第6話 ストーカー撃退

次の日の朝、俺は登校中に美和に声をかけられた。


「おはよう」


「ああ、おはよう!」


そのまま一緒に歩き始める。すると美和が話し出す。


「昨日、話した事なんだけどさ通学帰宅中にまた、あの男が現れたら気持ち悪いわ」


「たしかにそうだな。俺も不審な奴に注意するようにするよ」


「お願いね。それともう1つお願いがあるんだけど」


「なんだ?」と俺が言うと美和は顔を赤面させながら、小さな声で「今日は私と一緒に帰ってくれない?」と頼んできた。


俺はその言葉を聞いてドキッとした。


だが、「いいぜ!」と答えた。そして、俺と美和はそのまま大学まで歩いていった。


その日の放課後、俺と美和は一緒に帰宅していた。


俺は緊張しながら横にいる美和を見た。


「どうしたの?」と美和が不思議そうに聞いてくる。


「いや、なんでもないよ……」と答えて前を向いた。


しばらく歩いていると、俺は異変に気づいた。


後ろから誰かが尾行しているような気がするのだ。


俺は立ち止まり、美和の方を向き「ちょっと先に行っててくれないか?」


美和は「どうしたの?」と尋ねる。


「後をつけてる人がいるみたいだ」


と俺は答え、後ろを振り返り確認する。


(誰もいない……)と思っていると、電柱に隠れていた男が飛び出し、襲ってきた。


「死ねぇー!!」と叫び、ナイフを突き刺してきたが、俺はそれを軽々と避けた。


「くそっ!外したか……」と男は悔しそうに言い、再び襲いかかってくる。


俺は攻撃をかわすとナイフを持った相手の腕を取り、背負い投げをした。


「ぐはぁ!」と相手は地面に叩きつけられた。


俺はすかさず男の腕を後ろに捻り上げ肩と腕を極め抑え込むと、相手が叫んだ。


「痛てぇ!! 放せよクソ野郎!!」


俺は相手に話しかける。


「おい、お前誰だよ? なんで俺たちの後をつけた?」


「うるせえ! いいから早く放しやがれ!」


俺は少し力を入れて男の腕をさらに締め上げた。


「ぐあっ!……わかった、話すから勘弁してくれ!」と男は苦しそうに言った。


 美和はその男の顔を見ると驚いた表情になった。


「あなたは、この前の!!」


「以前、無理やり誘おうとしていた男か?」


「うん、間違いない。こいつよ」


「お前が美和のストーカーだな?」


「俺はその子が好きだったんだ!」と男は言う。


「それで強引に誘おうとしたのか?」


「そうだ」と男が答える。


「お前最低だな」


「うるせぇ! 男がいたとは知らなかったがな」と言い返される。


 すると美和が口を開く。


「あんたみたいなのは最低よ」


「そんな……」と男がショックを受けている。


「もう二度と近づかないと約束しろ」


「……わかった」と男は答える。


「じゃあ、解放してやるよ」と言って俺は手を離した。


 無言で男は去って行った。


「大丈夫だったか?」


「うん、ありがとう」


「気にすんなよ。」と俺は答え歩き出した。


「ねえ、1つ聞いていい?」


「なんだ?」


「どうして、男につけられてるのが分かったの?」


「実は俺には人の気配を感じる能力があってさ……」


 俺はそう言って説明した。


「そうなんだ。なんか凄いね」と美和が感心したように言った。


 その後、俺と美和は何事もなく帰宅した。


 その頃、美和にストーカーをしていた男は「あの男、強すぎる。武器を持ってても敵わなかった。どうすれば、あの男に邪魔されずに……」


 と呟きながら歩いていた。


「もしよろしければ私が、あの男に勝てるようにする力を与えましょうか?」とスーツを着た端正な顔をした男が近づきながら話してきた。


「誰だ!?」とストーカー男は驚いて声を上げた。


「私は、あなたの願いを叶えるために存在する者です」


「本当なのか?」とストーカー男は半信半疑の様子で言う。


「はい。ただし、条件があります」


「どんな事だ?」


「私の望みをかなえて欲しいのです」


「何をさせる気だ?」


「それは、まだ言えません……。ただ、その代償としてあなたは強くなれます」


「……わかった。どうしたらいい?」


「まずは、こちらに来てください」と男が手招きをする。


 ストーカー男は恐る恐る男の方に近づいていく。


「そのまま動かないで下さい」と言われてストーカー男は立ち止まった。


 すると、男の手から黒い霧のようなものが現れ、ストーカー男を包み込んだ。


「うわぁー!」とストーカー男は叫び、もがき苦しむ。


 しばらくすると、黒い霧は消えていった。


「今のはなんだったんだ?」とストーカー男が不安げに言う。


「今からあなたは力を手に入れました。試しに私を攻撃してください」と男が言い、右手を前に出して構える。


「こうか?」とストーカー男が拳を振り上げて殴りかかる。


「それでは駄目ですね。もっと力を入れないと」


「難しいな」


「イメージしなさい。あなたは、あの男よりも強いと念じるのですよ」


「そうか。わかった。やってみる!」とストーカー男は言うと目を閉じた。


 すると、身体中に力がみなぎってくるような感覚があった。


 そして目を開けると、目の前にいるはずの男の姿は見えなくなっていた。


「あれっ?」とストーカー男は周りを見渡すが見当たらない。


「どこを見てるんですか?あなたは、もうすでに強くなっているんですよ」と背後から声が聞こえてきた。


 振り返ると、いつの間にか先程まで目に映らなかったはずの男が立っていた。


「本当に強くなったのか?」


「はい、もちろんです」


「よし、ならもう一度あいつを倒してやるぜ!」


「頑張って下さいね」と男が言った瞬間、ストーカー男は走り出していた。


「待ってろよ! クソ野郎!!」とストーカー男は叫ぶと、あっという間に姿を消した。


「私の役に立ってくれればいいんですがね……」

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