龍君の鳴き声!?
蟻さんの事は心配だけど、仕事は終わらせないといけない。
金鉱石を取りあえず家に入れると、イメルダちゃん監督の元、サクサク木を
すると、近衛騎士妖精の
え?
木を運んでくれる?
ありがとう!
彼らがいてくれると、凄くはかどる!
あっという間に、伐採は終わった。
切った木に腰掛け、近衛騎士妖精の
すると、近衛騎士妖精の青空君が身振り手振りで聞いてくる。
え?
青空君を呼ぶ?
ん?
あ、名前?
ひょっとして、名前の由来を聞いているの?
青空君がニッコリと頷いた。
なので、教えてあげる。
「三人とも、髪の色から名付けているよ。
青空君は青い空、今みたいな空って意味だよ。
黒風は黒い風って意味だね。
潮ちゃんは青い海からだよ」
そうやって説明してあげると、青空君が少し不満そうにした。
え?
黒風君の名前の方が良かった?
格好良い?
いや、青い空だって壮大で良い名前だと思うけど?
え?
悪くないけど、黒い風とか強そう?
まあ、そうかもしれないけど……。
そんな青空君を、黒風君は面白そうに見ている。
「何なら、
と訊ねると、考え込んだ青空君は”黒風より弱そうだから、今のままで良い”と身振り手振りをする。
まあ、もう青空君で認識が固定されているので、改名しないのならありがたいかな。
足先を、湯船にゆっくりと入れる。
ふむ。
春になり、暖かくなったとはいえ、まだまだお湯の温もりは心地が良い。
もうすっかり、一人で入る事にも慣れたシャーロットちゃんも湯浴み着姿のまま、よどみ無くお湯の中に入り、腰を下ろしている。
わたしもその隣に腰を下ろした。
「はぁ~
気持ち良いね、シャーロットちゃん」
「うん、気持ち良い~」
そんな二人の前で、後から浴室に入ってきたイメルダちゃんが、ジン君を体に巻き付かせつつ、慎重に、湯船に入ってきた。
ジン君が薄手の湯浴み着を掴む様子に、少し心配になったけど、イメルダちゃんが問題ないって言うので、取りあえずそのままにしている。
見たところ、強く引っ張られている様子もないので、ジン君には本当に重さがほとんど無いのかもしれない。
ジン君を持った事が無いので、本当のところは分からないけど。
ジン君、可愛らしいから、触れてみたいんだけど、怖がって、なかなか触れさせてくれないんだよねぇ。
そんな事を考えているうちに、イメルダちゃんが浴槽の、わたし達から少し離れた場所で腰を下ろした。
ジン君が怖がるからって理由だけど、これもちょっと寂しい。
しばらくすると、ジン君はイメルダちゃんの体から、頭を前に湯の中に入っていく。
そして、イメルダちゃんの周りをすいすい泳ぎ始める。
「こら、ジン。
浴槽の中で泳いでは駄目よ」
と窘められると、嬉しそうにイメルダちゃんを見上げながら、その胸に向かって泳ぎ、肩の上に登っていく。
ふむ……。
わたしは笑顔で手を広げつつ、声を上げる。
「ジンく~ん!
こっちにおいでぇ~」
わたしの隣にいるシャーロットちゃんも「ジン君、こっちこっち!」と笑顔で招く。
が、ジン君はこちらをチラリと見ると、イメルダちゃんの体に巻き付き、顔をこちらからは見えない位置に持って行ってしまう。
えぇ~!
なんだか寂しい!
「……いいもん!
わたしにはシャーロットちゃんがいるから!」
と言いつつ、可愛い妹ちゃんの肩を引き寄せる。
シャーロットちゃんもニコニコしながら「シャーロットも、サリーお姉さまがいるから、いいもん!」と抱きついてくれる。
可愛すぎる!
二人して笑顔を向け合い「ねぇ~!」って言い合っていると、イメルダちゃんの方から何やら、「きゅ~! きゅ~!」っていう可愛らしい声が聞こえてきた。
え?
これって?
「ジン君、鳴いてるね!」「鳴いてる!」とわたしとシャーロットちゃんは向かい合ったまま、目を丸くする。
何それ!
龍君が可愛らしく鳴いている姿とか、見たい!
見たいに決まっている!
わたし達はうなずき合う。
そして、イメルダちゃんの方に、スススっと進んでいく。
「ちょ!
ジンが怖がるでしょう!」
「見せて!
ジン君が鳴く姿、見せて!」
「止めなさい!
あなた達、お互いがいれば良いんでしょう!」
それとこれとは別なのだ!
わたしとシャーロットちゃんは一生懸命、ジン君が鳴く様子を見ようとしたけど、まあ、当然のことながら、近づくわたし達に驚いた龍君はイメルダちゃんの背中の後ろに隠れ、鳴いてくれる事も無かった。
切ない!
朝、起きた!
抱きついてきていたシャーロットちゃんから抜け出て、ケルちゃんぬいぐるみと入れ替わる。
そして、チラリとその隣に視線を向ける。
寝ているイメルダちゃんの腕の中に、龍のジン君がいる。
そのジン君の角には、布と綿で出来た黄色のカバーが付けられていた。
流石は手芸妖精のおばあちゃんと言うべきか、頼んだその日に作ってくれた。
ジン君用なので凄く小さいのに、更に小さい花柄の刺繍がされていて、凄く可愛い。
男子系龍君にはちょっと可愛すぎる気もするけど……。
イメルダちゃんの安全のためでもあるので、諦めて付けて貰う事にした。
付ける時、ジン君は嫌がったけど、イメルダちゃんが「可愛いわよ」と褒めると、致し方がないというように付けられた。
いや、そんな事を考えている場合じゃない。
部屋から外に出て、待ち構えていたケルちゃんのモフモフを堪能した後、外に出してあげる。
今日も晴天なり!
木材は準備したので、後は物作り妖精のおじいちゃん達が加工する事になる。
なので、わたしは取りあえず手が空く事となる。
どうしようかな?
ケルちゃんを連れて、狩りにでも行こうかな?
あ、シルク婦人さんから、雷魚君を獲ってきて欲しいって催促されていたんだった。
なら、川にでも行ってこようかな?
ついでに、解体所の所長グラハムさんからお願いされていた鰐君も獲ってこようかな?
うん、そうしよう!
そんな事を考えつつ、家の中に戻り、身支度を整え、飼育小屋に行き、乳や卵を頂く。
戻ってくると、また上の方で気配を感じた。
視線を向けると、昨日同様、龍のジン君がくねくねしながら飛んでいた。
いや、昨日と違い、その背に妖精メイドの黒バラちゃんを乗せていた。
乗せていたというか、乗られていた、かな?
なにやらジン君の角を持って楽しそうにしている黒バラちゃんとは違い、ジン君は助けを求めるように、イメルダちゃんを探しているようだった。
全くもう……。
わたしは左手から白いモクモクを出すと、ご満悦な顔をしている黒バラちゃんの両脇にそれを近づける。
そして、くすぐる。
”ひゃ!”っと言うようにジン君の角から手を離した黒バラちゃんの、その腰にモクモクを巻き付けると、引っ張り寄せる。
解放されたジン君は、一度こちらを見た後、くねくねさせながら、寝室の方に飛んでいった。
引き寄せた黒バラちゃんが、ぷりぷり怒っている。
いや、あの子、もし本当に龍なら、彼が大人になった時、凄く後悔する事になるからね!
そのことを話して上げると、黒バラちゃんは表情を引きつらせている。
そんな様子を、サクラちゃんは呆れた顔で見ていた。
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