2.蒼の正体

体力に自信のある俺だが、後ろからは二つの青い光が追いかけている。

今になって初めて、犯人の気持ちが分かった気がする。分かんなくていいことだけど。

(は!?速くね!?)

ぐるっと右に横切り、車を飛び越える。

ふと後ろを向くと、光は見えなかった。

(良かった…逃げきれた…)

ため息を吐いて体を前に向ける。

刑事なのに、逃げてどうすんだ。

と一人嘲笑する。


「見ーつけた♡」


背筋がゾクッとし、ゆっくり目線を上げると、レンガの壁の上で、こっちを見下ろしながらにやりと微笑む蒼い眼があった。


「ひぇっ…。」

「君、まあまあ早いね。僕びっくりしちゃったよ。」

「は!?なんで!後ろにいたのに!」

「そんなの、ドローンで青い光を後ろから光らせてたに決まってんじゃん。君、警察でしょ?意外と馬鹿なんだね。」


イラァッ。なんなんだこいつは。

出会って時間も経ってないというのに、心を抉るようなこと言いやがって。

しかも、本当だから尚更腹立つ。


「何なんだお前は!」

怒りのままに聞く。

「ねぇ、ホントに警察?僕のことわかんないの?」

「は?」



彼の姿をじっと見る。

黒いパーカーに身を包んだ少し細い体。

フードの影から覗く、宝石のような蒼い瞳。

そう言えば、先輩が変なこと言ってたな。


「蒼い眼をした黒いパーカーのやつがいたらすぐ逃げろ。闇の世界では有名な凄腕の殺し屋だ。見つかったらすぐに殺されるぞ!」

「彼女無しで死ぬのはキツいっすよ!」


そのときは、本気で信じてなくて、笑い飛ばしてたっけ。

先輩が言ってたのは、蒼い眼に黒いパーカー。今目の前に居るのは、蒼い眼に黒いパーカー。


「あっ!お前連続殺人犯の!」

「気付くのおっそ。そんなんで警察名乗ってんの?僕、めちゃくちゃ有名だと思うんだけど。」


蒼眼黒パーカー男、もといフラーレは、現在国際指名手配犯だ。

黒いパーカーを着ていることと、宝石のような蒼い眼をしていること以外は公になっておらず、イギリスでも、国をあげて捜査している。

なんと、彼が目の前にいるとは。捕まえるチャンスだ。彼に見えないようにこっそり手錠に手をかけると、蒼い眼が細まる。


「なに、僕を捕まえようとしてるわけ?馬鹿だねぇ。」

「なんでわかって!」

「それくらいわかる。走ってるときに上着翻ってたでしょ?その時に見えたんだよ。あとさ、多分君じゃ僕は捕まえれないよ。」

「そんなの、わかんないだろ!」

「わかるよ。だって僕は国際指名手配犯だよ?世界各地のトップが僕を血眼になって探してる。カナダの超優秀な刑事と鉢会わせたんだけどさ、100人来ても逃げれたし。君みたいなその辺の刑事なんかじゃ、僕を捕まえることはできないよ。」

「それは…そうだけど…。」

「それよりもさぁ…。」


フラーレは、身を乗り出す。

「僕と組まない?」




「は?」

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