姉的妹ちゃんに主張をしよう!

 そんな事を考えつつほっこりしていると、軽運動室に繋がる扉から、イメルダちゃんが出てきた。

 それに気づいたジン君は、体をくねくねさせながら姉的妹ちゃんの方に進んでいき、その体に巻き付いた。

 そして、顔をイメルダちゃんの腕に擦りつける。

「あら?

 どうしたの、ジン」

と、イメルダちゃんは少し驚いたように受け入れると、ジン君の頭を撫でた。

 そして、わたしに気づくと、眉を怒らせる。

「ちょっと、サリーさん!

 ジンを怖がらせちゃ駄目じゃない!」

「えぇ~!

 ただ見てただけなんだけどぉ~」

 わたしが弁明しても、「不躾に見ない!」と言われてしまった。


 酷い!


 倉庫小屋に向かい、シルク婦人さんにお願いされた物を籠に入れて行く。

 肩に乗ったスライムのルルリンがぽよぽよ揺れる。


 え?

 どうしたの?

 今日はさくらんぼが食べたいの?

 はいはい、分かりました。


 冷蔵庫に入れていたさくらんぼの束を渡してあげると、ルルリンは取り込み溶かしていく。

 種や枝も一緒くたに食べちゃった。

 ま、まあ、スライムだし問題ないよね。


 え?

 もっと?

 仕方がないなぁ。

 あと、少しだけだよ。


 五粒ほど追加で与えた後、中央の部屋食堂に戻った。

 テーブルの所で、イメルダちゃんが龍のジン君を撫でながら「あなたは甘えん坊ねぇ~」などとやっている。

 ジン君も気持ちよさそうに、されるままになっている。

 ……そういえば、イメルダちゃんって、わたしがハグをすると怒るけど、ジン君には嫌がる様子は無いよね。

 まあ、ジン君が幼いからってのもあるかもしれないけど、わたしだって女の子――別に問題ないと思うけどなぁ。

 イメルダちゃんは「ジンは可愛いわねぇ~」なんて表情を緩めている。


 ふむ。


 わたしは、シルク婦人さんに籠を渡すと、イメルダちゃんの側まで行く。

 そして、膝を床に突けると、「ん」と言いつつ手を広げ、甘やかすようアピールをしてみる。

「……何してるの、サリーさん」

「抱っこ」

「……馬鹿な事をやってないで、パンでも作ったら?」

と、姉的妹ちゃんに冷たく言われてしまった。

 釈然としない!

「何故!?

 わたしだって、こんなに可愛いのに!」

 わたしの心からの叫びだったのに、イメルダちゃんは顔を引きつらせながら「いや、なにおかしな事を言ってるの!」と返されてしまった。

 釈然としない!

 すると、中央の部屋食堂に入ってきたシャーロットちゃんが、わたしの隣に並ぶと「シャーロットだって可愛いのに!」と楽しそうに主張する。


 可愛い!


 すると、ゴロゴロルームから出てきたニコニコ顔のヴェロニカお母さんも、スススっと近づいてくると、更にその隣に膝を突き、手を広げながら「お母様も可愛いのに!」とか言っている。

「いや!? え!? ちょっと!?」

と慌てるイメルダちゃんの前に妖精姫ちゃんや妖精メイドちゃん達が飛んできて、くるくる飛びながら、”わたしたちも可愛い!”とかアピールし始める。

 さらに、家に戻ってきていたケルちゃんも”わたし達も!”と言うように「がう!」「がうう!」「ごう!」と吠え、スライムのルルリンも天井の梁に飛びつくと、主張するようにビヨンビヨンと揺れている。

 そんな皆の主張に、あわあわするイメルダちゃんは「もう、分かったから! 分かったから!」と慌てている。


 そんなイメルダちゃんは、誰よりも可愛かった。



 朝ご飯を食べ終え、洗濯を終えると、外に出る。

 さて、領土拡張と木材の確保をしよう!

