蜂蜜騒動その2!?
「ねえねえ、どこで売っているの?」
と訊ねると、ライアンさんは不思議そうな顔をする。
「サリーには不要だろう?」
「妹ちゃんを町に連れてくる時に、有れば良いなぁ~って」
「ああなるほど」
と赤鷲の皆が納得する。
アナさんにニコニコしながら、「妹ちゃんも交えてお菓子屋さんに行かない?」と言われたけど「聞いてみるけど、妹ちゃん、人見知りだからなぁ~」と答えておく。
アナさんは信用できるけど、一応、ヴェロニカお母さんに相談した方が良いと思うしね。
あ、そうだ!
「ねえねえ、アナさん。
日焼け止めに良いもの、無いかな?」
「日焼け止め?」
と何故かアナさんは目を丸くする。
「日差しが強くなると、女性冒険者の間では問題になるけど……。
サリーちゃんには、これも不要でしょう?」
え?
まあ、わたし、日焼けをしない体質ではあるけど……。
あれ?
その話をしたかな?
なんて少し混乱していると、アナさんは苦笑する。
「だって、サリーちゃんは白の魔力持ちじゃない。
自分で回復できるでしょう?」
「あ、なるほど!
そりゃ、そうか!」
回復魔法を使えば治療できるんだ。
その発想はなかった。
「そもそも、サリーちゃん。
いつもどうしてるの?」
と訊ねられたので「わたし、日に焼けない体質なの」と答えたら「羨ましすぎる!」と血涙を流さんばかりに叫ばれた。
落ち着いて!
「で、でも、妹ちゃんは普通に日焼けするから」
と言うと、少し落ち着きを取り戻したアナさんが咳払いをしつつ教えてくれる。
「わたしの場合、冒険者をしているから、ある程度は諦めているわ。
せいぜい、家に戻ったら、日焼けした場所を濡れた布で覆い、冷やすぐらいね。
サリーちゃんの妹ちゃんは別に冒険者じゃないんだから、日中は極力太陽の下に出ないとか、帽子、傘で日陰を作るのが良いんじゃないかしら。
あと、かなり値段が高いんだけど……。
蜂蜜を塗ると、日焼け箇所が緩和されるわ。
蜂蜜自体、本当にすっごく高いんだけど」
「ああ、そういえば、そんな話も有ったね」
Web小説でもそんな事が書いてあった気がする。
抗菌作用? とか、炎症を抑えてくれる作用? だっけ?
記憶が曖昧だけど、そんなようなものがあったはずだ。
都合が良い事に蜂蜜なら使い道に悩むぐらいある。
「じゃあ、試してみようかな?」
そんな風に呟くと、アナさんだけでなく、ライアンさん、マークさんも驚いた顔をする。
ライアンさんが「いや、蜂蜜なんて、そんなに簡単には――」と言う言葉をアナさんが手で制する。
そして、辺りを見渡すと、何やら喘ぐような小声で訊ねてくる。
「さ、サリーちゃん……。
もしかして……て、手に入る伝手が……あるの?」
「ん?
