異03系統 王城前〜王都北門〜サラスティア湖〜ヴェルダートの丘

 やっぱり冒険者って変な人だ。私は確信した。


『次は冒険者ギルド前。あなたもギルドで働きませんか? 冒険者ギルドでは受付嬢を随時募集しています。興味のある方はお気軽にご応募下さい』


 ギルド前の停留所に到着すると、今からクエストに向かう冒険者がぞろぞろと乗り込んでくる。


 その待機列の中で一番最後に並んでいたのは短剣使いの女の子と巨大な盾を持った小柄な女の子の二人組。盾持ち少女は自分の身体よりも一回りも二回りも大きい盾に身を隠しながら、友達に先導されゆっくりと前に進む。

 そして、そのままの状態でバスに乗り込もうとする。


 いやいや、それじゃ乗れないって! 立てこもり現場に突入する機動隊員か! 


「お客様、入口より大きい物を車内に持ち込むのはご遠慮ください」


 私が優しく告げると、短剣使いの子が後ろを振り返って困った笑みを浮かべた。


「全く、いくら痛いのが嫌だからってバスの中で防御固めてどうするの? モンスターは乗ってこないよ」

「あはは、そっかぁ。モンスターさんはお金払えないもんね〜」


 そういう問題ではない。


「じゃあ盾は一旦ポシェットにしまって」


 盾持ち少女は肩から掛けた四次元ポシェットに盾を無理やり押し込み、続けて中から財布を取り出した。


「じゃあお願いしま〜す」


 220ゴールドを硬貨投入口へ。

 ちゃんと支払いが済んだのを確認し、開いたままだった前の扉を閉める。


「扉を閉めます。発車します、お掴まりください」


『このバスは異03系統、王都北門経由ヴェルダートの丘行きです。次はハルスキア通り。お降りの方はブザーでお知らせ下さい』


 バスを発進させると、後方の二人掛けの席に座った短剣使いと盾持ちの女子二人の会話が耳に届く。


「ポプラ。今日こそは防御力じゃなくて、攻撃力とか敏捷力に経験値ポイントを割り振るんだよ? 分かった?」

「えぇ、何で〜? ねぇマリア、防御特化じゃどうしてダメなの?」

「だってそれじゃあモンスター倒せないでしょ」

「そうかもだけどさぁ。やっぱり痛いのは嫌なの!」


 そんなに痛いのが嫌なら、冒険者辞めればいいのに。


 こういう異世界における冒険者って、そもそもどういう立ち位置?

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