第5話 付与された力

ユナの父親の一件の後、俺はベッドの上で仰向けになりながら考え事をしていた。


俺はユナの方を向いた。


ユナは眠っていた。


ユナが寝た後も色々と考えていたが結局結論が出なかった。


(まぁ、焦る必要はないか……)


そう思いながら、俺はユナの頭を撫でて眠りについた。


次の日の朝、俺は目を覚ました。


起き上がるとユナが隣にいた。


「おはよう。ユナ」


俺は挨拶をした。


「おはよー! パパ!」


ユナも朝から元気いっぱいに挨拶をしてきた。


「ユナは今日も元気だな」


「うん、ユナ、今日も元気だよ!」


「それで、今日の予定だけど、まずは図書館で、この世界の事を勉強してみないか?」と俺は提案する。


「いいけど……、何の勉強をするの?」とユナが首を傾げて質問してくる。


「えっとな……」俺は少し考えて、「とりあえずはこの世界の歴史について調べてみたらどうかと思う」


「わかった! 歴史を調べればいいんだね!」とユナが納得したように言った。


「ああ、頼むぞ。俺は今日、大学の講義があるからついていけないぞ」


「うん! 任せておいて!」とユナが胸を張って答える。


「それじゃあ、行くか」


「うん!」


そうして、俺たちは家を出た。


俺は大学の教室に着いた。


いつも通りに席に座り講義を受ける。今日の俺の目的は講義を受けに来ただけでなくユナの父から貰った力の確認もするためだった。


大学の授業が終わり、俺は空手部、ボクシング部、柔道部を訪ねる為に部室に行った。


「こんにちは!」


俺はそう言って、ボクシング部の扉を開ける。


すると、部員達が一斉にこちらを見る。


「道場破りではないけど、自分の力を試したいのでスパーリングしてもらっていいですか?」


俺は練習している人達に言う。


すると、1人の強そうな男が立ち上がり俺の方に向かってきた。


「君、強いのかい?」と男は尋ねてきた。


「はい、多分そこそこは……」


「じゃあ、俺とやろうか」と言って、その男は自分のグローブを付けた。


「お願いします」


そして、お互いに距離をとる。


俺の相手は身長が高くガタイの良い大柄の男だった。恐らく俺より10センチは高いだろう。


お互い構える。


「始め!!」と部員の声が響くと同時に俺は前に飛び出した。


相手のパンチをかわしながら懐に入り、ボディにストレートを放つ。だが、咄嗟にガードされてしまう。


その時、相手の男の左フックが飛んでくる。


俺は余裕でフックの軌道が見えていたので避ける。


そして、カウンターで左アッパーを放った。


男は、それを喰らい後ろに倒れてしまった。


相手は失神していた。ほかの部員たちも唖然としていた。


「ありがとうございました!」と俺は一礼して、その場を離れた。


その後、俺は空手部に行った。


俺が、道場に入ると部員たちは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに元の表情に戻った。


俺は部長に説明して、スパーリングを始めた。


俺は相手が繰り出す技を全て避けた。ユナの父親からの力が働き身体が勝手に動いてくれた。


「これで最後だ!!」と部長が叫んで顔面目掛けて正拳突きを放ってくる。


俺はそれをスウェーでかわし、右上段蹴りを側頭部に当てた。


部長はそのまま倒れた。ほかの部員たちは無言だった。


俺は一礼して、道場から出た。


俺は、柔道場に向かった。


俺が入ると、みんな驚いていたが、俺の相手をしてくれる人が名乗り出てくれたので試合をすることになった。


「はじめ!!!」と声がかかる。


俺は開始線まで歩いていき、互いに向かい合う。


そして、試合が始まった。


相手が仕掛けてくる。俺は冷静に動きを見極めながら、攻撃を捌く。


そして、隙を見つけて、背負い投げで投げ飛ばした。


その勢いのまま腕十字を極め相手は堪らずタップした。


「ありがとうございました」と俺は言い、立ち上がって相手に握手を求めた。


「お前は何者なんだ!?」


「ただの学生ですよ!」と答えて俺はその場を後にする。


その後も色々な部活を回り、俺の力を確認していった。


他の部でも圧倒的な強さを見せていた。ユナの父親から貰った力のおかげだ。


帰ろうとすると誰かに呼び止められた。それは美和だった。


「あんたが道場破りをしているって噂が評判になってるわ」


「そんなつもりはないんだけどな……」


「じゃあなんなのよ?」


「自分の力を試すためにちょっとスパーリングさせて貰っているだけだ」


「そう……、ならいいけど……」


「それより、今日はどうしたんだ? 何か用事でもあるのか?」


「別にないけど……」と美和はそっぽを向いて答える。


「そうか、それじゃあ帰るか!」


「えっ! う、うん!」


そうして俺たちは家に帰った。


家に帰る途中、俺は美和に話しかける。


「なぁ、最近変わったことないか?」


「どういう意味……?」と怪しげに美和が俺の顔を見る。


「いや、特に何もなければ良いんだ!」と俺は慌てて誤魔化そうとする。


「そうね、あると言えばあったかな?」


「何があったんだ?」


「実はね……」


そう言って美和は話し始めた。


それは、2日前のことだったらしい。


いつも通り学校帰りに買い物をして、家に帰ろうとした時に後ろから誰かに肩を叩かれたそうだ。


「誰?」と思い振り返るとそこには見覚えのない男が立っていた。


「誰ですか?」と美和は男に聞いた。「君可愛いねぇ! 今暇かい? お茶しないか?」と男は答える。


「急いでいるんで!」と美和は走って逃げようとした時、男は美和の腕を掴み「待てよ」と言った。


「離してください!!」と美和は抵抗するが、男はびくともしなかった。


「無理やり誘うなんて最低ですね!」と美和が言うとその男は不機嫌そうな顔になり、


「うるせぇ!!」と言い舌打ちをしながら走り去っていったという。


「大丈夫だったか?」と俺は心配になって美和に尋ねた。


「うん、なんとか……」


「気をつけろよ!」と言って、俺たちは別れた。


その夜、家でご飯を食べているときに、俺はふと思ったことを口に出した。


「以前、この世界にお前と同じ異世界の人間が来ていると言ったよな……」


「うん、確かに言ったよ。それがどうかしたの?」


「もしかしたら、この世界に来ていて何か企んでいるんじゃないかと思ってな……」


「可能性はあるかもね」


「まあ、考え過ぎかもしれないが、一応警戒しておくべきだと思う」


「わかった」


「もし、奴らが何か仕掛けてきても俺たちで守れるように、もっと強くならないとな……」と俺は決意を新たにした。

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