第13話 家族の関係

 2人の絶世の美女姉妹が、お互い面と向かいながら固まっていた。


(どうなっているんだ……?  この姉妹の関係は何なんだ……?)と俺は考えていた。


 しばらく沈黙が続いた後、最初に口を開いたのはユナだった。


「あのね……。私、この人の娘だよ!」


 それを聞いて、アイカは驚いた表情をする。


「本当なの?」


「うん……。本当」


 アイカは複雑な表情をしていた。そして、何かを考えるような仕草をする。


 その後、アイカは再び笑顔になった。


「久しぶりね……ユナ……」


「お姉ちゃん……?  なんで、こんな所にいるの?」


「えっと……。ちょっと用事があって来たんだけど……まさか、貴方がいるとは思わなかったわ……。でも、会えて良かった……。元気そうじゃない」


「私は元気だけど……。お姉ちゃんこそ大丈夫?」


「私は平気よ」と彼女は答えた後、「それより何処に居るの?  一緒に住んでるんでしょ?」


「アパートにいるよ……」


「ふーん……。じゃあ、案内してくれる?」


「いいけど……。どうして、ここに来たの?」


「うーん……。実はね……。貴方が来た世界が、どんな所か見てみたくて来ちゃったの……」


「そうなんだ……」


「ねぇ……良いでしょ?」


「別に構わないけど……。パパは忙しいんだよ……」


 ユナは俺の方を見た。


 俺はアイコンタクトで、(任せてくれ!)と答えた。


 そして、アイカは俺に向かって歩いて来る。


 アイカは俺の目の前まで来て立ち止まった。近くで見ると本当に綺麗だ。


(しかし、一体どういう関係の姉妹なんだ……?)と俺は疑問に思う。


 すると、アイカは俺の目を見つめてきた。


 彼女の目を見つめていると、心の底を見透かされているような感覚になる。


「貴方のアパートまで行ってもいいかしら?」とアイカは俺に囁いた。


 俺は黙って、小さくコクッとうなずき、了承の意を伝えた。


「ありがとう……」と彼女は言い、続けて「じゃあ、行きましょう」


「ちょっと待ってくれ……」


「何?」とアイカが振り向く。


「ちなみに、君も向こうから来た異世界の人間なのか?」


「そうよ……」


 アイカは少し寂しげに微笑んだ。そして、そのまま歩き出す。


 俺はアイカの後について行く。


 その途中、アイカはユナと会話していた。


「ユナ……あなたは一族の敵から捕らわれたんでしょ?」


 アイカの言葉を聞いたユナは一瞬ビクッとして、その後うなずく。


 それから2人は無言で暫く歩いた。


(この姉妹の関係……。それにさっきの話……。ユナを捕らえたのは、何者なのか……。気になるが、今は何も聞かない方がいいだろうな……。)


 そんな事を考えているうちに、俺達はアパートに到着した。


 アイカは、キョロキョロと周りを見ながら歩いている。


 俺はアイカに聞かれないように小声でユナに話しかけた。


「ユナ……。アイカの性格はどうなんだ?」


「えっ?  性格?」


「そうだ……」


「お姉ちゃんの性格は……」と言って少し考えた後、言葉を続ける。


「冷酷なところがあるかも……」


「そうか……」


「うん……。あと、かなり強いよ……」


「なるほどな……」


 俺は納得して、それ以上何も言わなかった。


 その後、部屋に入ると、アイカは早速ソファーに座る。


「へぇ~ここで、ユナと二人で暮らしているんだ?」


「ああ……」


「ふーん……。ところで、ユナは何時から住んでいるの?」


「 いつからかな……。半月前からかな……?」


「そうなんだ……」


「ねえ、お姉ちゃん。どうして急に此処に来たの?」


「それは貴方が家出したというのを最近聞いたからよ」


「そうだったんだ……」


「心配したんだから……」


「ごめんなさい……」


「なぜ、マヤやユナの父親から、この世界にいることを教えてもらわなかったんだ?」


 と俺は姉妹や家族の関係性に疑問を抱いてアイカに聞いてみた。


「教えてくれるわけないじゃない……」


「なんで?」


「だって、母親が違うからよ……」


「そうなのか?」


「ええ……。私の母は側室でマヤ、ユナの母親は正室よ……。そして、お父様は王族なの……。だから、私達の家庭は複雑だったの……」


「なるほどな……」


「でもね……私はユナが妹で良かったと思っているわ……」


「私もだよ!」とユナは笑顔で答える。


「ところで、ユナ。この世界の生活環境には慣れたかしら?」


「うん!」


「そっか……良かったわね」


 アイカは優しい笑顔で答えていた。


(どうやら、アイカは本当に妹の事が好きなようだな……。)と俺は思った。


「ところで、お姉ちゃん。これから、どうするの?」


「帰るつもりだけど……。貴方は向こうに何時帰ってくるの?」


「私は、もう少しいるよ……」


「そう……。じゃあ、また会いに来るね……」


「うん……」


「それじゃあ、隆司君……。失礼するわね……」


「ああ……。気をつけて帰れよ……」


「ええ……」


 アイカは俺の方を向いて、微笑みながら手を振った。そして、彼女は消えていなくなった。



 俺は、アイカの事を考えていた。


(あのアイカって女……。只ものじゃないな……。 それにしても、ユナの家族は複雑な関係だな……。)


 ユナの方をチラッと見ると目が合った。


「どうかしたの? パパ?」


「いや……何でも無いよ……。それより、ユナはアイカと仲が良いみたいだが、昔からあんな感じの姉貴なのか?」


「うん……まぁね……」と少し寂しげな表情をしながら、ユナは言った。


「そうか……」


「ねぇ……。パパ……」


「んっ? 何だ?」


「今日は一緒に寝たいんだけど……」


「別に良いぞ」


「やった! ありがとう」


 ユナは嬉しそうに笑っていた。


 俺は、(可愛い娘のためなら、いくらでも一緒のベッドで寝てやるさ!)と思うのであった。

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