キラキラが沢山?
シュンとしつつ、結界を出ると白狼君達が付いてくる。
川を越え、森を抜け、草原に出ると赤ライオン君が何かを食べていた。
あれは、
赤ライオン君の周りに、何羽も落ちている。
飛べない赤ライオン君から襲ったとは考えにくいから、
流石に
そんなことを考えつつ駆けていると、気配を感じ視線を向ける。
巨大な鷲が三羽、大きな翼を広げて飛んでいる姿が見えた。
その翼には赤い模様がある。
あれは、
ママの洞窟近辺にもたまに姿を見せていた十メートル級の
基本的に魔鳥を獲物として定めているので、わたし達フェンリルファミリーとぶつかることはなかったんだけど、鳥好きの
美味しくない上に、獲物をかっ攫うヤなやつらしい。
そんな魔鳥君達はこちらにチラリと視線を向け、興味なさげに飛んでいった。
まあ、わたしとしても興味は無いので、そのまま先に進んだ。
林に到着したので、白狼君達は帰っていった。
途中、巨大な蜘蛛が地面から現れたので蹴った後、丸々彼らにあげたので、特に不満は無いだろう。
さて、問題はここからだ。
門に向かって走っていると、疲れた顔をした冒険者のお兄さん達が町の方に歩いているのが見えた。
「お~い」
と駆けながら手を振ると、わたしに振り向いた冒険者のお兄さん達の表情が明るくなる。
「すまん!
サリーちゃん、怪我しているやつがいるんだ!」
と言われて見ると、左腕と左足に裂傷を付けた人がいた。
仲間に肩を借りていて、わたしと視線が合うと力なく笑った。
治療をしつつ話を聞くと、林に魔虫が増え始めているらしく、木の陰から不意を突かれたとのことだった。
「本当なら、ああいう魔虫の退治に人員を使わなくちゃならないんだが……。
ほら、例の件で、な」
と冒険者のお兄さん達は渋い顔で言っている。
例の宝探しで人手が足りないって事かな?
魔虫が増えると、危険だと思うけどなぁ~
中には毒を持っていたり、集団になって襲うのもいるし。
その辺りを領主様はどう思っているんだろう?
ただ、あまり口にしてはいけなさそうな空気だったので、取りあえずその件には触れず、治療代は冒険者組合を通して貰うことにして、手を振って別れた。
門に近づくと、あぁ~やっぱり例の騎士さんが立っていた。
ただ、商人さんに絡んでいて、わたしが近づいても視線さえ向けず、門番のジェームズさんが〝さっさと入れ〟と手を振ってくれたので、通り過ぎた。
う~ん、中に入った町からは、活気を感じられない。
食糧問題の時ほどではないけど、どことなくピリ付いているというか、皆足早に去っている感じがする。
やだなぁ~
早く終わって欲しいなぁ~
そんなことを思いつつ、わたしも足早に薬屋さんに向かった。
用事を終えて、門に向かおうとすると、小白鳥の皆と巨漢冒険者のパットさん達が門から町に入ってくるのが見えた。
わたしが手を振ると、それに気づいた小白鳥の団団長のヘルミさんが嬉しそうに手を振り返してくれる。
側まで駆けていくとヘルミさんの表情が真剣なものになる。
「サリーちゃん、今から外に出るの?」
「うん、帰るからね」
「止めておいた方が良いわよ」
「ん?」
ヘルミさんだけでなく、皆の表情も真剣なものだ。
「何があったの?」
訊ねると、ヘルミさんは困ったように頭を掻く。
「よく分からないの。
ただ、ついさっきまで普通にしていた魔虫や魔獣が、突然、この辺りからいなくなったの」
「どういうこと?」
わたしが訊ねると、パットさんが首を振る。
「分からん。
だが、こういう時は、良くないことが起きる――そういわれているんだ。
だから、サリー、お前も出ない方が良い」
えぇ~
そんなことを言われても、困る。
ヘルミさんは冒険者組合の方に視線を向けながら言う。
「今から、組合長に相談するつもりだけど、サリーちゃん、少なくともしばらく様子を見た方が良いわ」
そういいながら、皆は冒険者組合の方に足早に行ってしまう。
いや、シャーロットちゃんの事もあり、早く帰りたいんだけど……。
わたしは門の方に視線を向ける。
……なんだろう?
特に何も感じられないけどなぁ。
ひょっとしたら、
案外その程度の、どうでも良いものかも知れない。
わたしにとっては弱いけど、普通の冒険者にとっては脅威だって言ってたし。
まあ、一応、警戒しながら進もう。
門の方に走ると、胸元辺りでペチペチ叩く気配を感じる。
近衛兵士妖精の白雪ちゃんかな?
どちらにしても、町中なので見ることも話すことも出来ない。
胸元に「ちょっと待ってて」と声をかけ、急いで門から出ようとする。
門では例の騎士さんが冒険者のおじさん達に絡んでいた。
うわぁ~面倒くさい人だなぁ。
わたしに気づいた冒険者のおじさんが、そっと〝早く行け!〟と言うように手を振ってくれたので、〝ありがとう!〟という気持ちを示すように頭を下げると、そっとその場を通り過ぎる。
門から出ると、冒険者の人たちが町に向かって戻ってくるのが見えた。
わたしに気づくと小白鳥の皆と同じように、変な感じがする事を警告してくれる。
一体何が起きてるのかな?
冒険者の人たちにお礼を言いつつ、家路を急ぐ。
念のために気配を消しながら林を進むことにした。
フェンリル系忍びなり!
そんなことを心の中で言いつつ、気配を消して進む。
すると、再度、胸元をペチペチされた。
あ、近衛兵士妖精の白雪ちゃんと話をするの忘れてた。
辺りを見渡しつつ、声をかけようとした。
すると、林を抜けた草原辺りが、妙に明るいのに気づいた。
え?
何?
何だか草原が輝いて見えた。
そのキラキラしたものはゆっくりとだが、こちらに向かってくるようだった。
目を細めて良く見てみる。
あ!
あれ!
金色羊さんだ!
しかも、1匹じゃない!
何十、いや何百かな!?
大量にいる!
モコモコした黄色い毛に覆われた彼らは、のんびりとした感じに移動している。
すごぉ~い!
その先頭には、羊飼いさんなのかな?
春には不釣り合いな厚手の黄色いフード付きコートを着ている。
背丈は小柄かな?
顔は……。
なんだろう、男とも女とも、幼くとも老いているとも取れる不思議な造形をしていて、ニコニコしながら側にいる金色羊さんに声をかけていた。
あ、ひょっとして……。
わたしは、羊飼いさんっぽいその人の元に駆けた。
白雪ちゃんがペチペチ叩いてくるけど、「ちょっと待ってて!」と謝りつつ「お~い!」と羊飼いさんに手を振った。
羊飼いさんは少し驚いた顔でこちらを見た。
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