風邪のひき始め?

「なにそれ!?

 モグラ!?」

 イメルダちゃんが訊ねてきたので、「そうだよ」と頷いておいた。

 すると、女王蜂さんが身振り手振りをする。


 え?

 結界内でも、このモグラが出てきたら危ない?

 ん~地中はどうなんだっけ?

 よく分からないなぁ。

 え?

 退治しておいた方が良くない?

 ……女王蜂さん、ひょっとして、自分たちに害があるモグラ君をわたしに倒させようとしている?

 え?

 イメルダちゃんが危ないから?

 本当かなぁ~


 そんなやり取りをしていると、イメルダちゃんが心配そうに言う。

「ねえ、サリーさん。

 モグラが地下を掘ると、地下水にも影響があるんじゃないかしら?」

「あぁ~

 あり得るかも」

 そうすると、下手をすると湧き水が出なくなる恐れもあるか。

 などとやっていると、またしても地中に気配を感じる。

 まあ、なんにせよ、倒しておかないといけないかな?

「イメルダちゃんは家の中に戻って」と言いつつ、地中から顔を出したモグラ君にキックするのだった。



「ただいまぁ~」

と言いつつ、壺を抱えて家の中に入ると、シャーロットちゃんが笑顔で「おかえりなさぁ~い」と駆け寄ってきてくれた。


 可愛い!


「ただいまぁ~」

と壺を白いモクモクで持ち直すと、愛らしい妹ちゃんを両手で受け止める。

 そして、左腕で抱き上げると愛らしい妹ちゃんは「きゃっきゃ!」と嬉しそうに悲鳴を上げる。


 可愛すぎる!


 そんなことをやっていると、イメルダちゃんが近寄ってきた。

 そして、白いモクモクで持つ壺に視線を向ける。

「それ、なんなの?」

「女王蜂さんからお礼にと蜂蜜を貰ったの」

「そうなのね。

 モグラ、どうだった?」

「うん、あれから3匹ほど倒したよ」


 家の周りを兵隊蜂さんと見回ったんだけど、なかなかの頻度でモグラの気配を感じた。

 その中で、地表に出てきたのを倒したんだけど……。

 まだまだ、退治しきれないのはいる。

 少々困った。

 兵隊蜂さんが身振り手振りで言うには、巨大蜂さんにとっても花畑や花を咲かせる木の根を囓るモグラ君はやっかいな相手とのことだった。

 そして、さらにいうなら魔木まぼく君にとっては不倶戴天ふぐたいてんの仲なのだとか。

 〝是非とも退治しましょう!〟と枝をニョキニョキさせながら、身振り手振りで言っていた。


 因みに、倒した5匹のモグラ君は、気づいたら側に控えていた白狼君達に上げた。

 彼ら、この家の様子を窺ってたりするのかな?

 まあ、モグラ君って美味しくないから、良いんだけどね。


 そんなことを考えつつ、シャーロットちゃんを下ろしていると、イメルダちゃんが心配そうに訊ねてくる。

「ねえ、やっぱり地中までは結界の効力は発揮しないのかしら?」

「う~ん、そこまではママにも聞いてないの。

 そこまで考えたことなかったし」

「そうなのね……」

とわたし達が二人して思案顔をしていると、妖精姫ちゃんがニコニコしながらすーっと飛んできた。

 そして、わたし達の前で身振り手振りをする。


 え?

 問題ない?

 地下まで結界の効力があるから、モグラ君は来ない?

 それは良かった!


「なら安心ね」

とイメルダちゃんも嬉しそうにする。

 うん、良かった!

「まあ、もっとも、地下水のこともあるし、巨大蜂さんや魔木まぼく君の事も放っておけないから、極力退治だけはするよ」

 わたしがそういうと、イメルダちゃんは「そうね、お願い」と頷いた。


 そんなことをやっていると、下の方から、ゴホゴホと咳をする声が聞こえてきた。


 視線を向けると、シャーロットちゃんが喉を押さえて、少し辛そうにする。

「シャーロットちゃん、喉が痛いの?」

と訊ねると、可愛い妹ちゃんは「うん、ちょっと……」と頷く。


 それは良くないなぁ~


「どれどれ、ちょっと口を開けてみて?」

と言うと、妹ちゃんは素直に口を開けてくれる。

「う~ん、ちょっと喉が赤くなってるなぁ~」

「風邪?」とイメルダちゃんが心配そうに訊ねてくるので「引き始めかも」と頷く。

 取りあえず、体力回復魔法を掛けておく。

 シャーロットちゃんはニッコリしながら「治ったかも」とか言っているけど、いやいや、そんなに簡単に治るものじゃないから!

「今日は大人しくしてようね」

と言うと、シャーロットちゃんは素直に「うん!」と言ってくれた。


 可愛くて、良い子!


 念のために、貰ったばかりの蜂蜜をすりおろし林檎にかけて食べさせて上げることにする。

 風邪を引いた時は林檎を食べると良いし、確か、喉が痛い時は蜂蜜が良いって前世Web小説にあったからだ。

 シャーロットちゃんには椅子で座って待っていて貰う。

 食料庫から林檎を取ってきて、台所のシルク婦人さんに小鉢と下ろし金を受け取る。

 中央の部屋食堂のテーブルで、白いモクモクナイフを使って林檎の皮を剥く。

 ……なにやら、妖精姫ちゃんや姉姫ちゃんが良いものかと、テーブルの上にやって来る。

 そして、ニコニコ期待した顔でこちらを見上げてくる……。


 はぁ~

 仕方がない、妖精ちゃん達だ。


「ちょっとだけだよ」

と言いつつ、小鉢の上で林檎をすりおろす。

 すると、妖精メイドのサクラちゃんが小鉢の追加を持ってきてくれる。


 あ、わたしやイメルダちゃんの分も持ってきてくれる?

 ありがとう!


 すると、ゴロゴロルームから出てきたヴェロニカお母さんが「あ、サクラちゃん、わたくしの分も」とか言っている。


 えぇ~

 大人はいらないでしょう!?


 わたしが軽く睨んでいると、妖精メイドのスイレンちゃん達が林檎のおかわりを持ってくる。

 もお~!


 林檎を半分ほどすりおろすと、蜂蜜の壺からスプーンで蜂蜜をすくい、小鉢にかける。

 軽くかき混ぜた後、「はい、シャーロットちゃん」と小鉢を可愛い妹ちゃんの前に置く。

「サリーお姉さま、ありがとう!」

と言いつつ、スプーンですり下ろし林檎をすくうと、パクリと食べた。

「美味しい!」と嬉しそうにする、シャーロットちゃん、可愛い!


 すると、妖精姫ちゃんが〝早く、わたし達にも!〟と身振り手振りをする。

 もう!

 しょうがない姫ちゃんだ!



 すり下ろし林檎を食べ終えたシャーロットちゃんには、取りあえず少し寝て貰うことにする。

 妖精メイドのウメちゃんが〝任せて!〟と身振り手振りをしてきたので、お任せすることにする。

 あと、イメルダちゃんが食料庫に移動し、在庫数を確認するとのことなので、わたしはヴェロニカお母さんの後を追うようにゴロゴロルームに入る。


 ヴェロニカお母さんに今日、町であったことを話しておこうと思ったのだ。


 イメルダちゃんを含む妹ちゃんにはちょっと、刺激が強いと思うので、取りあえずは内緒にすることにした。

 中に入ると、ヴェロニカお母さんはエリザベスちゃんを抱っこする所だった。

 大好きなお母さまに抱かれて、一番小さい妹ちゃんはご機嫌そうにニコニコしている。

 

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