異04系統 ピナリ港〜ルミナーダ工業団地〜王都南門〜ウィリアニス中央市場
仕事を終えた人たちが帰路につき始める夕暮れ時。
『次はルミナーダ工業団地。お降りの方はブザーでお知らせ下さい』
工場の多いエリアのバス停に到着すると、大勢のお客さんが列を成していた。
バスを停め、前扉を開ける。
すると、もじゃもじゃの髭で顔がほとんど隠れてしまっている小柄なおじいさんの集団が乗り込んできた。この辺で働いている職人さん達だろうか?
手には大人運賃である220ゴールドを握りしめている。
私は運賃箱の硬貨投入口を手で塞いで、優しく笑顔で声を掛ける。
「六十五歳以上の方の運賃は割引となりまして、110ゴールドになります」
直後、おじいさん集団が声を揃えて叫んだ。
「「「ワシらはまだ三十代じゃっ!」」」
いや分からんって! どっからどう見てもおじいさんじゃん!
「失礼いたしました。では220ゴールドをこちらに」
「全くもう。年寄り扱いしよって……」
ため息を吐きながらコインを入れ、奥の座席へと向かっていくおじいさん改めお兄さん集団。
扉を閉めつつ全員が着席したのを確認し、バスを発進させる。
『本日も埼京交通バスをご利用頂き、誠にありがとうございます。次はハッスラ製鉄所前。……次、停まります。バスが完全に停車するまで、席を立たないで下さい』
その日の夜、営業所に戻った私はこの話を所長にした。そしたら所長は。
「はこびちゃん知らないの? そのお客さんは多分ドワーフだよ。彼らは基本老けてみえるからね。あっはは」
と、なぜか笑われた。馬鹿にされた。
普通の人は異世界の種族とか知らないんですっ!
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