6.蒼は汚れも気にしない
「ここだよ!入って入って!」
フラーレが指を指したのは、それなりに大きくて綺麗なビル。
そりゃそうか、一流の殺し屋だもんな。金持ちだよな。
1人で納得しながら、フラーレとエレベーターに乗り込む。
「僕の部屋は10階にあるんだ。」
「へー。思ったより下の階だな。そもそもここ、何階建てなんだ?」
「25。」
「タワマンじゃん。」
ピーンと音が鳴りエレベーターを降りると、たった一つの扉があるだけだった。
「なんだここ。1階に1部屋だけなのか?」
「まあ、取り敢えず入ってよ。」
フラーレが扉を開けると、青白いLEDが視界に入った。
端には大量の周辺機器。奥には資料がばら撒かれている。
ゴミ箱にはウィダーゼリーやバランス栄養食などのゴミ。
まるで強盗にでも入られたかのような汚さだ。
「汚っ!」
「失礼だなぁ。これから君もここで生活して貰うってんのに。」
「はぁ!?やだわこんな汚部屋!暗いし!」
「あのねぇ、殺しはタイムアタックなんだ。手がかりを見つけて君に連絡していると、君が来る間にターゲットが逃げてしまうかもしれない。これが1番効率がいいと思うけど?」
「正論言いやがって…。何も返せん。」
フラーレはちょっとウザいドヤ顔をすると、床のゴミをかき分けて小さなローテーブルの前にストンと座った。
「何やってんの、早く座りなよ。」
「いや、ここに座るっつったってなぁ…。」
足でホイホイとゴミを寄せ、床をパッパッと払ってからフラーレの隣に座る。
こんなに汚いのに、何故か異臭はしない。
ミカゲさんに何か頼んで消臭剤でも作ってもらったのだろう。
奥にある花瓶みたいなのがそれだろうか。
「さ、依頼人から送られてきた情報を確認しよう。」
ノートパソコンを置くために、フラーレは机の上に積もりに積もった資料やファイルなんかをドサドサと「こっちに」落としてきた。
「あがっ!」
プラスチックのファイルが一気に腹や足に当たり、悶絶する。重さと痛みに悶えていると、パソコンを起動していたフラーレがこちらに目を向けた。
「何資料と戯れてんの。そんなにゴミが好きなわけ?」
「お前のせいだろうが!」
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