何故か、待ち構えていた小白鳥の団!
森を走り、川を越えて、更に走る。
草原に出ると、サーベルタイガー君達が獲物をむさぼり食べていた。
あ、あれ、食べられているの
なんて感心しつつ、通り過ぎる。
ん?
空を何羽も――魔鳥かな? 飛んでいる。
ひょっとしたら、
あ、それともロック鳥さん(エリート)プラス
今となっては、分からないけど。
そんな事を考えつつ、右前方に視線を向けると、巨大なカマキリ君が鎌を胸に合わせたまま、突っ込んできた。
全長三メートルくらいかな?
見た目によらず、結構早い。
そして、見た目で言えば、美味しそうには見えない。
う~ん、どうしたものか。
白狼君達が食べるかな?
なんて考えていると、白雪ちゃんが胸元から飛び出てきた。
そして、抜剣をするとサーベルに魔力を込め、振るった。
カマキリ君、水色の魔力に包まれ、氷像の様になっちゃった。
……。
白雪ちゃんに視線を向ける。
「これ……。
いる?」
うん、やっぱり、いらないよね。
『白狼君達はいる?』
がうがう訊ねると、白狼君(リーダー)は少し考えたのち、首を横に振った。
まあ、流石に
……町に持っていけば喜ばれるかな?
巨大カマキリ君を荷車に寝かせて、先に進む。
林に着いたので、白狼君達と別れる。
白雪ちゃんには透明になって貰い、門まで進むと、門番のジェームズさん達と一緒に、何故か、小白鳥の団の皆が待ち構えていた。
え?
なに?
荷車を引きながら近づくと、ニコニコした顔の小白鳥の団団長のヘルミさんが駆けてきて、わたしの背や荷車の上に視線を向ける。
「あれ?
妹ちゃんは?」
「え?
ヘルミさん、なんで
わたしが訊ねると、遅れてやってきたクッカさんが「赤鷲の皆が話してたのを耳にしたのよ」と言う。
ちょっとぉ~!
ヘルミさん達が騒ぐと、注目されちゃうでしょう!
赤鷲の皆には注意が必要だ!
なんて、内心で怒っていると、クッカさんの後からやってきたリリヤさんが「それで、妹ちゃんはどうしたの?」と訊ねてきた。
わたしは沈んだ気分になりながら答える。
「実は、ここに来る途中で魔物に襲われちゃって……」
「え!?
大丈夫なの!」
ヘルミさんが叫ぶので、慌てて付け足す。
「大丈夫!
怪我一つしてないから!
ただ、やっぱり、怖かったと思うから、今日は家で大人しくして貰う事にしたの」
ヘルミさん達はホッとした顔で「そう、良かったわ」「良かったぁ~」「うん、良かった」と言ってくれる。
ヘルミさんは荷車に視線を向けながら「布の下に何か見えるんだけど、ひょっとして、襲って来た奴を運んでいるの?」と言いつつ、布を捲る。
そして、顔を引きつらせた。
「こ、これ、人食カマキリじゃない!」
「え!?」
「うわ、本当だ!」
ヘルミさんの悲鳴混じりの言葉に、のぞき込んだクッカさんやリリヤさんも顔を引きつらせる。
「この子、人食カマキリなんていうの?」
わたしが訊ねると、ヘルミさんが大きく頷く。
「こいつは、人を好んで襲うからそう呼ばれてるの。
子供の頃も危険だけど、成虫になったらもう、手が付けられない魔虫なんだけど……。
凄いわね、カチコチに凍っている。
これ、サリーちゃんがやったの?」
「ううん……」
なんて言おうか、一瞬考えてから「うちの集落の人がやったの」と言っておいた。
「凄いわね!
火蜥蜴のフレドリクさんでもここまで見事には凍らせられないんじゃないかな?」
ヘルミさんが感心したように言うと、クッカさんが付け加えるように言う。
「フレドリクさんは元々、火炎系が得意って事だから一概に優劣を付ける事は出来ないけど、凄いのは間違いなさそうね」
へぇ~
フレドリクさんって、炎系が得意なんだ。
あ、火蜥蜴だもんね、そりゃそうか。
などとやっていると、門番のジェームズさんが近づいてくる。
そして、恐ろしげな顔を更に
「お前達、門の前で話し込むな!
中に入るのなら、さっさと入れ!」
「あ、ごめんなさい!」
わたし達は慌てて、町の中に入った。
門番のジェームズさん、縄張りを侵した跳ねっ返りを見る犯罪組織のボスみたいで、久しぶりに、凄く怖かった。
小白鳥の皆と別れて、解体所に向かう。
中に入ると、解体所の所長グラハムさんと組合長のアーロンさんが、端の方に置いてある椅子に座りながらお茶を飲んでいた。
田舎の道に椅子を出してのんびりしているおじいちゃん達みたいで、なんだかほのぼのする。
でも、アーロンさんはわたしを見るなり、嫌そうな顔になった。
それ、失礼じゃない!?
ムッとしながら近づくと、アーロンさんは言う。
「ようやく、冒険者組合も落ち着いてきたんだが……。
よもや、また問題ごとを持ってきたんじゃないだろうな?」
「えぇ~!
そんな訳――」
そこまで言って、脳裏に我が家にある
「――無い事も無い……かな?」
「おい!」
と怒鳴るアーロンさんの横で、グラハムさんが大きなお腹を揺らしながら「ガッハッハ!」と笑っている。
それでも、ちょっと納得がいかなかったので「これまで、わたし自身が原因のやっかいごとは、そんなに無いはず!」と唇を尖らせると「まあそうだが」と苦い顔をする。
「だが済まんと思うが、お前が関わっているってだけで、とてつもないものがやって来たり、起こったり、そして、最終的にお前がやらかしたりしそうで……。
そう考えるだけで、心労が……」
などと、ぶつくさ言っている。
解せぬ!
「いや、もう、それで、何だ!」
と頭を掻きながらアーロンさんは立ち上がると近づいてくる。
そして、荷車に視線を向けた。
「この中にあるものが、
「ん?
違うよ。
それは、途中で狩ったカマキリ君」
「カマキリ君?
まさか……人食カマキリか?」
「小白鳥の三人はそう言ってた」
アーロンさんは天を仰ぎ、片手で顔を覆う。
「いや、そうだな……。
お前にとっては、やっかいごとの範疇には入らないな……。
因みに、これはどこら辺で狩った?」
「町からはそれなりに遠いよ」
「そうか。
お前の所の集落は――心配するだけ無駄か。
なら良い。
もし、町の近くでこいつを見つけたら、出来るだけ狩って欲しい。
そして、わしらに知らせて欲しい。
人食カマキリは悪名高いから、出来れば人に知られないようにな。
下手をすると、町中が混乱する事になる」
「そうなんだぁ~
うん、分かった」
アーロンさんは「ヘルミの奴は……ともかく、クッカがいれば大丈夫か?」などとブツブツ言い出したので、その間に、カマキリ君をグラハムさんに渡す。
グラハムさんも白雪ちゃんがコチコチにしたカマキリ君を見て、目を丸くしていた。
「まあ、人食カマキリはともかく……。
それで?
そのやっかいごとというのは何だ?」
アーロンさんが目を険しくさせながら聞いてくるので、わたしは手を軽く振る。
「やっかいごとというか、後片付けというか?
まあ、最悪、離れた場所に捨てれば良い物なんだけど……」
「前置きは良い!
さっさと話せ!」
「ん~」
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