9.番人の新しい命綱

3日後。ミカゲさんから連絡が来たとフラーレに言われ、BARにやってきた。

「ご注文は?」

「ミカゲ。」

「承りました。」

フラーレは前と同じように注文し、あの厳かな部屋に通される。

その中でミカゲさんは、試験管に紫色の液体を混ぜていた。

「3日ぶりだね、ミカゲ。」

「おう。フロードも、久しぶり。」

「お久しぶりです。」

「約束のモン、出来てるよ。」

ヒョイッと投げられたのは、紺色の長細い箱。

落とす寸前で受け取り、箱を見つめた。

「何やってんだよ、開けねぇのか?」

「はい!開けます!」

同じように紺色のリボンを解き箱を開けると、黒い棒、所謂特殊警棒が入っていた。

長さはだいたい20センチほど。グリップの先に紐がついている。見た目は普通の警棒だ。

「警察は拳銃よりもこっちのほうがよく使うんだろ?警棒にしといた。この警棒には3段階の機能があんだ。一段階はその状態。普通に殴ることもできるし、そこのスイッチをオンにしてみろ。」

「はい。」

すると、警棒の上半分が薄く光った。

「電気を纏わせてんだ。それを使うと大体の生き物は気絶する。オフにするにはもう一回押せばいいから。充電式だから、使ったらすぐに充電してくれ。そして、さっきのボタン押しながら警棒振ってみろ。」

バッと振ると、警棒が1.5倍ほどの大きさになる。

「その状態になると、毒が打てるようになる。二段階目だ。一番下についているダイヤルを回せば、毒の強さも調整できるぞ。まぁ、最初は慣れていないだろうし、そこそこの毒の強さにはしてるけどな。そして、もう一回振ってみろ。」

もう一度振れば、今度はグリップ以外の部分が刀身に変わった。

「これが最終段階だ。これで殺せる。相当な切れ味に仕上げといた。何人切っても錆びねぇよ。一段階目に戻すには、もう一回振れば戻るから。」

バッと振ると、最初と同じ状態に戻った。それを腰のベルトに引っ掛ける。

「ボタンを押しながらじゃねぇと段階変わんねぇから安心しろよ。あと、使うときは絶対にその紐をつけろ。警棒の主をフロード、副主をフラーレと私にしてる。他のやつが使ったり、紐をつけずに使うと、電流が走るから。いいな?」

「わかりましたっ……。」

最後の話が怖すぎて、紐を点け忘れないようにしようと心に誓った。

「ほい。これ、充電器。あと、これもやる。」

ミカゲさんに渡された黒と銀のボールペンを見つめる。

「これはなんですか?」

「それはボールペン型の毒撃針だ。警察の仕事をしているときに命を狙われたら、ノックボタンを押して、毒を打ち込める。クリップ部分を下に下げれば、トランシーバーになるから。」

「僕も持ってる!」

フラーレがポケットから青と金のボールペンを取り出した。確かに、同じ型だ。

ミカゲさんの胸元にある、赤とピンクゴールドのペンも同じものだった。

「それじゃ、慣れるまで練習してこい。」

ミカゲさんはフラーレに鍵を投げると、ニヤッと笑った。

「さ、練習するよフロード。」

鍵を人差し指に引っ掛けてくるくる回しながら、フラーレはさっさと部屋を出てしまう。

俺は慌てて追いかけた。

「ミカゲさん、ありがとうございました!」

「おうよ。」

ドアの前に立って礼をすると、ミカゲさんは、ひらひらと俺たちに手を振った。

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