第20話 竜騎妃メイクウ 〜嫉妬〜
夜が明ける。
昨日までの青く爽快な空は
もうのぞむ事は出来ない。
太陽の燃える様な光を
色付ける赤い粒子。
単純なようで複雑な色彩の変動。
人間のメンタリックは、
赤か青かで変わるのだ。
だからこそ人は赤い夕焼けを見ると、
その日の終わりを感じて、
そして人生の一ページが終わりを告げる
という悲しみにくれるのだろう。
世界の色が変わる時、
人は希望よりも
絶望を感じるのかもしれない。
。。。。
「ヨハン!!ヨハンはいるか?」
占拠した町役場に降り着くとすぐにヨハンを呼びつけた。
「お疲れ様ですメイクウ様。」
「うん。すっかり日が昇り大地が赤く染まったら、町で占拠の宣言をする。その手筈はできてる?」
「もちろんです。それからこの二人に竜を1体用意してくれ。」
「はー。いったいどこの誰なんですか?」
「男の方はこの国の第二皇子だよ。私が《曰月』で手懐けた。女の方はまー言ってみれば同志のような者だ。この二人には他の事をしてもらう。その作戦を今から二人に伝える。」
「それでは奥の部屋に案内させます。
私は何をすれば良いですか?」
「うんそうね。あなたは私の指示した事を綿密に熟考して実行してくれればそれでいいわ。まずは町の中心に他の兵達を束ねて隊列をなすの。それでこの町の町人に統率力と力を見せつけるのよ。歯向かおうとなんて、考える者が出ないようね!!」
と静かに力強く言った。
「かしこまりました。では町長の部屋の隣に会議室があります。会議にはそちらを使ってください。おいっ!」
「はい。」
近くにいた竜人の兵士がヨハンに近づく。
「部屋まで案内しなさい。」
「かしこまりました。ではメイクウ様こちらでございます。」
「うん。アルベルト、チャウ、行くよ。」
3人で歩き出すのを目で追いながら見送るヨハン……。
「彼なかなかの切れ物のようね。」
「ヨハンのこと?そうね……あなたもそう思う?私が竜騎妃として隊を任された時からずっと私の下で副官として働いてくれている。知的で冷静な竜人よ。」
「そう……。でもその知的で冷静な騎士団の副官も、あなたが色男を連れてきたから、
少し動揺があるようね。」
「動揺?どういうこと?」
「うん私ってほら、人間として生活してきたわけじゃないから、感情?っていうものが、今一どんなものかわからないじゃない?
けれども、彼のあの静かに通る声の中に若干の揺れ動きがみられた。なんて言うのかな?ほら、大切な物に虫がつく様なさま……。
普段大事にしてる物が汚される、
誰にも触れられたくない物が
誰かのせいで染まる……えっとたしかあれは、『嫉妬』…だったかな?」
「チャウ、何をいってるの?いったいヨハンが何に対して嫉妬するというのだい?」
「ふふふ。メイクウ様は意外と鈍感なのね。まーいいです。それより私とアルベルトにしてもらう事っていったい何でしょうか?」
「うん。その前に……少しメンテナンスをしないとね。」
そして杖を構えてアルベルトにむける。
「
『白歩畢」は眠りの魔法。すでに『曰月』の魔力に侵されているアルベルトは簡単に眠りにつく。
「魔法に魔法を重ねるなんてかなり危険な
「眠らせたわけじゃないのよ。少し都合のいいように書き換えるだけよ。」
「書き換える?なんの話し?」
「うん。今AZUL城は大きな樹の結界に取り囲まれているの。残念ながら私の『冥火』の力を持ってしても破る事は難しいわ……だからこそ、AZULの血をひくアルベルトを敵地に送り込み、解除の条件を聞き出させようというわけよ。」
「だったら別に眠らせなくても今のままアルベルトに聞いてこさせたらいいんじゃないの?わざわざ眠らせて『書き換え?』なんてする必要あるわけ?」
「チャウ良く考えてみなよ……鎧の赤く染まったアルベルトが突然帰ってきて、
『おい結界はどう破るんだ?』なんて聞いたらさ、『ならば結界の決壊のする方法はね……』とはならないだろう?」
チャウはまだピンときてないようだ。
「ふふっ……だから今からアルベルトの記憶の一部を書き換えるのよ。」
「どういう風に書き換えるの?」
「いかにも今まで敵兵と戦っていて、なんとか逃げ出してきたかのようにね。それから敵陣に戻す。けれどもそれだけではだめ。だって彼の性格を考えれば逃げ出すなんてあれえなさそうでしょう?」
「うん。確かにアルベルトは逃げ出さなそう。でもアルベルトが勝利したっという事にしたら……。」
「ダメよ!!私が負けた事になるじゃない。そんなの絶対にだめ!!」
少し興奮気味に言う。それから声のトーンをかえて優しく話しはじめる。
「そこからがチャウあなたの見せ所よ。」
それでニッコリと笑った。
「あなたはアルベルトに助けられたの。それでアルベルトはあなたを守りながら戦うのは厳しいと感じたのね……。それで致命傷は与えたものの、その隙をついて逃げ出す事にした。」
「負けるのは嫌だけど、致命傷はいいの?」
「だって致命傷あたえられたからね本当に。」
「え?メイクウ様はアルベルトと本当に戦ったの?しかも致命傷って?」
「うん戦ったわ。でも私の完全たる勝利よ。彼は『
「じゃー致命傷って何?」
急に恥ずかしそうに乙女の顔になる。
「だってだって……彼男前じゃない♡もう心に大きな致命傷をね……。」
「ははは……なんだそりゃ。なるほど副官さんがヤキモチやくわけだ……。」
それから真剣な顔つきに戻って話をもどす。
「とにかく信用て大事よ。少しでも疑いがかかると聞きたい情報は聞き出せない。チャウあなたは私のシナリオ通りに話をすすめて。それでうまいこと結界を解く方法を探ってちょうだい。」
「わかったわ。」
「とはいえ、なかなかの魔力を喰う極限魔法なのよね。昨日の晩も寝てないし。これが終わったら私はしばらく眠るわ。ということであとよろしくねチャウ。じゃーアルベルトはじめるわよ♡」
そうして眠るアルベルトの周りに、
金の杖で魔法陣を描く。
それから杖を両手で握り直して念じる。
「
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