伝説中の伝説のお肉料理!

 皆がプリンを食べ終わった後、テーブルを綺麗に拭き、食材をその上に置く。

「さて、伝説中の伝説のお肉料理、作りましょうか!」

「わ~い!」

とシャーロットちゃんがパチパチ拍手をしてくれる。

 可愛すぎる!

 イメルダちゃんが少し離れた所で椅子に座り訊ねてくる。

「それって、昨日、入浴中に言っていた料理?」

「うん、そうだよ」

「そうなのね」

と言いつつ、興味深げに食材を眺める。

 そして、ある場所に目をやり、訊ねてくる。

「ねえ、これ何?」

 ふむ。

 実はこの料理、一番手こずる部分は既に終えている。

「これはね、挽肉だよ」

「挽肉?」

「うん、お肉を細かく刻んだものだね」


 実はこの挽肉、ティラノサウルス君のお肉を使用している。


 本当はステーキとかにしようと思い、タマネギに付けたりして柔らかくしたんだけど、それでも、妹ちゃん達の顎では正直、筋切りというか、本当に細かく切り刻めばなんとか……ってレベルだった。

 だったら、いっそう挽肉にしようって事になり、そして、挽肉と言ったらこれだねって事で思いついたのだ。

 皆大好き、ハンバーグである。

 前世で、おばさんに作って貰い、食べた時は感動に打ち震えたものだ。

 そんなわたしに対して、おばさんは……。

 なんだったっけ?

 忘れちゃった。


 いやまあ、前世のことはともかくとしてだ。

 これに関してはWeb小説の知識もあるけど、挽肉はスーパーで買ってはいるものの、それ以外はおばさんと一緒に作ったからその知識もある。


 だから、多分、作れると思う!


 挽肉は昨日のうちに作成済みだ。

 恐らく、前世包丁でやったら相当苦戦しただろうけど……。

 半冷凍にした肉を白いモクモク包丁でサクサクやったら、結構、簡単に出来た。

 そして、挽肉の他に、タマネギ、パン粉、山羊乳、卵、塩、コショウ、そして、シルク婦人さん作のデミグラスソース(推定)を準備する。


 よし、やりますか!


 タマネギをみじん切りにして、白いモクモクで炒める。

 次に、ボールの中にデミグラスソース以外を入れて手で手早く混ぜる。

 混ぜたものを手に収まるぐらいにとりわけ、丸める。

 そして、右手に持ち、左手に当てるようにして軽く投げる。

 さらに、左手から右手に投げる。

 そんなことをやっていると、シャーロットちゃんが不思議そうに訊ねてくる。

「サリーお姉さま、何やってるの?」

「ん?

 空気を抜いているんだよ」

「空気?」

「うん。

 しっかり抜いておかないと、崩れちゃうからね」

「ふ~ん」

 まあ、おばさんの受け売りだけどね。

 抜き終わったら、真ん中にくぼみを作ると、待機用の皿に乗せる。


 最初の一個完成!


 そんなことを考えていると、イメルダちゃんが立ち上がった。

 そして、「わたくしも手伝うわ」と腕まくりをする。

「あ、シャーロットも!」

とシャーロットちゃんも元気よく言う。


 う、う~ん、正直、不安だけど、せっかくやる気なのに、やらせないのは駄目かな?


 しっかり手を洗って貰うと、やり方を説明する。

 いつの間にかやってきた、シルク婦人さんも交えつつ、教える。

 初めのうちは苦戦するも、二人ともすぐに上手にやり始める。

 二人とも、地頭が良いんだろうなぁ。

 もちろん、シルク婦人さんは別格に上手だ。

 次々に空気を抜き、並べられていく。

 素晴らしい!


 準備が終わると、皿を台所に運ぶ。

 あ、シルク婦人さんも運んでくれる?

 ありがとう!

 台所で白いモクモクをフライパンの形にする。

 一応、鉄製のフライパンもあるけど、わたしとしてはこちらの方が慣れているのだ。

 近くで見ようとする妹ちゃん達に「あまり近づきすぎたら駄目だよ!」と注意しつつ、モクモクフライパンの上に、菜種油を薄くひく。

 モクモクフライパンをしっかり温めた後、準備したハンバーグの種を上にのせる。

 ジューっと、水分と油が弾ける音が聞こえてくる。

 今のところ、良い感じだ。

 いくらか待った後、フライ返しで裏返す。

 香ばしい匂いが漂ってくる。

 なかなか良い感じかな?

 白いモクモクを広げ、蓋をしつつしばし待つ。

 そろそろ良いかな?

 白いモクモクを広げてみると、ふわぁ~っと美味しそうな匂いが漂う。

 これは、上手くいったかな?

 フライ返しで持ち上げると、皿に移す。

 そして、肉汁とかが残っている所にデミグラスソース(推定)を入れて、弱火ぐらいの熱を出しつつ少し待つ。

 しばらくした後、それをハンバーグにかけて完成だ!


 どれどれ。


 シルク婦人さんが持ってきてくれたナイフとフォークで切り取り、パクリとする。


『う、うま~い!』


 思わず、ワオ~ン! と叫んじゃった!

 柔らかで香ばしくて、肉汁ジュワ~な美味しいハンバーグだ!

「さ、サリーさん、大丈夫!?」

 何故か、イメルダちゃんに心配そうな顔で訊ねられた。

「え?

 何?」

「だ、だって……」

 シャーロットちゃんもシルク婦人さんも心配そうにこちらを見てくる。

 え?

 どういうこと?


 そこで、気づく。

 わたし、泣いていた。


 え? 何故?

 いや、いけない、妹ちゃん達に心配をかける!

 袖でそれを拭くと「それぐらい美味しいって事! シルク婦人さん、お毒味して!」と言いつつ、ナイフとフォークをシルク婦人さんに渡す。

 無表情な婦人さんにしては、少し心配そうにこちらを見ていたけど、ナイフとフォークと受け取ると、ハンバーグを切り分け、パクリとした。

 モグモグ咀嚼したシルク婦人さんは、満足いく味なのか、コクコクと頷いた。



 テーブルにハンバーグを皆で並べていると、ニコニコした顔のヴェロニカお母さんがゴロゴロルームから出てきた。

 そして、ハンバーグののった皿を興味深げに眺める。

「オールマ王国の肉団子焼きに似てるけど、少し違うわね」

と言った。

 やはり、この異世界にも似たような料理があるのね。

 まあ、知識チートでどやぁ~はもう、正直諦めているから良いけど。

 皆で席に座って、食前のお祈りをする。

 シャーロットちゃんがわくわくした顔をしていて、凄く可愛らしい。

「頂きます!」

と言うや、シャーロットちゃんは凄い勢いでナイフとフォークを持つ。

 そして、切り取り、パクリとする。

 ……。


 シャーロットちゃん、そのままの体勢で固まってしまう。

 え?

 どうしたの?

 すると、可愛い妹ちゃんは潤んだ目でこちらを見る。

 そして、言った。

「サリーお姉さま……。

 好き」

「愛の告白をされた!

 生まれて初めてなんだけど!」

 っていうか、前世を合わせて多分、初めてなんだけど!

「まあ」とヴェロニカお母さんはおかしそうに、「何言ってるのよ」とイメルダちゃんは呆れた感じに言うけど、気にならない!

 わたしは立ち上がると、シャーロットちゃんを抱きしめた。

「わたしも、シャーロットちゃんの事、好き!」

「きゃぁ~!」とシャーロットちゃんは嬉しそうに悲鳴を上げ「ちょ、ちょっと、食事中に馬鹿なことをやらない!」とイメルダちゃんに怒られるのであった。

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