妖精ちゃん達について聞こう!2

 そう答えると、サクラちゃんは少しホッとしたような、嬉しそうな笑顔で頷いてくれた。


 ひょっとしたら、変な由来のものだったら、どうしようとか思われてたのかな?

 他の子にも説明をした方が良いかな?


 そんな事を考えていたら、白雪ちゃんと視線が合った。

 なので、「白雪ちゃんは白い雪って意味だよ」と説明をしていると、ウメちゃんがすーっと飛んできたので、「ウメちゃんも赤くて綺麗な花を咲かせる木があって、それが由来だよ」と教えてあげたら、白雪ちゃんもウメちゃんも嬉しそうにした。


 可愛い!


「喜んで貰えるなら、皆に名前を付けてあげた方が良いかな?」

 などと思案していると、サクラちゃんが首を横に振った。

 イメルダちゃんが訳してくれる。

「サクラちゃん達は嬉しいけど、望んでいない子達もいるので、無理に付けないで欲しいって。

 ただ、基本的に側に寄ってくる子は、名付けが嫌では無いと思うから、思いついたらで良いので、命名してあげて欲しいって言っているわ」

「ふ~ん」

と呟きつつ、わたしの小さな家の前に視線を向ける。

 家の前には、先ほどの打ち合わせからいる物作り妖精のおじいちゃんが胡座をかきながら、スモモを囓っていた。

 ひょっとしたら、おじいちゃん達も名前が欲しいかな?

 物作り妖精のおじいちゃんはわたしの視線に気づくと、苦笑しながら首を横に振った。

 そして、イメルダちゃんに何かを言う。

「おじいちゃんは今更、名前はいらないって」

「そうなの?

 ……そういえば、妖精ちゃん達って寿命はあるの?

 あと、年を取るの?」

 そのことを訊ねると、サクラちゃんが答え、イメルダちゃんが教えてくれる。

「年も取るし、寿命も有るらしいわよ。

 そして、死ぬと大木に取り込まれ、新たな命として誕生する事になるんだって」

「ふ~ん」

 妖精ちゃん達って、わたしが想像したより、奥が深いのかもしれない。


――


 朝、起きた!

 むくりと起きると、妹ちゃん達に視線を向ける。

 ケルちゃんぬいぐるみを抱きしめて眠るシャーロットちゃんが「ケルちゃんがいれば、町に行っても平気~」とかムニャムニャ言っている。


 可愛い!


 フェンリルぬいぐるみを抱えるイメルダちゃんは……。

 あ、ぬいぐるみとイメルダちゃんの間に、龍のジン君が入り込んでいる。

 ベッドの上に置いた籠の中に入れて、寝かしていたのにいつの間に……。

 いや、可愛い龍君とイメルダちゃんの寝顔は凄く良いんだけど、ジン君の頭の角がイメルダちゃんに刺さらないか、ちょっと心配だ。

 寝る時にカバーとか付けられないかな?

 手芸妖精のおばあちゃんに相談してみよう。

 そんな事を思いつつ、服を着替えて、部屋から出る。

 扉の前に、ケルちゃんがお座りして待っていたので「おはよぉ~」と言いつつ、ライちゃん、センちゃん、レフちゃんのモフモフを堪能する。


 温かくてきもちぃ~!

 え?

 外?

 はいはい。


 玄関を開けると、外は晴天だった。

 その中を、ケルちゃんが飛び出ていく。

 うむ、今日は家の改装に使用する木材を切り出す予定なので、天気が良いのは助かる。

 サクサクと頑張って切り出さなくては。

 今回は西と東にある木を切っていく予定だ。

 東は、飼育小屋の皆が遊べる広場を、もう少し大きくするつもり。

 巨大蜂さんの巣の問題もあるし、どちらかというと北東に広げる感じかな。

 西は現在ある貯蔵庫から、更に広げていく予定だ。

 現時点では家自体を大きくする予定は無いけど、まあ、何かあった時にすぐに準備できるようにっておく事にした。


 頑張らなくては!


 そんな事を考えつつ、家の中に入る。

 身支度を整え、いつものように下りてきたスライムのルルリンと、飛んできた妖精メイドのサクラちゃんを肩に乗せ、シルク婦人さんから壺や籠を受け取り、飼育小屋に向かう。 騒々しい雄の赤鶏君に「はいはい、ちょっと待ってて」と言いつつ、雌の赤鶏さんから卵を頂く。

 そして、赤鶏の皆に餌を与える。

 赤鶏さんの世話をしているのに、”早く外に出せ”と言うように「メェ~! メェ~!」とうるさい山羊さんに近づくと、その背中をポンポン叩きながら宥めつつ、乳を頂く。

 山羊さん夫妻に朝ご飯を上げていると、お尻に衝撃を受けた。

 視線を向けると黄金羊さんで”後回しにするな!”という様に「メェ~! メェ~!」鳴いている。


 はいはい、あなた達にもね。

 っていうか、黄金羊さん、毛の長さがすっかり元に戻ってるね。


 背中のモコモコしている毛を触ってみる。

 ふむ、柔らかくて温かい。

 派手なのに目をつぶれば、非常に良いものにも思える。

 コートとかこれで作ったら温かそう。

 想像してみる。


 ……わたしが着たら完全に色物芸人さんだ。


 でも、ヴェロニカお母さんだったら、似合いそう。

 あの人自身、輝くほどの美人さんだし。

 まあ、ヴェロニカお母さんにはキジさんの羽で作ったダウンコートがあるから、あえてそんな派手派手しいものを作る意味は無いけどね。

 ……黄金羊さんが”わたしの毛が欲しかろう。分かる分かる”って顔でこちらを見てくる。


 いや、どちらかというと、お隣の白羊さんの方が欲しいからね!

 君のは、持て余し気味だからね!


 そんな事を考えていると、またしてもお尻に衝撃を受ける。

 山羊さんが”ご飯は食べたので、さっさと外に出せ!”というように「メェ~! メェ~!」と騒いでいる。


 どうでも良いけど、君たち、わたしのお尻を的にするの、止めて!


 山羊さん、羊さん夫妻を外に出していると、何かが近寄ってくる気配を感じた。

 視線を向けると、兵隊蜂さんだった。

 壺を抱えているって事は、週に一回の蜂蜜を持ってきてくれたんだろう。

 受け取り、「ありがとう!」と送り出すと、妖精ちゃん達が群がってきた。

「はいはい!

 中央の部屋食堂で分けてあげるから、纏わり付こうとしない!」

と追っ払いつつ、家の方に戻る。

 シルク婦人さんに卵と乳を渡し、妖精ちゃん達と蜂蜜を分け合っていると、寝室から何か出てくる気配を感じた。


 ん?

 上の方?


 視線を向けると、龍のジン君だった。

 不安そうな顔をしながら、キョロキョロと辺りを見ている。

 なんかジン君、水の中を進むように宙を飛んでるんだけど……。


 えええ!?

 どういう原理なの!?


 前世の授業かなんかで見た、海中の様子を映した映像に出てきたウミヘビみたいに、体を蛇のようにくねくねさせながら、スルスル進んでいる。

 興味深く観察していると、ジン君、わたしの視線に気づいたのか、顔をこちらに向けて、ぎょっとした表情になった。

 そして、必死に逃げるようにくねくねを早くして、部屋の方に逃げていく。


 速度はまあ、速くは無い。

 イメルダちゃんの早足ぐらいだ。


 にもかかわらず、一生懸命からだを動かしている姿、申し訳ないけど……。

 可愛い!

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