 しかし、先ほどはやはりというか何というか、イメルダちゃんに無茶苦茶怒られた。

「サリーさんが馬鹿な事をすると、皆がマネをするから止めなさい!」って。

 皆だって、イメルダちゃんに可愛がって貰いたいだけって言うも「面白がっているだけでしょう!」と顔を真っ赤にさせながら言ってた。

 まあ、その通りはそうなんだけど、イメルダちゃんの反応が可愛いってのも、多分にあると思うなぁ。

 そんな事を考えていると、結界に近づく気配を感じる。


 視線を向けると、蟻さん達だった。


 何やら、ソフトボールサイズの金ピカな石を持っている。


 え?

 一見するときんで出来ている様に見えるけど……。

 いや、本物じゃないよね?


 近づくと、蟻さんは顎をカチカチ鳴らせながら、何やら自慢げに胸(?)をそらしている。


 え?

 どうしたの蟻さん?

 え?

 これで、林檎とかを交換って事?


 受け取ってみる。

 金色にキラキラ光る鉱石だった。

 え?

 本物の金なの?

 前世、中学生女子には判断できないんだけど……。

 あれ?

 でも、金鉱石って、含有量は微々たる物ってWeb小説に書いてあった気がするけど、これ、所々、黒色の石が混ざっているけど、ほぼほぼ、金色なんだけど?


 困惑していると、物作り妖精のおじいちゃんが目を見張りながら駆けてきた。

 そして、”見せて見ろ”というように身振り手振りをする。

 渡してあげると、おじいちゃん、真剣な表情で時々角度を変えながらその石を見つめている。

 そして、本物だというように頷いて見せた。


 えぇ~!

 きん!?

 ゴールド!?

 いや、どうすれば良いの!?


 蟻さんにちょっと待って貰い、近くにいた妖精ちゃんに、イメルダちゃんを呼んで貰う。

 家から出てきたイメルダちゃんは、龍のジン君を体に巻き付けたまま、わたしの方に早足でやってくる。

 その側には、近衛騎士妖精の白雪ちゃんも飛んでいる。

 側に来たイメルダちゃんは、わたしが持っている金を見て、目を丸くした。

「本物なの?」

「物作りのおじいちゃんはそう言ってるから、多分、本物だと思う」

「本物……」

 イメルダちゃんは呆然とわたしの手にある金を見つめる。

「ねえ、イメルダちゃん。

 これって、町で売れると思う?」

「そうね……。

 売ろうと思えば、売れるとは思うけど……」

「目立つよね」

「まあ、間違いなく、ね」

 巨大な魔石、黄金羊さんの羊毛、そして、そのまま黄金って、なんか持て余しそうなものが、集まってきてるなぁ~

 あ、いや、まずは蟻さんにお返しをしないと。

 わたしは、スモモ、林檎、ラズベリーを育てて、お供の蟻さん達に渡した。

 そして、「蟻さん、ありがとう。でも、これ、今回だけで良いから」と言っておく。


 何故か、中心らしき蟻さんは、ショックを受けた様子になった。


 何やら、”え!? これ、欲しいものだよね!?”というように身振り手振りしてくるけど、いや、あのね。

「良いものだけど、わたし達には持て余す物でもあるの」

と答えると、何やら、がっくり肩(?)を落としている。


 ん?

 どうしたんだろう?

 普段なら、そこまで気にする蟻さんではない気がするんだけど……。

 ひょっとしたら、食糧が不足しているのかな?

 でも、蟻さんから欲しいものかぁ~


「あ、前に貰った、白い玉!

 あれは欲しいなぁ」

 龍のジン君用に取っておきたいし、あれを食べれば妖精ちゃんと話せるようになるなら、わたしも欲しい。

 だけど、蟻さんは首を横に振る。

 そして、何やら、とぼとぼと帰っていく。


 手に入らないって事かな?


 そういえば、妖精姫ちゃんにもそんな風に回答していたか。

 結界から出て、蟻さんを追いかける。

「ねえねえ、蟻さん。

 食糧が不足してるの?

 何ならもう少し、分けてあげようか?」

 でも、蟻さんは”違う違う”と言うように力なく身振り手振りをすると、そのまま歩いて行く。


 えぇ~

 どうしちゃったのさ?


 イメルダちゃんも「蟻さん、どうしたのかしら?」と少し心配そうにしている。

「う~ん、分からない」

 なんやかんや言って、蟻さん達には助けられているから、何かあったんなら力になって上げたいんだけどなぁ。


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