第11話 戦いの後

俺は、自宅へ帰ってきてソファーに座って寛いでいた。


「ふぅ……。疲れたな……」と俺は溜息をつく。


「ねぇ……」とユナが話しかけてくる。


「ん? 何だ?」


「パパ達が私を助けてくれたんだよね!?」と興奮気味に言った。


「まぁ……、そういう事になるかな……」


「ありがとう!」とユナは嬉しそうに言った。


「どう致しまして……」と俺は照れ臭そうに言った。


「それで、何があったか教えて欲しいんだけど……」


「ああ……。いいぜ……。まずは、お前達を誘拐した男がいただろ?」と俺は語り始めた。


「うん……」とユナは真剣な表情で聞いていた。


「あいつは、お前を誘拐して、家族に対しての脅迫材料としていた訳だ……」


「酷い……。許せないよ……」


「ああ……。最低野郎だ! だけど、安心しろ……。奴はもういないから……」


「本当?」とユナは不思議そうに聞いてきた。


「ああ……。マヤが倒したからな……」


「お姉ちゃん凄い!」


「ちなみに、あいつ以外にも仲間がいるらしいけど、そいつらの情報は何も聞き出せなかった……」


「そうなんだ……」


「でも、お前が無事だっただけでも良かったよ……」と俺は言った後、俺はユナをギュッと抱きしめた。


「えっ? どうしたの?」とユナは驚いた様子だった。


「お前が無事で本当によかったよ……」と俺はユナを抱き締めながら涙を流していた。


「パパ……。心配かけてごめんなさい……」とユナは申し訳なさそうに謝った。


「大丈夫だよ……。もう、終わった事だから……」と俺は涙を拭いながら言う。


「パパ……。大好き!!」と言ってユナは俺に抱きついてきた。


「おっ!おい! 急に抱きつくなって! 苦しいだろ?」と俺は焦りながらも、どこか嬉しい気持ちになっていた。


「えへへ! ごめんね! 嬉しくて、つい……」


「全く……」と俺は苦笑いを浮かべた。


 そして、ベッドの上で眠りについたのである。



 翌朝、目が覚めると俺はリビングへ向かった。


「おはよう!」とユナが元気よく挨拶してくる。


「ああ……。おはよう!」


 朝食を食べた後、2人で出かける事にした。


「今日はどこに行く?」


「う~ん……。あっ!そうだ! 動物園に行きたい!」


「よし! じゃあ、行くか!」


 こうして、俺達は動物園へ向かう事にしたのである。



 俺達は電車に乗って、動物園がある駅に到着した。


 駅から出ると、すぐ目の前に動物が見える。


「わーい!  早く行こう!」と言ってユナは走り出した。


「おい……。走るなよ……。危ないぞ!」


 しかし、俺の言葉は聞こえていないのか、ユナはどんどん先に進んでいった。


「はぁ……。しょうがないな……」


 それから、俺達は動物の檻の前にやって来た。


「わぁ……。可愛いね!」とユナが楽しそうに話している。


「ああ……。そうだな……」


「ねぇ……。あっちの方にも行ってみようよ!」とユナは話した後、俺の手を引っ張って駆け出す。


「おい……。そんなに引っ張るなって!」と俺は言いながら付いていく。


 暫くすると、俺達は休憩所の椅子に座っていた。


「ふぅ……。ちょっと疲れたな……」


「うん……疲れちゃった……。でも、楽しいね!」


「ああ……。そうだな……」


「あのさ……」とユナが恥ずかしそうに話しかけてくる。


「ん?  どうした?」


「手を握ってもいいかな? ほら……」と言ってユナは手を前へ差し出してきた。


「分かったよ。いいぜ!」と言うと俺は手を繋いでやった。


「えへへ!  ありがとう!」


「パパは私の事が好き?」


「ああ……。好きだぜ!」


「私もパパの事、大好きだよ!」


「そっか……。ありがとな……」と俺は照れ臭そうに答える。


「うん……」と言ってユナは照れ臭そうに俯いていた。


「そろそろ、帰るか?」


「うん……。帰ろうか……」とユナは言って立ち上がった。


 俺達は家に向かって歩き始めた。


 家に帰ってくると、ユナはソファーに座って寛いでいた。


「はぁ……。疲れた……」


「お疲れ様……」とユナが労ってくれた。


「ああ……」と俺は返事をして、ソファーに座った。


「ねぇ……。何か飲み物持ってくるけど、何が良い?」


「じゃあ、コーヒーを頼む……」


「了解しました!」と敬礼しながらユナは台所へ向かって行った。


「本当に元気だな……。まぁ、それがあいつの良いところだけど……」と俺は独り言のように呟いてから、欠伸をした。


 暫くして、ユナが戻ってきた。


「はい!  お待たせ!  どうぞ!」と俺の目の前にマグカップを置く。


「おう!  サンキュー!」と言って俺は一口飲むと、その美味さに驚いた。


 材料は普通のインスタントコーヒーなのにユナが淹れたからか高級な味わいになっていた。


「どうかな?  美味しい?」と不安そうにユナは聞いてきた。


「ああ!  凄く美味いな!」


「本当!?  良かった……」とユナは嬉しそうな表情をしていた。


「ユナのお陰で疲れが取れたよ……。ありがとう!」


「えへへ!  良かった!」とユナは笑顔で喜んでいた。


「あっ……。そうだ……お前の一族の敵は、お前を誘拐しようとしたんだ、お前の父親はどう考えているんだ?」と俺は思い出したように話した。


「う~ん……。分からない……お父様は何も教えてくれないし……。それに、もし会えたとしても、教えてくれないと思う……」とユナは寂しげに答えた。


「そうか……。じゃあ、俺が何とかしないとな……」


「大丈夫なの?」と心配そうにユナが見つめていた。


「ああ!  大丈夫だよ!」


「そう……。なら、良いんだけど……」とユナは少しだけ安心した様子だった。


「とりあえず、今はゆっくり休もう……」と俺は言って、再びコーヒーを飲み始める。


「うん……。そうだね!」とユナも嬉しそうに返事をする。


 こうして、俺達の休日は終わった。

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