妖精ちゃんの町に行こう!3
因みに、使用している食器類は先ほどの店で購入した物だ。
シャーロットちゃんだけでなく、わたしやイメルダちゃんもそれぞれ好きな物を購入した。
大人っぽい物を選んだイメルダちゃんに、「可愛いのにしたら?」と言ったら、「わたくしはこれでいいの!」と何故か強く言われてしまった。
だけど、わたしが白狼君らしき一団が描かれている、可愛らしい物を選んでいると、なんだか少し、羨ましそうに見てきた。
気にせず、選べば良いのに!
「しかし、この町、実は凄く小さいんだよね。
こうやって見ると、とてもそうには見えないけど」
わたしの言葉に、イメルダちゃんも「そうよね」と同意してくれる。
シャーロットちゃんが嬉しそうに「玩具の町に迷い込んだお話みたい!」と言う。
「どんな話なの?」
と訊ねると、シャーロットちゃんは嬉しそうに教えてくれた。
大好きなお人形を捨てられた女の子が、捨てられた玩具が集まるという玩具の町に行くというお話――か。
前世でも、そういう話が有った気がする。
それを異世界でも聞くとか、ちょっと面白い。
まあ、思いつきそうな話ではあるか。
玩具か……。
ふと、前世の頃を思い出す。
玩具なんてろくに買って貰えなかったなぁ~
同級生が持っているのが凄く羨ましかった記憶がある。
特に、欲しかったのが……。
あ、そうか!
”それ”、ここなら簡単に手には入るか!
あとで、サクラちゃんと物作り妖精のおじいちゃんに相談してみよう!
そんな事を考えながら、町を眺めていると、神殿っぽい建物が目に入った。
ああ、そういえば……。
この前、癒やした――姉姫ちゃん(仮)はどうなったんだろう?
「ねえねえ、姫ちゃん。
この前の子、あれからどうなったの?」
わたしの視線の先から姉姫ちゃんの事と気づいたのか、身振り手振り話してくれる。
怪我は大分治った?
だけど、意識は戻ってない?
ゆっくり休ませている、のね?
なんか、手伝おうか?
わたしがそういうと、”今のところは大丈夫。ありがとう!”という様にニッコリ微笑みながら身振り手振りをする。
なら良いけどね。
――
白いモクモクを持ち、少しずつ伸ばしながら――落下する。
そして、両足で地上に着地!
軽い(?)バンジーみたいな感じになってしまったけど、これぐらいの高さなら五歳ぐらいの時から飛び降りているし、白いモクモクが無くても問題ない!
地面に足が”少し”めり込んじゃったけど、問題ない!
だけど、続いて近衛騎士妖精君達に籠で運んで貰ったイメルダちゃんはそうは思えなかったようで、籠の中から「もっと、安全な下り方をしなさい!」と怒られてしまった。
だから、「問題ないよ? 何だったら、今度、一緒に下りる?」と言ったら、もう、顔面蒼白な顔で思いっきり首を横に振られてしまった。
ごめん、冗談だから!
因みにケルちゃんは、わたし達より前に”これぐらいの高さ、平気!”と言うように「がうがう!」吠えた後、止めるまもなく飛び降りていた。
なので、わたしの手を借りながら籠から出たイメルダちゃんに
「ケルちゃんも危ないでしょう!
仮にケルちゃんが平気でも、下に人がいたら巻き込む事だって有るのよ!」
とのごもっともなお言葉で怒られていた。
三首揃って項垂れるケルちゃんの、そのもふもふ背中を撫でながら「今後は気をつけようね」と慰めていると、ニコニコのシャーロットちゃんが近寄ってくる。
「サリーお姉さま、シャーロット楽しかった!
また、連れて行ってね!」
「うん、また行こうね」
と言いつつ、チラリと妖精姫ちゃんを見ると、可愛らしい姫ちゃんはニコニコしながら”歓迎する!”と身振り手振りをしてくれた。
ありがとう!
そんなやり取りをしていると、結界に何かが近づく気配を感じる。
視線を向けると、蟻さんだった。
何やら、先頭の蟻さんの、その背後に居る数匹の蟻さんは木箱を前足で抱えている。
え?
なんだろう?
わたしが「こんにちは」と手を振り近づくと、先頭の蟻さんが前足で木箱を指しながらカチカチ顎を鳴らしている。
今度は何をもってきてくれたの?
受け取って中を見てみると、中には土が詰まっていた。
あ、いや、粘土か。
そういえば、物作り妖精のおじいちゃんが頼んだって言ってたなぁ。
そう考えると、木箱もおじいちゃん達が渡しておいたのかもしれない。
そんな事を考えていると、物作り妖精のおじいちゃんがこちらに駆けてきた。
そして、”さっさと渡せ!”という様に身振り手振りをしてくる。
はいはい、分かりました。
おじいちゃん達に蟻さんから受け取った箱を渡していると、イメルダちゃんが近衛騎士妖精の白雪ちゃんと共に近づいてくる。
因みに、シャーロットちゃんとケルちゃんは妖精姫ちゃん達に促され、家に向かっているのが見えた。
「サリーさん、それなんなの?」
「おじいちゃんが頼んでいた粘土だった。
で、蟻さん、これの対価は林檎で良い?」
訊ねると、コクコク頷くので、改めて外で育てた林檎の木から、実をもいで行く。
え?
もっと?
贅沢だなぁ~
幾らか渡してあげると、次にと前足をこちらに伸ばしてきた。
その上には葉っぱを折りたたんだ物がある。
ん?
何?
開ければ良いの?
中には、黒くて小さい粒――恐らく種だろう物が数粒、入っていた!
おぉ~
種ガチャだね!
前回、わたしがいなかった時に持ってきてたって奴かな?
イメルダちゃんにも見せてあげると「今度は何かしら!」と姉的妹ちゃんも嬉しそうだ。
そうだよね、ガチャってやっぱりわくわくするよね!
この大きさに、この形状だと、恐らく木では無い。
そのことを話すと、イメルダちゃんは「あちらにしましょう!」と畑の近くを指さす。
妖精ちゃん達は――興味を示さない。
恐らく、果物では無いだろう。
残念ながら、見た目からしてレモンでは無いだろうが――野菜関係ならありがたい!
イメルダちゃんが指示する場所に種を埋め、右手から出した白いモクモクを被せる。
「育てぇ~!」
わたしの言葉と共に、種は発芽していく。
尖った苗茎がニョキニョキ伸びて――あれ? ネギ? かな?
ん?
地面に覗いているのは……。
あ!
これ!
「タマネギだ!」
わたしは膝をつくと、地面から球を掘り出す。
黄色っぽい表皮のそれは、前世で見たまんまのタマネギだった。
「これがそうなのね」
とイメルダちゃんもまじまじと見ている。
「これは嬉しい!
SSRに限りなく近い、SRだよ!」
「えす?
何それ?」
とイメルダちゃんは困惑しているが、気にしない!
タマネギが手に入ったのなら、シャーロットちゃんが喜ぶだろう、”あれ”が作れるのでは無かろうか?
「蟻さん、素晴らしいよ!
ありがとう!」
林檎をバンバン育てて、蟻さんに持たせてあげる。
蟻さん達はそれを、嬉しそうに(推定)受け取っている。
そんな様子を満足して見ていると、イメルダちゃんが声をかけてきた。
「サリーさん、レモンの種を探してきて貰うんじゃ無かったの?」
「あ、そうだ!」
蟻さんにはちょっと待って貰い、急いで家に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます