龍君の驚きの行動!

 イメルダちゃんも気に入ったのか「凄く美味しいわ」と嬉しそうに食べている。

 ただ、シャーロットちゃんやケルちゃんはやや不満らしく「美味しいけど、お肉も食べたい」「がう」「がう」「がう」とか言っている。

「まあまあ、たまには別のものも食べないとね」

とわたしが窘めると、致し方が無いと思ったのか「うん……」と言って、蟹の身をフォークでさし、食べている。

 ヴェロニカお母さんが少し困ったように、そんな様子を見ている。

 すると、イメルダちゃんが話し始めた。

「ねえ、サリーさん。

 物作り妖精の皆が言うには、明日辺り、家の改築工事を始めるって」

「そうなの?

 なら、わたしも手伝わないといけないね」

 すると、妖精姫ちゃんが飛んできて、身振り手振りをする。


 え?

 手伝いは不要?

 それより、労をねぎらう為のお菓子を買ってきて欲しい?

 えぇ~

 今回の改築は、蜂蜜で手を打っているはずでしょう?

 え?

 やる気が出る?

 そりゃ、出るでしょうけど~


 イメルダちゃんが眉を怒らせながら「姫ちゃん、いくら何でも厚かましくない!?」と言っている。

 でもまあ、そうだなぁ~

「仕方がない、焼き菓子を買ってきてあげよう」

と答える。

「ちょっと、サリーさん!

 甘すぎない!」

とイメルダちゃんは怒るけど「わたしも食べたいから」と答えておく。

 妖精姫ちゃん達は、嬉しそうに飛び回っている。

 可愛い!

「その代わり、頑張って改築してね」と言うと、身振り手振りで”もちろん!”と答えてくれる。

 すると、ヴェロニカお母さんが訊ねてくる。

「ねえ、サリーちゃん。

 いつも、苺の焼き菓子を買ってくるけど、他には種類が無いの?」

「え?

 あると思うけど……」

「そこのお菓子職人腕が良さそうだし、他のも食べてみたいわ」

 そういえば、なんとなく王妃様の焼き菓子ばかり注文していたけど……。

 他にも美味しい物があったら、勿体ないか。

 あ、材料を色々持っていったら、それを使って作ってくれるとかあるかな?

 そのことを話すと、ヴェロニカお母さんはニコニコしながら頷いた。

 そして、言う。

「でも、持っていく品物は吟味した方が良いわよ。

 蜂蜜とか、砂糖とか、加工していない季節外れの果物とか」


 う!

 釘を刺されてしまった。


 イメルダちゃんも「わたくしも一緒に選ぶから」と疑わしげな目をしつつ言う。

 うん……。

 助かります。


――


 朝、起きた!

 隣を見ると、ケルちゃんぬいぐるみがあった。

 あれ?

と思い、体を起こしながら隣を見ると、フェンリルぬいぐるみと龍のジン君を抱きしめるイメルダちゃん、に抱きつくシャーロットちゃんの姿が見えた。

 姉妹に挟まれ抱きつかれながら眠るジン君、ちょっとキツそうだ。

 うむ。

 可愛らしい絵ではあるけど、起きたら騒動になるのが目に見えているので、シャーロットちゃんをくすぐり、キャッキャと笑うその手の中に、ケルちゃんぬいぐるみを差し込む。


 これで良し!


 服に着替えて、寝室から出るといつものように待ち構えているケルちゃん――あれ?

 センちゃんの頭の上に、姉姫ちゃんがニコニコしながら座っていた。

 例の白い無地のワンピース――ひょっとして寝間着なのかな?

 そんな格好でセンちゃんの頭でぺったん座りをしている姿は、なんだか可愛らしい。

 座られているセンちゃんは、嫌がるそぶりも見せず、どことなく楽しそうにしている。

「姉姫ちゃん、おはよう?

 体調は大丈夫なの?」

 そう訊ねると、”元気元気!”と言うように手を振っている。

 一見すると、問題無さそうだけど……。


 前回も、そんな状態から突然、倒れたし、油断は出来ない。


 そんな事を考えていると、顔を険しくさせた悪役妖精が、凄い勢いで飛んできて、姉姫ちゃんの前で何かを言っている。

 それを、姉姫ちゃんは鬱陶しそうに”あっち行って!”というような態度で手を振っている。

 すると、近衛騎士妖精の白雪ちゃんや潮ちゃんら、女の近衛騎士妖精ちゃん達が八人ほど飛んでくると、姉姫ちゃんの腕やら足やらを掴むと、連行しようとしている。

 なにやら、姉姫ちゃん、抵抗してたけど、妖精姫ちゃんも飛んできて、その首根っこを掴むと連れて行ってしまった。


 ……さて、朝の日課をしよう!


 ケルちゃんを撫でつつ、外に出してあげる。

 今日は、少し曇っているけど、雨の匂いはしないから、まあ大丈夫かな?

 家の中に戻り、身支度を整える。

 妖精メイドのサクラちゃんに身振り手振りで”別の結い方はしないの?”と訊ねられたけど、今日はいつも通りにして貰った。

 髪も長くなってきたから、どこかの機会にでも考えたいと思っているけどね。

 いっそ、一本に束ねた方が邪魔にならなくて良いかな?

 そんなことを考えつつ、スライムのルルリンとサクラちゃんを肩に乗せて、家畜小屋に向かう。

 騒がしい赤鶏君の頬を指で突っつきつつ、赤鶏さんから卵を頂き、餌を上げる。

 山羊さんから乳を頂き、餌を上げる。

 もちろん、羊さん夫妻にも上げる。

 いくらか、慣れてきたのか、黄金羊さんに山羊さんが苛立っている様子が見られない。


 このままでいて欲しいものだ。


 山羊さん、羊さん、両夫妻を外に出した後、中央の部屋食堂に戻り、シルク婦人さんに卵と山羊乳を渡す。

 すると、上の方に気配を感じる。

 視線を向けると、龍のジン君だった。

 いつものように、体をくねくねさせながら空中を移動している。


 可愛い。


 すると、ゴロゴロルームからニコニコ顔のヴェロニカお母さんが出てきた。

 そして、ジン君に気づくと、手を差し伸べた。

 どうせ、嫌がられ、逃げられるだろうと思っていると……。

 なっ!?

 ジン君、ヴェロニカお母さんの方に飛んでいくと、その手に乗った!?

 しかも、いつもイメルダちゃんにしているように、その体に巻き付き始めた!?


 ば、馬鹿な!?


 わたしが驚愕していると、それに気づいたヴェロニカお母さん、どやっ! とした顔を向けてくる。


 ……。


 どうでも良いけど、ヴェロニカお母さん……。

 ジン君に巻き付かれてなんか凄く如何わしくなってるからね!

 特に、胸の谷間とか、とんでもない事になってるからね!


 ……なんか、むかつく!


 そんな事を考えていると、シルク婦人さんに籠を差し出され、「早く」と急かされたので、食料庫に向かう。

 シルク婦人さんに頼まれたものを籠に入れ、ルルリンにサクランボを上げつつ戻ると、イメルダちゃんがテーブルを拭いている所だった。

 先ほど、ヴェロニカお母さんにくっ付いていたジン君も、やっぱりイメルダちゃんの方が良いのか、移動している。

「おはよう」

と声をかけつつ、シルク婦人さんに籠を渡していると、イメルダちゃんも「おはよう」と返してくれた。

 そして、「町に行くなら冷房の魔道具の件、聞いてきて欲しいの」と続けた。

「ああ、そうだね。

 忘れないようにしないと。

 冷房の魔道具、ガラス、焼き菓子……」

 因みにガラスは、増設した時に作る部屋に、付ける事になっている。

 多分、時間がかかるだろうから、それまでは板の窓で作って貰う事になっている。

 急遽行く事になった町だけど、地味にやる事が多い!

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