片付け方を相談する!
わたしは念のために視線を周りに向ける。
近くにはアーロンさんとグラハムさんがいるだけで、解体所の奥で作業をする所員さん達は仕事をしているから、こちらを注視する人はいない。
ならいいか。
「偽竜君――あ、ワイバーンね。
やっつけたの」
グラハムさんは声を落としつつも「何じゃと!?」と叫び、アーロンさんは苦悩するように顔を
アーロンさんは確認するように言う。
「ワイバーンを倒した。
だから、
いや、それよりまずは、それをどこで倒した?」
「今日、家を出た時に襲ってきたのを返り討ちにしたの。
だから、これも町からは離れているよ」
「そうなのか?
いや、喜んでは駄目なんだろうが……」
……今日はたまたまイメルダちゃんが外に出て、大変な事になった訳だけど、普段なら
それに比べて、この町付近に
そう考えたら、ホッとするアーロンさんを
「集落への被害は大丈夫なのか?
ロック鳥を倒したお前んところがどうにかなるとは思えないが、ワイバーンは人食カマキリ
「大丈夫。
運悪く、今日は妹ちゃんを町に連れて行こうと外に出た所を狙われたんだけど……。
ちゃんと倒したから。
ただ、妹ちゃんには、怪我は無いけど怖い思いをさせちゃって……」
「そうか……。
怪我が無いのは幸いだが……」
「前に来たあの子の事じゃろう?
あんなに小さな子だ。
それはどんなに恐ろしかった事か。
可哀想に……」
アーロンさんに続き、グラハムさんも痛ましい顔をする。
また、落ち込みそうになったけど、何とか堪えて、わたしは先に進める。
「そういう事で、集落に三匹ほど居るの。
別にどうしても売りたいって訳じゃないんだけど……。
どちらかというと、ワイバーンのお肉って食べられるか聞きたかったの」
グラハムさんがそっと言う。
「ワイバーンの肉は美味だぞ。
勿論、内臓やその近辺、そして何より尾と、その根元辺りは絶対に食べては駄目じゃがな。
特に羽の元の部分など、最高食材だと言われている」
「え!?
そうなの?」
しまった。
羽の部分は食べた事ないや。
……あれ、その部分って、いつもケリー姉ちゃんが食べていたような。
”小さい妹は足の方が良いでしょう?”とか言って……。
おのれ、お姉ちゃん!
美味しい部分を独占してたなぁ~!
優しいお姉ちゃんだと感動してたのに、とんでもないお姉ちゃんだ!
などと心の中で憤慨している間も、グラハムさんの話は続く。
「ただ、ワイバーンで注目すべきは肉じゃない。
奴の膜のような羽は貴族様の外套を作る材料として重宝される。
それ以外の、皮や爪、尾や牙、骨や眼球などなど捨てる所が無いと言われている。
なので、買い取れるのであれば、是非とも、お願いしたいのじゃが……」
グラハムさんは視線をアーロンさんに向ける。
マッチョ系おじいちゃんなアーロンさんは苦い顔をしながら言う。
「ワイバーンを討伐したとなれば……。
恐ろしいほど目立つぞ」
「まあ、そうだよね」
どうせ、そんな感じだって分かってはいたけどね。
ん?
「あ、でも持ってこれる三匹の内、二匹はわたしが倒したんじゃないけど」
「お前じゃない?
……ああ、お前の兄姉か?
それなら、やりようがあるか」
などと言いつつ、アーロンさんは考え込み始める。
”
説明するのが面倒くさそうだからだ。
因みに、我が
う~ん。
白雪ちゃんは、一対一なら行ける気がする。
黒風君も、多分行けるかな?
他の近衛兵士妖精の中にも何人かはいそうではある。
あとは、ケルちゃん……。
例のレフちゃんの能力で倒せるかな?
スライムのルルリンは流石に難しいか……。
いや、あの子って、正直、底が知れない所があるし、或いは……。
などと考えていると、アーロンさんが言う。
「そうだな……。
買い取れるなら三匹とも買い取りたいな」
「え?
大丈夫なの?」
「ああ。
とはいえ、普通にやるのは駄目だ。
「絡め手?」
「そうだ。
まず、お前が町の近くまでワイバーンを持ってくる。
そして、それを所定の場所に置く。
で、わしが指示をしてライアンらを向かわせ、ワイバーンを”発見”させるんだ」
「???」
「あくまで発見したと言うのが肝だぞ。
そして、冒険者組合に報告する。
分かるか?」
「……落とし物を見つけたって感じ?」
「まあ、そうだな。
周りにそれを倒したらしき人間も当然いない。
そうすると、そのワイバーンの所有者は、拾い主の物となるんだ」
「なるほど、そういう名分で売るって事だね」
アーロンさんは頷く。
「ワイバーンが落ちていたんだ。
ある程度、騒ぎにはなるだろうが、生きていたのならともかく、死んでいるのだ。
それもすぐ落ち着くだろう。
仮に……。
まあ、ほぼないだろうが、何者かが知りたがり、”真偽の魔術石”を使ったとしても、ライアンらは知らんし、わしもお前の兄に有った事が無いからな、上手い具合に誤魔化せる。
わずかな可能性ではあるが、お前の所まで調査が進んだとしたら……。
ライアンの手伝いはしたけど、よく分からないとでも言っておけ。
後はこちらで上手い事をする」
「うん」
そこで、アーロンさんは何故か苦笑する。
「とはいえ、実際の所、お前にとってそこまでしてワイバーンを売る理由など無いぞ。
先ほども言ったが、わずかながら損害を受ける可能性もある。
それでいて、得る金額も、ライアンらの手間賃、冒険者組合の手数料、後、問題を回避するために領主様にもいくらかの素材を献上しなくちゃならん。
それでも、それなりの金額にはなるだろうが……。
お前、そこまで金が必要か?」
お金かぁ~
「あれば欲しいけど、現状、そこまで必要としてないかな?
ただ、うちだけでは消費できないから、勿体ないと思うだけで……」
でも、そんな事でリスクを取るのもあれだなぁ~
そうだな……。
「わたし、お金はいらないや」
「え!?」
「なんじゃと!?」
わたしの言葉に、アーロンさん達は目を見張る。
「わたしは町の近くに、
それ以上、関与しない。
それで良くない?
下手に金銭のやり取りをすると足が付きそうだし」
「いや、だがお前の利益が……」
「わたしは命を奪ったにも関わらず、それを無駄にするのが嫌なだけなの。
それが、町に還元されるなら、わたしとしては満足」
『無為に命を奪っては駄目よ。
奪ったからには、少なくとも、その身は出来るだけ自身の血肉にしなさい』
普段からママが言っていた言葉だ。
そう言いながら、ママは
もっとも、『マズいマズい』と顔を
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