妖精ちゃんの町に行こう!2
「うわぁ~
色んな物が売ってるね」
わたしが感嘆の声を上げると、イメルダちゃんが辺りを見渡しながら「本当に」と同意する。
わたし達は大通りを中心に向かって歩いている。
因みに、わたしの隣には妖精姫ちゃんと妖精メイドのサクラちゃん、イメルダちゃんの隣には黒バラちゃん、ケルちゃんに乗っているシャーロットちゃんの後ろにはウメちゃんがサポートする形で乗っている。
初め、ケルちゃんにスカートのまま乗ろうとしたウメちゃんに、イメルダちゃんが待ったをかけていた。
だけど、ウメちゃんが笑いながら身振り手振りで言うに、スカートの中には、わたし同様、短パンをはいているとの事だった。
メイドさんのスカートの中にそれは、正直、微妙に感じたけど……。
冷静に考えてみると、いつも飛んでいるのに、そんな無防備な事をしないと納得が出来た。
イメルダちゃんは最後まで複雑そうな顔をしてたけどね。
西洋ファンタジー系テーマパークの様な可愛らしい外観の大通りには、沢山の商店が並んでいる。
前に来た時は姉姫ちゃん(仮)の治療がメインだったからよく見ていなかったけど、思ったより品数が豊富だ。
食品関係は案の定というか、甘味が並んでいる。
クッキー、ビスケット、ジャム、ドライフルーツなどなどだ。
加工品は当然、わたしかシルク婦人さん、もしくは町のお菓子屋さんなどで買った物だ。
お、早速イチゴのドライフルーツも並んでいるな。
一粒、金貨一枚!
高っ!
え?
初めて入荷した物だから?
しかも、生産に苦労したし?
……いや、苦労したの、わたしなんだけど。
”王妃様の焼き菓子”に添えられていたイチゴから種を取り出すの、実は結構苦戦した。
砂糖漬けにしているからか、上手く芽が出なかったのだ。
最終的には何とか育ったけど、わたしの分のケーキ、そのイチゴの大半をぐちゃぐちゃにしてしまった。
まあ、そのお陰で今ではイチゴジャムを毎朝楽しめるのだから、良しとするけどね。
「サリーお姉さま、この棚、可愛い!」
「ん?
本当だ、可愛いね」
シャーロットちゃんの声に視線を向けると、家具屋さんがあり、凄く愛らしい形の棚が並んでいた。
妖精ちゃんだからか、ファンシーな物が多い。
スライムのルルリンがいたら凄く喜びそうではある。
……連れて行けとうるさそうだから、内緒の方が良いね。
うん、そうしよう。
その隣には、服屋さんまである。
……これ、セーラー服だよね。
明らかに、わたしのセーラー服を真似てるよね!
しかも、店員の女の子、セーラー服にエプロン姿でニコニコしているし。
可愛いから、別に良いけどね。
「シャーロット、これ着たい!」
と言い出した妹ちゃんに、ウメちゃんが”今度、作って貰いましょう”と身振り手振りで言っている。
シャーロットちゃんのセーラー服姿、可愛いだろうなぁ。
視線をイメルダちゃんに向ける。
それに気づいた姉的妹ちゃんに、なにやら顔を赤らめながら「わたくしはそんな格好しないから!」と先回りで釘を刺されてしまった。
ふむ、この反応……。
作ってしまえば、
イメルダちゃんの後ろにいる妖精メイドの黒バラちゃんと見つめ合い、ニヤリと笑い合う。
「ちょ!
絶対着ないから!」
とか言っているイメルダちゃん、はいはい、分かってるから!
別の所には小物や食器を売っている店もあった。
陶器や金属製のフォークやナイフ等もある。
ん?
陶器?
「おじいちゃん達、もう陶器を作り終えたんだ!」
一昨日、手に入った粘土で店で売れるほど数をそろえるとか――物作り妖精のおじいちゃん達半端ない!
そう思ったけど、妖精姫ちゃんが笑顔で違う違うと手を振る。
え?
元々、粘土等の素材は大木にそろっていた?
鉄鉱石関係も?
でも、貯蓄量的に
なるほど、そういうことね。
そんなやり取りをしていると、「サリーお姉さま!」とシャーロットちゃんが声をかけてくる。
視線を向けると、ケルちゃんから降りた妹ちゃんが、食器のセットをキラキラした目で見ている。
「これ、可愛いよ!
シャーロット、これが欲しい!」
「本当だ、可愛いね」
その食器セットはデフォルメされたケルちゃんが所々に描かれているもので、前世ネズミなキャラの夢の国にあるレストラン――そこで使われていそうなおしゃれで可愛らしいものだった。
イメルダちゃんなどは「可愛らしいけど、格式が――」など言っているが、シャーロットちゃんが使っていたら、さぞや可愛い絵になる事だろう。
ただ……。
「これ、下に持って行ったら小さくなっちゃうから使えないよ?」
正確にはわたし達の体が大きくなる、だ。
そのことに気づいたシャーロットちゃんは、「可愛いのに……」と不満そうに再度、視線を食器セットに向けた。
すると、イメルダちゃんが言う。
「ねえ、服とか身につけていたら、大きさが同じように変化するのよね?
だったら、変える時にこれらを手に持って出れば良いんじゃない?」
「あ、なるほど」
流石は我が
だけど、妖精姫ちゃんは困ったように首を横に振った。
出来なくは無い?
だけど、今の大木だと、若すぎて負担が大きすぎる?
まあ、人間のサイズを変えるだけでも、とんでもなく力を消費しそうだから、対象を極力減らしたいというのも理解できるね。
「ここで使うようとして買っておいたら?
下で使う分は、粘土も釉薬も手に入ったから、それを物作り妖精のおじいちゃんに見せて、作って貰えば良いし」
著作権的なあれこれで文句を言われるかな?
と思って、店員の妖精ちゃんに視線を向けるも、ニッコリ微笑みながら、問題ないと頷いてくれた。
ありがとう!
「サリーお姉さま、美味しい!」
「うん、美味しいね!」
妖精の町の中央にある噴水広場、そこにテーブルや椅子を並べて、わたし達はパウンドケーキを食べている。
もう、一切れでも凄まじい大きさなので、わたしと二人の妹ちゃん、そして、妖精姫ちゃんとで食べても、半分にもならない。
結構な量を食べたから、もうそろそろ止めておこうかな?
うん、そうしよう。
ヴェロニカお母さんがいれば大喜びで食べ続けただろうなぁ~
そのことを話すと、イメルダちゃんが苦笑しながら「太ってしまうから、流石にある程度で抑えるんじゃ無いかしら?」と言ってた。
まあ、なんやかんや言って、貴婦人なお母さんだから、控えるか。
……。
「ごめん、ヴェロニカお母さんが自粛している様子が想像できない」
わたしの返答に、苦い顔のイメルダちゃんは「大丈夫よ――多分」と言っていたので、姉的妹ちゃんも自信が無いのだと思う。
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