7.番人と蒼は深く知る

資料を右に押しやり、体が軽くなった所で、フラーレがパソコンを寄せた。

「今回の依頼人は、うちの常連、TRUSEカンパニーの社長であるデイズ・アドニスだ。」

TRUSEトゥルーズってあの私達は真実のみをあなたの元へ。貴方が使っているのは真実の物?嘘の物?でお馴染みのあのTRUSE!?なんでまた殺しなんか…。」

「実はね、TRUSEはイギリスの三大マフィアの1つなんだ。名前はLierライアー。いつも多額の対価を払ってくれるから太客ってやつ。今回のターゲットはTRUSEの社員であるリーツ・ルバー27歳。よくあるTRUSEの裏側、つまりLierのことを知っちゃって口止めとして消されるって訳。」

「それってよくあっちゃダメだろ…。」

「まあまあ。今回のターゲットはね、社員だったから住所、風貌、家族の有無とかいっぱい情報が開示されてる。あとはスマホとターゲットの家の近くの防犯カメラをハッキングするだけだから、本当に楽だと思うよ。」

「楽って言ってもなぁ…。フラーレからしたらそうかもしれないけど、俺からしたら殺し自体楽じゃねぇよ…。」

「君、うだうだ文句言い過ぎ。やるって決めたんだからやってよね。」

「はいはい。」

「じゃあ、1つずつ言ってくよ。さっきも言ったように、ターゲットはリーツ・ルバー27歳。勤め先は勿論TRUSEだね。営業二課。家族は定年退職した父親と専業主婦の母親。そして大学生の妹が1人。住所はここね。一人暮らし。」

フラーレは、GoogleEarthで検索していたターゲットの住所を見せる。

「まぁ、年齢にしては妥当な家だな。」

「そうだね。このアパートの右側に、暗い裏路地があって、そこで帰宅途中を狙って殺そうかなって思ってる。」

「了解。」

「見た目はこれ。決行日もスーツだと思うから、このままで想像してもらって構わないよ。」

今度は写真を見せてもらう。金髪の、好青年そうな男だ。

「よし、これで確認できたね。覚えた?」

「まぁ、ある程度は。」

「OK!ならご飯食べよ!」

「まさか、日本食が食えるのか!?」

ウキウキしながら尋ねると、

「なわけないじゃん。普通のマッケンチーズだよ。ほら、早く作って?」

「は!?なんで俺が!」

「だって僕料理作れないし。材料はあるから、作ってよ。」

「まあ料理が作れそうにないのは見たらわかる。普通にデリバリーでいいんじゃねぇの?」

「だってぇ〜、住所バレたくないし〜。だからといって温かいもの食べたいし〜。ってことでよろしく!キッチンはそっちね!」

「はぁ…。借り1つだからな!」

母親が倒れてからずっとご飯を作ってきたので、料理の腕には自信がある。

袖を捲りながらキッチンに入ると、リビングと同じように食器やらゴミやらが散乱していた。

ここもかよ…!拳をギリッと握りしめた。

まずは落ち着こう。料理には落ち着きが肝心だからな。俺は大きく息を吸った。

「ふざけんな!!!」

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