第21話 お披露目会

 さて、〈四季森〉に旅立つ朝だ。

 約束通り、俺の家の前に3人集合したわけだが、全員、どこかソワソワしている。

 気持ちはわかる。この日のために作った渾身の武器品評会がこれからおこなわれるのだから。


「じゃあまずイロハ君、作った武器を見せてくれる?」


「俺からかよ……」


 俺は鞘に収まった“クリスタルエッジ”を2人に見せる。


「俺はライトメタルとストロングメタルを使って剣を錬成した。名前は“クリスタルエッジ”……軽くて強固な武器になってると思う」


 と前置きし、

 ヴィヴィに渡すと酷評されそうで怖いから、まずはフラムに渡す。


「ホントだ! 軽いよ! 私でも振り回せるぐらいっ!」


 フラムは手の平に“クリスタルエッジ”を乗せ、上下させた後、ヴィヴィに“クリスタルエッジ”を手渡す。


「……いい出来じゃない」


 ヴィヴィは剣を鞘から引き抜く。


「武器の軽さはもちろん、刃の切れ味も見るからに悪くない。

 2つの鉱石を組み合わせて刃を作るのは、鉱物学の専門家でも難しいのに、よくここまで……」


 ヴィヴィが言うのだから、本当に良い出来なのだろう。

 もし武器の出来が悪かったら容赦なく罵詈雑言を浴びせるタイプだからな。


「それに……見た目の美麗さは目を張るわ」


「そりゃどうも」


「ホント綺麗な見た目だよね~! この刀身の色、好きだな、私!」


 武器に見た目の綺麗さなんて必要ないけどな。

 これにプラスして“虹の筆”を持っていく。“クリスタルエッジ”と“虹の筆”が俺のおもな手持ちだ。


「次、私の番ね!」


 フラムが手を挙げる。


「私が作ったのはこれ! “炎月えんげつ”っ!」


 フラムが出したのは二振りの真っ赤な輪っかだ。

 なんかの資料で見たことがある。たしか名前は、


「チャクラムね」


 そう、チャクラムだ。

 たしかあの金属の輪っかを投げて攻撃する投擲とうてき武器だったはず。


「ブレイズメタルを使って錬成したんだ~」


「でもお前が錬成したってことは、それも……」


「うん、爆弾だよ」


 俺は二歩、フラムから距離を取る。


「待って! 今回は安全な爆弾だから!」


「爆弾に安全もくそもあるか!」


「本当だって! 思いっきりマナを込めて投げてぶつけると爆発するけど、マナを込めなければ普通のチャクラムとして使えるんだよっ!」


「本当だろうな……」


 ヴィヴィが興味深そうにチャクラムを見る。


「ブレイズメタルはマナを吸収することで発熱する。これにあなたのマナ特性を組み合わせたのね」


「その通り! 私のマナは錬成する物全部爆弾にしちゃんうんだけど、素材によって起爆条件は変わるみたいでね。ブレイズメタルの場合だと起爆条件が『一定以上の温度』だったから、色々と好都合だったんだ」


「一定以上の温度ってのはどれくらいなんだ? まさか日光とかでチャクラムが熱くなっても起爆するんじゃないだろうな」


「いやいや、かなーり熱くならないと起爆しないよ。それこそ火で炙るぐらいはしないとね」


 つまり、マナを込める→ブレイズメタルの特性により“炎月”が熱を帯びる→起爆条件を超える温度へ→爆発。というわけか。


「最後は私ね」


 ヴィヴィは背負っている長物を前に持ってくる。

 それは、杖だ。基本は木で、杖の先に黄色の金属が埋め込まれている。……あの色はバッテリーメタルの色だ。


「バッテリーメタルを動力源に使った杖よ。名前は“ライトニングロッド”」


「そんで、なにができるんだ? その杖」


「見てなさい」


 ヴィヴィは薄く笑った後、杖を天に掲げた。


――数秒後。


 小さな雷が目の前に落ちた。


「うわっ! 雷が落ちてきた!?」


「バッテリーメタルはマナを込めることで発電する。その雷を溜めて放ったまでよ。溜める時間が長いほど、雷の威力は上がるわ」


 やべー女がやべー武器を手にしてしまった!?


「こうなると私とフラムさんは後衛で、イロハ君は前衛ってことになるわね」


「前衛1人か……正直自信ないな。剣を握るのだって昨日が初めてだったし、魔物と戦ったことも当然ない」


「わ、私も魔物と戦うの初めてだから……不安だな」


「私は何度かあるけど……そうね。もう1人ぐらい戦闘経験の豊富な駒……じゃなくて、仲間が欲しいところね」


 駒って言ったな、いま駒って言ったなこの女。


「戦闘経験豊富な仲間ね……」


――そうだ、アイツなら……。


「1人あてが居る。しかも絶対協力してくれる奴だ。どうする? 声かけるか?」


 フラムというより、ヴィヴィに対しての問いだ。コイツは群れるのが嫌いなタイプだからな。


「……戦力が増えるなら、断る理由はないでしょ」


「私も賛成!」


 ヴィヴィの許可は貰った。

 俺は2人を連れて、昨日お邪魔したばかりの灰色の家を訪ねる。



「ジョシュア―! 起きろー!」



 ドンドンドン、と遠慮なく扉をノックする。


「だーっ! うっせぇな! 朝っぱらから誰だこの野郎!」


 ボサボサ髪のジョシュアが扉を開き、怒声を浴びせてくる。


「これからフラムとヴィヴィと一緒に森にピクニックに行くんだが、お前も一緒にどうだ?」

「準備してくる!!!!」


 3人目の仲間ゲット。

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