第二十三話
なんちゃってフェニックス君登場?
朝ご飯を食べて、洗濯物を済ませると、フェンリル帽子を被りつつ、出かける準備をする。
シャーロットちゃんに「早く帰ってきてね」と言われほっこりし、イメルダちゃんに「余計なものは買ってきちゃ駄目よ」と釘を刺され、しゅんとしつつ、外に出る。
荷車を車庫からだし、鰐君や沢山獲れたので雷魚君も二匹ほど、氷付けにして荷車に乗せてカバーをかける。
飛んできた妖精姫ちゃん達が身振り手振りで”美味しい焼き菓子! お願いね!”と言ってくるのに苦笑しつつ、近衛騎士妖精の白雪ちゃんを胸元にしまいつつ、荷車を引いて結界を出る。
しばらく走ると、いつもの通り、二十匹ほどの白狼君達が合流して来るのをそのままに、森を行き、川を越え、更に森を進み、平原に出た。
上空に気配を感じ、視線を向ける
ん?
あれは?
羽に纏わり付いた魔力が炎上し、まるで火の鳥のように飛び回る魔鳥だ。
それが、十羽ほどがそこそこ低い位置を飛んでいる。
因みに、火の鳥と言っても前世の創作で出てくるフェニックスとは違い、不死ではない。
単に燃えているだけだ。
そういえば、
わたしも食べさせて貰ったけど、なんか、ガソリンを塗りたくって焼いたような臭いがして、肉も固くてなんか苦くて不味かったなぁ。
見た目が格好いいだけに、残念な魔鳥だ。
ん?
ここ最近、全然いなかったんだけど、帰ってきたって事かな?
住み始めて一年も経っていないので、その辺りが例年通りなのかどうなのか、よく分からない。
そんな事を考えていると、
わたし狙いか、白狼君狙いかしらないけど、なかなか、鬱陶しい。
左手で出した白いモクモク盾で、馬鹿みたいに突っ込んできた
鈍い衝突音と共に、「ぎぎゃぁ~!」とか言いながら三羽とも吹っ飛んで行った。
まあ、死ぬ事はないだろうけど……。
あ、白狼君達が食べたがるかな?
視線を下ろすと、白狼君(リーダー)が”流石にあれは食べられません! 主様!”という様に「がうがう!」吠えた。
まあ、そうだろうねぇ~
なんて思っていると、地面に転がった
うわ!
嫌なものを見た!
しかも、凄い数いる!
三十センチぐらいの赤黒い蟻で、多い時は何十万もの数で移動するかなり危険な蟻だ。
あの顎には、即効性は無いものの神経毒があるので、集団で噛まれると巨象さんですら遅れをとる事がある。
もっとも、わたしも含めたフェンリル一家にとってはただ煩わしいだけの存在でしかない。
そういえば、ケリーお姉ちゃんは嫌悪した様子で『気持ち悪い!』とか言いつつ、巣を見つけるたびに、焼き払っていたなぁ。
わたしにとっても、見たくない魔虫上位には位置するので黙ってみてたけどね。
そんな彼らは、自身の体が炎に焼かれるのも気にせず、
二メートル級の
上空にいる
う~ん、一応、獲物を奪われた形ではあるけど……。
どちらにしても、
なんて考えていると、あっという間に
気持ち悪い!
あと、
わたしは息を吸うと、「うぁをぉぉぉん!」と”威嚇の一吠え”をする。
馬鹿みたいに集まっていた
残りもヤバいと思ったのか、脱兎のごとく逃げていった。
ざまぁ~!
すると、白狼君(リーダー)がわたしを見上げつつ、”食べて良いですか? 主様?”というように「がうがう」と言う。
え?
いや、炎が駄目って事だろうけど……。
驚きの悪食だね。
『どうぞ』
とがうがう言って上げると、嬉しそうに、粉々になった赤黒い蟻を食べ始める。
……まあ、いいけどね。
しかし、
彼らがいるんであれば、イメルダちゃんを連れて行くのは厳しいかなぁ~
”威嚇の一吠え”があれば、簡単だけど、逆にそれが使えないのであれば、小さい分、かなり面倒くさい。
少なくとも、近衛騎士妖精の白雪ちゃんは必須として、ケルちゃんも一緒にいてくれないと、かなり不安だ。
胸元から出てきた白雪ちゃんにそのことを話すと、
林に到着したので、白狼君達は帰っていった。
あれから、コモドドラゴン君が突っかかってきたのを返り討ちにして、その内臓を上げたので、大軍蟻君と合わせて、恐らく満足していたと思う。
荷車を引きつつ、門番のジェームズさん達に挨拶をしつつ、町の中に入る。
いつものように解体所に向かい、中に入ると、解体所の所長グラハムさんが他の職員さん達と道具の手入れをしていた。
わたしに気づいたグラハムさんはにこやかに、手を振ってくれる。
そして、手に持っていた道具を置くと、職員さんに一言二言、指示をしつつ巨体を揺らしながら近寄ってきた。
「おう、サリー!
今度は何を狩ってきた!」
「頼まれていた鰐君、あとは雷魚――じゃなく、
「おお、
ありがたい!」
と言いつつ、グラハムさんは荷車のカバーを取る。
そして、ギョッとした顔になる。
「こ、これは、灰色
また、とんでもないものを……」
「え?
地竜君じゃないよ、その子」
「いやいや、本物の竜ではないにしても、巨体で毒を吐き出す恐るべき魔獣で、その姿も相まって、そのように名付けられたんじゃが……」
ああ、
そもそも、前世の似たようなトカゲ君もコモドドラゴンだったし、そう考えたら、灰色
いや、まあ、そんな事はどうでも良いか。
「今日は結構やる事が多いから、急いで!」
とグラハムさんの巨体を押しつつ急かす。
「なんじゃ、慌ただしいのう」
とか言いつつ、作業に入ってくれる。
そして、職員さんに指示しつつ、グラハムさんはわたしを見る。
「急いでいるなら、これらは預かるから、他の所に行っていても良いぞ?」
あ、確かにその手があるか。
「ああ、じゃあ、お願いできる?」
と答えると、グラハムさんはニッコリしながら頷いてくれた。
わたしが続けて「あと、アーロンさんってどこにいるか知らない?」と訊ねると「今日は見かけていないから、冒険者組合じゃないかのう?」と教えてくれた。
助かります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます