突然起きた猿君との戦い3
わたしは右手を乱戦になっている方に向ける。
手のひらから薄く伸びた白いモクモクが、地面を流れるように進んでいく。
う~ん、特に猿君達だけど――動き回ったり飛び回ったりしてるから、足を縛るのはちょっと無理かな?
「皆、猿君から極力離れて!」
わたしの声に、皆が時に猿君を押しだし、時にバックステップをしたりして離れる。
「えい!」
魔力を流すと、薄かった色が濃くなり、全員の腰辺りをがっちり固定した。
敵も味方も全員だ。
「良し!
上手くいった!」
と思わずガッツポーズをするわたしに、「え!? ちょ!? わたし達も捕らえてどうするの!?」というヘルミさんの声が響き渡った。
あんな乱戦の中、白大猿君のみ捕らえるのは無理! って事を説明しつつ、一人づつ解放していく。
味方だけ一度に解放するなんて器用な事は、わたしには出来ないからだ。
それと同時に、怪我人の治療も行う。
重傷って人は居なかったけど、それなりに負傷してる人は多かった。
もちろん、白大猿君達は仕留められていく。
うん、もう何も言うまい。
「
この魔法が理由だったのね」
「……」
ヘルミさんは真剣な表情で言うが、わたしはなんとも言えない気持ちでその姿を見ていた。
ヘルミさん、立ったまま両手を腰の辺りで固定されているんだけど……。
なんか、その立ち姿が――凄くエロかった!
いや、別に服が
胸当ては外れてしまったけど、その中に当然、服を着ているし、それが脱げているわけでは無い。
でも、覆っていた胸当てから解放された事により、アナさんほどで無いにしても存在感のある”それ”が服を押し出すかごとく強調されていた。
そのくせ、腰やお尻はシュッと引き締まっているし。
あと、なんか固定された時のタイミングの問題か、ちょっとつま先立ちになっているから、捕らわれ縛り上げられた女冒険者とか女騎士みたいな感じで、「くっ殺せ!」とか言い出しそうな体勢になっていた。
そう思ったのはわたしだけじゃなく、近くにいる自衛団の若いお兄さん達が「これは……凄い」とか唾を飲み込まんばかりにガン見している。
やっぱり、この人は主人公系男子と行動すべきだと思う。
ただ、こうも思う。
そんな風に考えるのは、男性はともかく、女の子としてどうなのかと。
普通の女の子や女性は、これを見て、そんな発想にはいたらないのではないかと。
う~む。
と悩んでいると、先ほど解放したばかりのクッカさんがヘルミさんの前に立つ。
そして、真剣な表情で言う。
「ヘルミ、なんかエロい!」
「分かる!」
「そうそう、すっごくエロい!」
思わず同意してしまったわたしに、リリヤさんも大きく頷く。
すると、アナさんが「わたしも思った」と少し恥ずかしそうに手を上げ近づいてくる。
「だよね!」と皆で盛り上がる!
そして、腰の部分とか、ちょっとつま先立ちになってる部分とか、中途半端に残っている胸当ての残骸とか、少し突き上がったお尻とか「いいから、先にわたしを解放して!」と喚くヘルミさんをそのままに、白熱するのだった。
――
「なんで、皆、そんなに仲良くなっているのよ!」
とプリプリ怒っているヘルミさんをリリヤさんやクッカさんが宥めている横で、白いモクモクを駆使して、解体所の職員さん達の指示の元、白大猿君達を運ぶ。
何匹かには逃げられてしまったけど、全部で二百五十三匹討伐、自衛団の人たちに助けて貰ったとはいえ、結構な数になった。
わたし達五人で割っても、評価はかなりのもので、リリヤさんが「わたし達の段位も上がるかもしれない」と嬉しそうに話していた。
因みに、小白鳥の三人は初段、赤鷲の団のアナさんは三段とのことだ。
不機嫌だったヘルミさんも、それは嬉しいみたいで、ニンマリしながら、
「これでパットの奴と段位で並ぶ」
と嬉しそうにしていた。
ん?
何かが駆けてくる気配を感じる。
視線を向けると、男の冒険者の皆が戻ってきたようで、慌てた感じでこちらに向かってきていた。
ヘルミさんも気づいたようで「ハハッ! ようやく帰ってきたな」と面白そうに笑いながら言う。
先頭にいるのは、巨漢冒険者のパットさんだった。
巨漢なパットさんは険しい表情のまま走ってくると、ヘルミさんの両腕をがしっと掴んだ。
突然の行動に「ひゃ!?」と目を白黒させるヘルミさんの体を観察しながら、巨漢冒険者のパットさんは真剣な表情で訊ねる。
「大丈夫か!
ヘルミ!」
「だだだ、大丈夫だ!」
ヘルミさんはドモリながらも何とか答える。
因みに、壊れた胸当ては一応、応急処置が施されて、再度装備している。
ただ、応急処置は応急処置、明らかに千切れた跡は見える。
わたし、アナさん、クッカさん、リリヤさんの四人は、少し離れた所にスーッと集合する。
そんなわたし達の前で、巨漢冒険者のパットさんは、ヘルミさんの両腕に手を置いたまま、じっとのぞき込むように、再度訊ねる。
「ヘルミ、本当に大丈夫なのか?」
「ば!
大丈夫だ!
これは、戦いの途中で外れただけだ!」
ヘルミさんはパットさんの手を払い、顔を背ける。
その褐色の肌がほんのり赤く染まっていた。
「べ、別にお前なんかに心配なんて!
そ、その……。
ほ、本当に、何も無かったからな!」
振り向いたヘルミさんは、上目使い気味にパットさんを見上げる。
が、パットさん、ヘルミさんをもう見ていない!
周りを、そして、わたし達を見て、「良かった。皆無事で」とか言っている!
ヘルミさんがガクガク震え、顔を真っ赤にしながら「大体お前なんかに心配されるほど落ちぶれてねぇ!」と叫ぶのと、わたし達が「ああぁ~」としゃがみ込むのはほぼ同時だった。
”ねえ、あれ毎回やってるの?”とわたしは皆に目で訊ねる。
クッカさんが顔をしかめつつ”そうなのよぉ。もう、さっさとくっ付けって言いたいわよね”と言うように眉を動かし、アナさんが”気持ちは分かるけど、無理をするとこじれるわよ”と言うように細かく瞬きをして、リリヤさんが”そうかなぁ~わたし的には、もう物理的にくっつけた方が上手くいくと思うけどぉ”と言うようにウィンクをした。
後ろからライアンさんらしき人が、「お前達、大丈夫だったか!? おい? お~い!」と言っていたり、ヘルミさんが「お前なんか、もういい! 皆行くよ! ? いや、え? なんでそんな所でしゃがんでいるの!?」とか叫んでいたけど、気にせず、どうすれば、このもやもやカップルがくっつくかについて、話し合うのであった。
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