07、俺の力を封じたニセ聖女め出てきやがれ!

『そなたの精霊力を封じたのは、ラピースラ・アッズーリという女か?』


「いや、名前は聞いてないんだ――」


 ラピースラ・アッズーリという名はどこかで聞いた覚えがあるのだが、思い出せない。


『すまぬ。ラピースラが生きているわけはない。あやつは千二百年前、わらわをこの地に封印した人間じゃ』


 そういえば多種族連合ヴァリアンティ自治領の隣が聖ラピースラ王国という国名だ。なにか関係があるのかも。


「なんでばーちゃん、封印されちまったんだ?」


『ラピースラは人族としてはあり得ないほどの魔力を持っておってのぅ、魔神アビーゾに魅入られてしまったのじゃよ』


「魔神アビーゾってマジでいんの!?」


 子供向けのおとぎ話かと思ってたんだけど。


『わらわたち四大精霊が、オリハルコン製の鎖で海底の大岩に縛りつけたのじゃ。それゆえにこの世界は生き物が暮らせるようになったのじゃよ』


「ばーちゃん、すげぇんだな!」


『そうじゃそうじゃ』


 ほくほくしていたばーちゃんの表情がふと曇った――ような気がした。ごめん、ドラゴンの表情って分かりにくいんだ。


『しかし―― そなたが受け継いだ無限の精霊力を封印する者がおるとは穏やかじゃない。また魔神に操られる者が現れたのでなければよいが――』


「なんで深海に封印されてるのに、人間を操れるんだよ?」


『ラピースラ・アッズーリは聖魔法教会の修道女だったのじゃが、毎日異界の神々に祈りを捧げていたはずが、魔神の生霊いきりょうに目をつけられてしまったのじゃよ。極端に霊感の強い人間とならアビーゾは接触できるようじゃ』


 深海に封じられてるのに、生霊は地上をふらふらしてやがんのか。魔神は復活のときをねらって、自分を大岩に縛り付けた四大精霊を封印しようとしたのだろう。


『じゃが魔力と霊感は異なるものじゃ。めったにラピースラのような人間は出てこないじゃろう』


 ばーちゃんを封印したあとラピースラがどうなったかは分からないが、現在まで魔神が復活していないことは確かだから魔神の計画は頓挫とんざしたのだろう。


 だが俺にはするべきことがある。聖石、もとい封印石を指先でもてあそびながら俺は言った。


「こんなふざけた石っころを俺の身体に埋め込んだヤツを探し出してやるんだ」


 黒い破片をはじいたとき、俺はハッとした。


「いやその前に、ここからどうやって出るんだよ――」


 はるか高い天井をみつめる。太陽光がまったく届かないってのに、壁には植物らしきツタがからまっている。


『そなたの翼で飛んでいけばよかろう』


「翼?」


 オウム返しにつぶやいて、俺はばーちゃんの視線をたどって振り返り――


「うわぁぁ、なんだこれ!」


 また大声をあげた。


「肩から角生えてるし、背中には羽生えてるし、こんなんじゃ服着らんないじゃん!!」


 両肩からは水晶のように透明な枝分かれした角が生え、背中からは真っ白い翼が伸びていた。そして今気付いたが髪も膝あたりまで伸びている。


『それがそなたの本来の姿じゃ。封印されていた精霊力が戻って一気に成長したのじゃろう。髪が伸びたのもそのせいかと』


「てことは身長も!?」


 慌てて立ち上がるが変化した気がしない。


『小柄でかわいい子じゃのう』


「ぜんっぜん嬉しくないんだが?」


 ばーちゃんをにらみつける俺。


『目つきがきついのが玉にキズじゃが』


 俺は腰の魔法剣マジックソードを抜くと、


「なんで髪伸びるのに背が伸びねぇんだよ……」


 ぶつぶつ言いながら適当に髪の束を手に取って切ってゆく。


『身長の伸びには精霊力が関わっていなかったのじゃろうな。つまりそなたの美しい銀髪は多少なりとも精霊力を帯びているということじゃ』


 ふぅん。魔道具屋で売れたりしねぇのかな? あ、魔道具と言えば――


「なあ、俺に精霊力が戻ったんなら、この魔法剣マジックソードに魔力こめられないかな?」 


『魔力を想定して作られているとしたら、精霊力では強すぎるのでは?』


「強すぎる? そんなら大は小を兼ねるだろ」


『じゃが――』


 ばーちゃんの制止も聞かず、俺は剣を構えた。


こたえよ、魔法剣マジックソード!」



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ジュキエーレは本当に魔力を操れるようになったのか? いや、精霊力が魔力の数倍も強いものなら、むしろマジックソードの運命やいかに!?


明日朝の更新をお待ちください!

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