妹ちゃんと町に行く件について、相談する!

 すると、物作り妖精のおじいちゃんが笑顔で赤褐色の物を持ってきた。

「あ!

 じょうろ!

 これも、作ってくれたんだ!

 ちゃんと、わたしが指定した形になってる!」

 わたしが感動していると、イメルダちゃんが不思議そうに訊ねてきた。

「なにそれ?」

「じょうろっていう水を撒くための道具だよ!」

 早速、ため池からじょうろに水を入れる。

 ……しゃがみながら行うの、ちょっと大変かな?

 などと考えつつ立ち上がると、地面で傾けた。

 おお!

 ちゃんとシャワーになってる!

 イメルダちゃんも目を丸くしながら「これなら、広い範囲均等に水がまけそうね」と言ってくれた。

 ただ、イメルダちゃんに渡して見たけど、姉的妹ちゃんが顔を赤くしながら抱えて何とか持てるぐらいの重さだった。


 ……ごめん、プラスチック製の基準でお願いしてしまった。


 なので、今ある分はお手伝いをする妖精ちゃん用にして、イメルダちゃんにはもう二回り小さい物を準備して貰う事にした。


 イメルダちゃんはちょっとがっかりした顔をしていたけど、仕方が無いよ?

 金属製の大きいじょうろは十一歳の女の子には重すぎただけだからね!


 あとは……。

「水をくむのにもうちょっと楽にならないかな?

 ため池からだと、どうしても深く屈まなくてはならないし」

 わたしがそんな事を呟いていると、物作り妖精のおじいちゃんがわたしの足を自信ありげに叩いた。


 え?

 その辺りも考え済み?

 回る?

 あ、この前話した水くみ水車の事?

 それを使うのね!

 流石は物作り妖精のおじいちゃん!


 わたしが褒めると、ちょっと照れくさそうにする。

 照れるおじいちゃん、可愛い!


――


 ため池作りも一段落して、家の中に戻る。

 シャーロットちゃんとリバーシで軽く遊んだ後、夕飯になった。


 皆でご飯を食べながら、日焼けの話になる。

 わたしが蜂蜜を塗る話をすると、ヴェロニカお母さん「少し勿体ないわね」と言いつつも「肌のため……」と真剣に考え込んでいた。


 わたしが、甘味と美容の狭間に揺れる大人を生暖かい目で見ていると、ヴェロニカお母さんは顔を上げて言う。

「そういえば、ラズベリーの液が日焼け止めに良いと、聞いた事があるわ」

「え?

 ラズベリー?

 ……ああ、そういえば」

 確か、Web小説にも書いてあったなぁ。

 ラズベリーオイルだっけ?

 ラズベリーもあるし、作れ……無くは無いかな?

 今度、試してみよう。


 ご飯を食べ終えた後、イメルダちゃんが妖精姫ちゃんに何やら相談をし始め、シャーロットちゃんが妖精メイドのウメちゃんとリバーシをし始めるのを横目に、ゴロゴロルームの中にそっと入る。

 すると、わたしを見つけた赤ちゃん的妹ちゃんであるエリザベスちゃんが一生懸命、ハイハイをしながら近づいてきた。


 可愛い!


 わたしはエリザベスちゃん落下防止の柵、その入り口を開けて、「エリザベスちゃぁ~ん」と可愛い妹ちゃんを持ち上げた。

 エリザベスちゃん、嬉しそうにキャッキャと笑っている。


 柔らか可愛い!


 奥で刺繍をしていたヴェロニカお母さんが「エリザベスはサリーちゃんが大好きみたいね」と目元を緩めている。


 だと嬉しいなぁ~


 わたしは柔らか温かいエリザベスちゃんを抱っこしながらヴェロニカお母さんの隣に座る。


 そして、イメルダちゃんが町に行く件について、少し声を落とし、相談する。

 内容はイメルダちゃんと共に、赤鷲の団のアナさんとお菓子を食べる件だ。

 あと、以前に話したので改めてではあるけど、農家の人に話をする件についても確認しておく。

 ヴェロニカお母さんは話を聞き終えると、少し、考え込み始めた。

 そして、訊ねてくる。

「そのアナさん、確か騎士爵家の方だったわよね?」

 食事時に一度出ただけの話をよく覚えているなぁ~

と感心しつつ、少し訂正する。

「確か、何代か前がそうだっただけって言ってたよ。

 自分は平民だって」

「でも、魔術を使えるのよね?」

「確か、おじさんに教えて貰ったって言ってた」

と答えると、ヴェロニカお母さんは頷く。

「魔術は高い教養と特殊な訓練をしないと使えないの。

 普通に考えると、魔術の出来るアナさんのおじさまだけではなく、アナさんのご実家も、その下地を作るだけの教養を子供達に身につけさせていたという事になるわ。

 ……サリーちゃんも確か、魔術が使えるのよね?」

「うん、エルフのテュテュお姉さんに教えて貰った」

「ああ、テュテュさんに」

 でも、半野生なわたしには、そんな大層な教養など無いんだけど……。

 あ、そういえば……。

「テュテュお姉さんがいうには、魔法が使えれば、魔術を使うのも簡単って言ってた」

「そうなの?」

「うん。

 と言っても、説明を聞いてもわたし、よく分からなかったけど」

 正直、必要だと思ったから習ったんだけど、魔術って色々理屈っぽくて難しいんだよね。

 その点、白いモクモクを始めとする魔法は、感覚で使えるから楽だ。

「今度お会いしたら、その辺りのお話も聞きたいわね……。

 いえ、それはともかく、サリーちゃん、出来ればアナさんにイメルダを会わせたくないわ。

 もちろん、信用できる方だってのは分かるわ。

 ただ、魔術が使えると言う事は貴族や準貴族に近いというのは確か――悪気が無くても、何かの拍子に存在が明るみに出る可能性は避けたいの。

 そういった点では、農家の方とは違うわ。

 彼らの声が届く可能性はほぼ無いもの」

 最後の辺りで、ヴェロニカお母さんの表情が何故か陰った。

 ただ、それも一瞬の事で、ヴェロニカお母さんはニッコリ微笑んだ。

「むろん、農家の方相手でも、注意が必要だけど、サリーちゃんが”お姉様”としてイメルダを守ってくれるんでしょう?」

「……無論、そのつもりだけど、そういう言い方されると、負担に思っちゃうんだけど?」

 わたしが口を尖らせると、ヴェロニカお母さんは「ふふふ」と笑った。

「大丈夫よ。

 イメルダにも言い聞かせてあるし。

 あの子が作っている物を食べるの、凄く楽しみだわぁ~

 ……そういえば、サリーちゃん、サリーちゃんのお母様にちゃんと食べ物を送って差し上げている?」

「ママに?

 時々送っているよ」

 この前は、ロック鳥さんのお肉で作った焼き鳥串を沢山転送した。

 送ってから、小さいコル兄ちゃんとの共闘がバレるかなぁ~なんて一瞬思ったけど、多分大丈夫だろう。


 ママって、偉大ではあるけど、ちょっと抜けている所があるから、「わたしも倒した!」とか言っておけば、誤魔化せると思う。


 むしろ、褒めてくれるかな?

 ふふふ、それは楽しみだ!

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