4.影の下の力持ち

早速フラーレに「来て!」と連れてこられたのはBAR。

「おい。俺はお酒を飲むためにお前と組んだわけじゃ…っておい!」

フラーレは早速カウンターに座っている。


「ご注文は?」

「ミカゲ。」

「承りました。」


「何酒なんか頼んでんだよ。」

「いいからいいから。」

「ご準備ができました。こちらへどうぞ。」

さっきのバーテンダーがフラーレにそう告げた。

「は…?」

「なにしてんの、早く行くよ。」

フラーレに急かされ、急いであとをついていく。


バーテンダーに通されたのは、地下。

目の前にあるドアは、厚みのある金属でできており、「warning!」と書かれた規制線のようなものがやたらめったらに貼られている。

バーテンダーが右側にある指紋認証センサーに手を当てると、ゴゴゴゴゴと厳かな音で扉が開いた。中を覗くと、ショートカットの綺麗な女性が一人。

周りには、すごい色をした液体の入ったビーカーや、武器らしきものがたくさんあった。

「やぁミカゲ。久しぶりだね。」

「おう。久しぶり。」

ミカゲ、と呼ばれた彼女は、僕の方に視線を向けるとフラーレに尋ねた。


「フラーレ、隣のやつ誰だ?まさか、お前の仲間とか言うんじゃねぇだろうな?」

「そうだよ。コンビを組むことになったんだ。さ、自己紹介して。」

「ロンドン警察、ルーシア・ヴェートです!よろしくお願いします!」

「へー、君そんな名前だったんだ。」

フラーレが少しだけ目を見開く。そういや、こいつに名前教えてなかったな。

すると、彼女が大声を上げた。

「は!?警察!?フラーレ、お前遂に頭撃ち抜かれたか!?」

「ひどいなぁ、僕は至って普通だよ。利害一致の関係ってやつ。」

「それで私が理解できると思うなよ。」

「それより、ルーシアに武器見繕ってよ。」

「はぁ…。お前ほんと人使い荒いよな。」

頭に手を当てながらため息をつくと、俺の方に向いた。


「私はカガヤマ・ミカゲ。よろしく。ルーシア?だっけ?今から寸法図るからこっち来い。」

「は、はい!」

カガヤマさんに呼ばれ、そっちに走る。

「警察なんだろ?なんでこんな正反対な仕事なんて飲み込んだんだ?」

「家族のためです。」

「………ふ〜ん。お前気に入ったわ。」

「ありがとうございます…?そういや、カガヤマさんって見た目的にアジア人ですよね?イギリスに来た理由ってなんですか?」

「ミカゲでいいよ。そうだなぁ、前職を辞めようか迷ってたときに、師匠にこの仕事を持ちかけられたからだな。」

「そうなんですか!ミカゲさんの前職ってなんですか?」

「それは…「陸上自衛隊だよ!しかもね、ミカゲは女性隊員で初の第1空挺団に所属してたんだよ!」言うなフラーレ!」

「へー!軍人だったんですね!」

「自衛隊は軍隊ではねぇけどな。まぁ、そんなところだよ。」


ミカゲさんが薄く笑うと、端っこで勝手に液体を混ぜて爆発させたフラーレがこっちにやってきた。

「ルーシア!君今日からフロードね!」

「なんで急に!ってかフロードって詐欺とかそういう意味だろ!警察官がそんな名前嫌だわ!」

「いいじゃん、FFコンビってことで。」

「なんだ、そのゲームみたいなだっせぇ名前は。まぁいいんじゃねぇの?なんかオフロードバイクみたいでかっこいいじゃん。」

「関係なっ。もう面倒だしそれでいいよ。」

「っよし!」


「さぁ、ルーシアもといフロード。殺し屋だったら武器作んねぇとな。警察だったらやっぱ警棒使う感じか?」

「そうですね、結構銃よりも警棒のほうが多かったりします。」

「わかった。それで進めておく。フラーレ!お前ボタン爆弾足りてるか?」

「最近全部使った!12個頂戴!」

「はぁ…。高く付くからな!」

ミカゲさんが水色の箱をフラーレに投げる。

「ミカゲさん、ボタン爆弾ってなんですか?」

「ああ、ボタン型の爆弾さ。ストッパーを除けて服につけると、スイッチが入る。服についている間は爆発しねぇが、服から離すと5秒以内に爆発するんだ。バレにくいから殺しには最適だが、ずっと爆弾を身に着けてる状態だからな。いつ死んでもおかしくないってわけだ。」

「ヒエッ…。」

背筋が寒くなった。そんな物騒なもの、あいつよくつけてられるな。

「ねぇ、ミカゲ。僕達のコンビ名、何にすればいいと思う?」

「なんでもいいんじゃねぇの?」

「真剣に考えてよ。」

フラーレがむすっとした顔をする。

「じゃあ、お前らの二つ名とか改変したら?フラーレは「蒼眼の鷲」だよな。フロードはなんかあったか?」

「たまに「冷徹な番人」って言われることはありました。」

「それあれじゃん。冷酷非道な尋問の仕方で、全員ムショ送りにしてるっていう無慈悲警察官の名前じゃん。」

「へー、お前が…。」

ミカゲさんは目を細めた。


「やっぱりフロードは殺し屋に向いてると思ったんだよ!」

フラーレがパチンと手を合わせる。

「全く有り難くないお言葉どうも。」

「それでさ、ミカゲ。なんか思いついた?」

「人任せだよな、お前って。そうだなぁ…。アキュール・ヴェヒターとかどうだ?」

「どういう意味なんですか?」

「ヴェヒターは、ドイツ語で番人。アキュールは、フランス語で青がアジュールなんだよ。あとフラーレの好きな酒はリキュールだろ?それを合わせてアキュール。かっこよくね?」

「やっぱミカゲ天才!すごい!」

「すごいです!かっこいいです!」

「そ、そうか?」

ミカゲさんはちょっとだけ照れていた。

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