あ――」
そして、気づく。
アナさんの目が――昨日のヴェロニカお母さんのものと同じ事に……。
わたしは、スーッと目を逸らし、手を振る。
「無い無い、そんな物無い」
「あるのね……」
「無いってば!」
否定してるにも関わらず、アナさんに抱きつかれ、「少しで良いから! 少しで良いから分けてぇぇぇ!」と懇願されるのだった。
解体所から虫除け用の薬草を売っている薬草屋さんに赤鷲の皆に連れて行ってもらう。
購入後、皆と別れて冒険者組合に行く。
アナさんには結局、蜂蜜を少し、分けて上げる約束をしてしまった。
まあ、よく考えてみると、ヴェロニカお母さんみたいにお酒にするとかではないので、紹介して貰ったお礼にって事でだ。
文字通り飛び上がって喜んでいるアナさんを、赤鷲の男性陣が呆れて見ていたのはなかなか、印象的ではあった。
冒険者組合の建物に入ると、受付にいる受付嬢のハルベラさんがにこやかに手を振ってくれた。
わたしが早足で近づき「こんにちは」と声を掛けると「ええ、こんにちは」と言いつつ、足下から何かを持ち上げた。
四角い藁っぽいもので出来た籠だった。
「スライムのルルリンちゃん? だっけ、その籠が出来てるわよ」
「おぉ~!」
蓋が付けられていて、わたしの要望通り背負い紐が付けられている。
思ったより可愛くて素敵だ。
蓋の所に灰色が混ざった半透明の石が取り付けられていた。
「これが、魔道具なの?」
と訊ねると、ハルベラさんは「そうよ」と肯定しつつ続ける。
「基本的に、この中に入れて、蓋をして持ち運んで欲しいの。
逃げられる心配が無い室内などであれば、外に出しても良いけど、当然、何かあった時は責任が生じるわ」
「うん、分かった。
因みに、この中に入ったスライムはどんな感じになるの?」
「首輪と同じで、魔獣が興奮した時に爆発的に増える魔力を弱める効果があるの。
スライムの場合は、ほとんどが休眠してしまうらしいわよ」
「へぇ~」
ルルリン、凄く興奮しやすい
「害とかは無いんだよね?」と念のために訊ねると、「大丈夫、多くの魔獣に使ってきたけど、これの為に体調を崩した等の話は聞かないわ」とハルベラさんは笑顔で肯定した。
じゃあ、大丈夫かな?
それに、ルルリンは賢いから、変な感じがしたら教えてくれるでしょう。
わたしは大銀貨を渡し、その籠を購入する。
受け取った籠を、背負っているとハルベラさんが言う。
「その中に入れたからと言って、従魔登録が完了した訳じゃないから。
まずは、その状態で必ずこちらに連れてきてね。
そこで手続きをする事になるわ」
「うん」
明日辺りにでも、ルルリンを連れてこようかな?
なんて思っていると、ハルベラさんが続ける。
「ワンちゃん達の分も届いていて、今、加工して貰っている所だから、近いうちに渡す事が出来るわ。
町に来たら、出来るだけここに顔を見せてね」
「うん、分かった!」
ケルちゃんの分も出来るのかぁ~
だったら、一緒の方が良いのかな?
イメルダちゃんと町に行く件もあるし……。
う~ん、保留という事で!
あ、そうそう。
「ねえねえ、ハルベラさん。
うちの集落でも野菜とか育てたいと思うんだけど、経験者がいないの。
なので、農家の人とかに話が聞きたいんだけど、誰か紹介して貰えないかな?」
わたしの問いに、ハルベラさんは目を丸くする。
「え?
野菜を育てていないって、どんな集落なの?」
「うちは狩りが主だから」
と答えると、少々、釈然としない感じながらも「そうなのね……」と頷いてくれる。
「何人かは紹介できると思うけど、突然行っても無理よ?
日にちを決めていかないと」
まあ、そうだよね。
「いつなら大丈夫か、聞いて貰える?」
とお願いするとハルベラさんは「分かったわ」と微笑んでくれた。
出来れば、魔獣の出現が落ち着いている今ぐらいが良いんだけど……。
春先は農家の人たちも忙しいかな?
などと考えていると、奥から「おう、サリー!」と言いつつ、組合長のアーロンさんが出てきた。
「こんにちは」と挨拶をすると、ムキムキマッチョなおじいちゃん組合長は「ああ!」と言いつつ、少し言いずらそうに訊ねてくる。
「それで――行ってきたのか?」
北東の話だろう。
わたしは「うん、行ってきたよ」と答えた。
組合長のアーロンさんは頷くと、「ちょっと話を聞かせてくれ」と組合長室を親指で指した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます