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「いや~マネージャーって本当懲りないよね~」


「い、いや、今回はあのジェメッレ=アンジェラにハメられたようなもんだろう……」


 俺はコウの言葉に弱々しく反論する。なんか俺の料理にも媚薬?的なものを盛られたみたいだからな……アンジェラというか、ディアボロだったな、間違いなく……。


「ケイの話では満更でもなさそうだったそうだけど?」


「うっ……」


「アユミが詳細を知りたがっているけど、教えても良い?」


「後生だから、それはやめてくれ」


 決してあんなピュアな子に聞かせるようなエピソードではない。


「じゃあさ~そこのお店のパフェ奢ってくれない~?」


「次の仕事が終わったらな」


「あ~そうやって逃げるんだから~」


「逃げてるわけじゃない」


「さっきも仕事一つやったじゃん~」


「今日はもう一つあるんだ。急がないと遅れるぞ」


「おおっ、いわゆるケツァルコアトルってやつだね♪」


「……それを言うなら、ケツカッチンな」


「ああ、それそれ♪」


 なんかギョーカイ用語に詳しくなってきているな、俺……。しばらくすると俺たちはある建物の前に到着する。俺はコウに告げる。


「……これが終わったら、さっきのパフェを奢ってやるよ」


「マジで?」


「ああ」


「へ~なんでも言ってみるもんだね~」


 コウが悪戯っぽく笑う。


「……とにかく、しっかり頼むぞ」


「大丈夫、大丈夫。ドンと任せておいてよ♪」


「……」


「へっ? もしかして不安だったりする?」


「……すっごく不安だ」


「なんだよ、信用ないな~」


「信用してないわけじゃないが……なんというか、適性がな……」


 俺は小声で呟く。コウが首を傾げる。


「え?」


「いいや、なんでもない。ケイも言ってたが、出来次第では次に繋がるからな」


「オッケー♪」


 コウは軽い足取りで建物の中に入っていく。俺もそれに続き、挨拶する。


「おはようございます。よろしくお願いします」


 そんなことを繰り返している内に、あっという間に時間がやってきた。


「……3、2、1、キュー」


「は~い♪ みんな、こんにちは! ところによってはおはようかな? こんばんはかな? 夜だっていう方もいるよね~それじゃあ~お休み~いやいやw寝てもらっては困るよ。え? 自分で言ったんじゃんって? そりゃあそうだ、メンゴメンゴ……」


「……うん」


 滑り出しはまあまあだな。しかし、コウにラジオパーソナリティーを任せるとは、この放送局もギャンブラーというか……。とりあえず初回はテスト的な意味合いも兼ねて、収録配信ということだから、心配はなさそうだな。


「いや~最近のトピックはなんといってもあれだね、『ジェメッレ=アンジェラ』とのゲリラライブ配信! ……今、ジェメッレ=アンジェラってよく言えたなって思ったっしょ? コウちゃんをあんまり馬鹿にしちゃダメだよ~? 台本くらい読めるからwそう、台本にしっかりと書いてあんのwwどんだけアタシ信用ないのwww」


「台本も用意してもらったのは正解だな」


 俺はブースの外でうんうんと頷きながら小声で呟く。


「急な配信にも関わらず、多くの方に配信を見てもらったみたいでね……とても嬉しかったです。投票もしてくれてありがとう~マジサンキュー♪ え? ジェメッレ=アンジェラとはなにかあったのかって? 別になにも無いよ~」


「限りなくガチで殺し合っただろ……」


 アイドル怖い、いや、賞金稼ぎ兼アイドル怖いか、この場合は……。


「その後、意気投合してね~ジェメッレ=アンジェラの二人には、食事会にも呼んでもらってさ、金星料理を頂いたよ。いや~マジで美味しかったよ、ネラちゃん、ビアンカちゃん、ごちそうさまでした……って聞いてないかw」


「う~ん、心なしか笑顔が引きつっているような……」


 睡眠薬入りの料理を食わされて……文字通り一杯食わされた形だもんな……。


「それじゃあ、そろそろ参りましょうか! 『ギャラクシーフェアリーズのオールプラネットポンポン』! この配信は全太陽系に……」


「……よし」


 オープニングトークもこなし、タイトルコールも済んだ。大丈夫そうだ。


「えっと、続いてフリートーク……あw台本読んじゃったwwそうだね~その食事会の後なんだけど、アタシらのマネージャーがさ、色々と性癖を開発されたみたいで……」


「ちょ、ちょっと止めて下さい!」


 全太陽系に向けて何を言い出すんだ。マジで収録にしておいてもらって良かった……。

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