第19話 コノハ＝シロガネ
「シロガネ……！？」
シロガネは俺と爺さんのファミリーネームだ。
まさか――
「爺さんの、アゲハ＝シロガネの親族……ですか？」
いつかのヴィヴィと同じ質問を投げる。
「そうだよ。コノハはアゲハ先生の実の息子だ」
この事実に驚いてるのは俺だけだ。
フラムは「イロハのお爺さんの息子ってことは、イロハのお父さん？ それとも叔父……？」とそもそも事情を飲み込めてない。
問題なのはヴィヴィの反応だ。まったく驚いていない。
「ヴィヴィ、知ってたのか？」
「ええ。コノハ＝シロガネがここで教員をやっていることは知ってた。正直、あまり良い噂は聞かない人よ」
「あっはは～アイツは偏屈だからね～。拗れまくってるだけで、根は良い奴なんだよ」
とアラン先生がフォローする。口ぶり的に親しい関係なのだろうか。
『偏屈』というワードを聞いてヴィヴィがこっちを見てくる。『どっかの誰かさんにそっくりね』と言いたげだな……。
「爺さんの息子なら、俺の目的に協力してくれるかもな……」
「いいやない。それはない。むしろ君には強く当たると思うよ」
「どうしてですか？ 俺とそのコノハっていう人は関係上は義兄弟じゃないですか」
「んー、会えばわかるとしか言えないね。ちなみにヴィヴィさん、彼は数少ないファクトリーに属してない教員だ。もしファクトリーを作りたいなら彼を勧誘するのがいいと思うよ」
「……顧問はアラン先生に頼もうと思っていたのですが」
「同時に複数のファクトリーの顧問はやっちゃいけないんだ。ごめんね」
「それは……厄介ですね」
ヴィヴィはコノハという人にあまり会いたくない感じだな。
「とにかく会ってみようよ、そのコノハって人に！」
「だな」
「……面倒だけど、仕方ないわね」
「暇だし、私も付き合うよ！」
「〈四季森〉は野良キメラが出ることもあるから、気を付けてね」
「野良キメラ？」
「太古の錬金術師が作ったキメラの子孫だったり、錬成されてすぐに捨てられたキメラのことよ。一般的には魔物と呼ばれているわ」
「しっかりと装備を整えてから行くんだよ」
装備と言われてもな……。
「どっかで剣とか槍とか売ってるかな？」
フラムが首を傾げて聞く。
「〈ウェポンファクトリー〉なら売ってるよ。でも武具は高いからね、錬成して作ることをおススメするよ」
「ですが、武器の素材を集めるのにも結局危険な場所に行かなくてはならないですよね」
ヴィヴィが言うと、アラン先生は部屋の奥にある、色の悪い義肢の山を指さす。
「ここの廃材なら好きに持って行っていいよ。錬成劣化している物ばかりだけどね」
「また知らない用語が出てきた。ヴィヴィ、説明頼む」
「錬成に失敗して品質を劣化させることを錬成劣化って言うの。つまりあそこにある失敗作は素材に使った鉱石より、遥かに品質が劣化しているってわけ」
「……言っちまえば焦げた料理か」
「でも元は高級素材よ。使いようはあるわ。――ありがたく頂きます、アラン先生」
「どうぞどうぞ」
廃材の山の前へ行く。
適当に持っていっていいということだが……どれも酷い色をしているな。磨けば多少マシになるだろうけど。
金属製の腕や足がメインで落ちている。金属の色は大きく４つ。
銀色の金属が４割ほど。
青色の金属が３割。
赤茶色……銅色の金属が１割。
黄色の金属が１割。
その他革製品や木製製品が１割。この辺りは例えば剣をしまう鞘とかに使えそうだな。
「金属の種類は大きく４種類ってところか？」
「そうみたいね。銀色の金属はストロングメタル、耐久性に優れた金属。赤銅色の金属は発火作用のあるブレイズメタル。黄色の金属は発電作用のあるバッテリーメタル。青の金属は比較的軽いライトメタルよ」
耐久性、炎属性、雷属性、軽量性の４択か。
「とりあえず一旦ここで解散しましょう。
さすがに今回ばかりは１人で行くとは言わないんだな。
それだけ魔物は危険ってことか。
「俺は異論ないけど、フラムは１人で大丈夫か？ お前が錬成する物、全部爆弾になっちまうんだろ？ 装備なんてロクに作れないだろ」
「大丈夫！ ちょっと作ってみたい物があるんだ」
「そうか？ ならいいけどよ」
ヴィヴィの提案通り、俺たちはそれぞれ別れて装備の製作をすることにした。
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