ママにお酒かぁ~
そんな事を考えつつ、テンションを上げていると、ヴェロニカお母さんがニコニコしながら言う。
「それに合わせて、蜂蜜酒を送って差し上げたら?」
「……それ、ヴェロニカお母さんが飲みたいだけだよね!
あと、わたし、蜂蜜酒、作れないからね!」
「お裾分けを期待していないと言えば嘘になるけど、でもサリーちゃんのお母様、甘い物は好まず、お肉を好んでいるんでしょう?
だったら、お酒が好きなんじゃないかと思ったのよ。
ほら、大人のお肉好きには、酒好きが多いって言うじゃない?」
「え?
そうなの?
……わたしを騙そうとしてない?」
最後の方、疑わしげに目を細めるわたしに対して、ヴェロニカお母さんはニコニコしながら首を横に振る。「本当の事よ!
嘘だと思うなら、町で聞いてみたらどうかしら?」
そう、自信満々に言われてしまうと、信じてしまいそうになる。
いや、でも、前世で読んだWeb小説でも、お肉を食べながらお酒を美味しそうに飲んでいる描写があった気がする……。
あれ?
でも、テュテュお姉さんが前に、ママは酔っぱらいが嫌いって言っていたような……。
あれ?
でも、それは酔っぱらいが嫌いってだけで、お酒自体は嫌いじゃない――むしろ、好きだって可能性もあるかな?
「ワインでも、一樽、送ってみようかな?」
わたしが呟くと、ヴェロニカお母さんが「蜂蜜酒もね」とそっと囁く。
「だから作れないって!」
わたしが言っているのに、ヴェロニカお母さん「楽しみだわぁ~」などと言いつつ、ニコニコしている。
いや、作らないからね!
朝、起きた!
いつものように、ベッドから抜け出ると着替える。
妹ちゃん達を起こさないように、そっと部屋から出るとケルちゃんがお座りした状態で待ち構えていた。
「おはよう!」と挨拶をしつつライちゃんからハグおよび撫でて上げる。
柔らか温かぁ~い!
ケルちゃんを外に出して上げる。
空は曇りかぁ~
しばらくしたら、雨が降るかなぁ。
う~ん、今日、町に行くのは止めておこうかな?
なんて考えていると、物作り妖精のおじいちゃん達がちょこちょこ走ってきた。
そして、何やら険しい表情で身振り手振りをする。
え?
町には絶対行け?
鰐革を貰ってこい?
えぇ~
明日でも良くない?
駄目?
行ける時に行かないと、何があるか分からない?
まあ、そうかもしれないけどさぁ~
はいはい!
行けば良いんでしょう!
家の中に戻って、洗面所で顔を洗う。
頭の上に下りてくるスライムのルルリンを左手でキャッチし、肩に乗せる。
どうせ、町に行きたいって事でしょう?
……後回しにしようと思ったけど、そうだなぁ。
物作り妖精のおじいちゃんの
「今日、一緒に町に行く?」
と訊ねると、ルルリン、ビクっ! と震えた。
そして、嬉しそうにビヨンビヨン伸び縮みをする。
はいはい、良かったね。
髪を三つ編みにしていると、妖精メイドのサクラちゃんが飛んできた。
そして、興奮しきりのルルリンを見て、不思議そうにする。
なので、「町に連れて行って上げるの」と教えて上げたら、合点がいったように頷いた。
そこで、ふと気になり訊ねてみた。
「サクラちゃん達も人間の町に行ってみたい?」
すると、ピンク髪の妖精ちゃんは少し考え込む。
そして、身振り手振りで言う。
興味はある?
だけど、やっぱり怖い?
まあ、そうだよね。
あ、近衛騎士妖精ちゃん達みたいに透明になれる?
無理?
まあ、透明化なんて凄い能力だもんね。
え?
安全に行けるのなら、連れて行って欲しい?
うん、考えておくよ。
そんなやり取りをしつつ、飼育小屋に向かう。
騒がしい
そして、赤鶏さんから卵を頂く。
続けて、外に出せというようにメェーメェー! 騒々しい山羊さんから乳を頂く。
はいはい、ちょっと待ってて!
扉を開けて上げると、山羊さん夫婦は嬉しそうに外に駆けていった。
そろそろ、もう一組、買いに行こうかな?
次は山羊さんじゃなく牛さんが良いかな?
いや、牛だと流石に大きいだろうから、飼育が大変かな?
でも、同じく山羊さん達を連れてくると、揉めそうなんだよねぇ。
う~ん、悩ましい。
前回行った牧場のおじさんに相談してみよう。
卵と乳をシルク婦人さんに渡し、食料庫に向かう。
頼まれていたのを籠に入れ、スモモをルルリンに上げつつ
イメルダちゃんがテーブルを拭いている所だった。
ちょうど良いと声をかけた。
「おはよう。
次、購入する乳用の家畜、今日、町で相談しに行こうと思うんだけど、何か希望はある?」
「おはよう」と言いつつイメルダちゃんは、思案げにする。
「そうねぇ~
やはり、今居る山羊と一緒に居ても問題ないのが良いわね。
前に行った牧場に行くんでしょう?
そこで仲が良かった
「ああ、なるほど」
確かに、それなら話が早いか。
すると、イメルダちゃんは少し、目を険しくする。
「行くのは良いけど、まずは話を聞くだけにしてね。
買うのは、わたくしと町に行く時にしましょう」
高かったり、変なの買わせないためだろう。
正直、わたしもちゃんと出来る自信が無かったので「あ、はい」と答えるしかなかった。
朝ご飯を食べて、洗濯物等を終える。
そして、町に向かう準備をする。
といっても、いつも通りの格好にスライムのルルリン用、背負い籠だけだが。
あとは、赤鷲の団のアナさんに約束していた蜂蜜が入った小瓶を持って行くくらいか。
「ルルリン、ここに入ってみて」
籠の蓋を開けると、肩に乗っているスライムのルルリンに言う。
ルルリンは了解したというように揺れると、籠に向かって飛ぶ。
白いポヨポヨボディは、籠の中にすぽっと入った。
「確か、スライムが入ったら眠くなるだけって言っていたけど……。
どうかな?
苦しかったり、体に不調があったら言ってね」
と言いつつ、籠の蓋を閉める。
「どう?
大丈夫?」
一旦、蓋を開けて訊ねると、”大丈夫!”と言う様にルルリンはぽよんと震えた。
問題ないかな?
「辛くなったら、ちゃんと知らせてね」
と言いつつ、再度、蓋を閉める。
まあ、ルルリンなら問題ないかな?
背負い籠を背負うと、フェンリル帽子をかぶる。
近衛騎士妖精の潮ちゃんが飛んできたので、胸にしまう。
そして、ゴロゴロルームに居るヴェロニカお母さんに「じゃあ行ってくるね!」と声を掛けた。
玄関から出て、車庫から荷車を出していると、物作り妖精のおじいちゃん達が”鰐革、ちゃんと貰って来いよ!”というように身振り手振りしてきたので、「分かってるから!」と答え、ケルちゃんが付いてきそうにすり寄ってきたのを「イメルダちゃんを守って上げて!」と宥め、ため池の様子を見ていたイメルダちゃんに「行ってきます!」と手を振り出発する。
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