異02系統 ヨギマ五等級ダンジョン〜ララ川土手〜王都北門〜王城前

『次はララ川土手。ガマガメ病院、トー交易路方面はお乗り換えです』


 この路線は周辺にモンスターの狩り場が多いらしく、利用客の大半は冒険者。みんな武器や防具を手にしている。


「これだけ素材集めりゃ今週の生活には困らねぇな」

「あのゴーレム強かったけど、倒せてよかったよね〜」


 車内ではRPGっぽい会話が飛び交っていて、「やっぱり異世界なんだよね、ここ」と運転しながら不思議な気分になる。


 川沿いの道を進むとバス停が見えてきた。バス停は二つ並んでいて、手前は別系統のものなので、奥の方で停車させる。


 前扉を開けると、大剣を背負った若い男性が乗り込もうと足を踏み出して。

 ガンッと金属がぶつかる音。


「あれ?」


 何度も車内に入ろうと試みるも、何かに阻まれ続ける。


「おかしいな……」


 困った様子で頭を掻く冒険者の少年に、私は言った。


「お客様、背中の剣が引っ掛かってますよ?」


 その瞬間、彼は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にした。


「あっ。す、すまない……」


 ウインドウを操作して大剣をストレージに収納すると、邪魔なものがなくなったおかげで今度はスムーズに乗車できた。


 それくらい自分で気付きなさいよ!


「発車します。お掴まりください」


『次はティルファーナ草原。王国騎士団からのお知らせです。最近、狩り場でのスリやひったくりが増えています。冒険者の皆様はくれぐれもご注意下さい。また、そのような行為を見かけた際には騎士団まで報告をお願い致します』


 冒険者って、もしかして変な人が多いのかな?

 橋を渡るべく交差点を右折しながら、私はそんなことを思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る