第4話 告げられる真実
翌朝、いや起きたのは昼前だった。
陽は既に真上に近いところにまで昇っていた。
「これは寝すぎたなぁ。早く用意しなくちゃ」
そう考えながら寝ていた布団から出ているとミラちゃんが入ってきた。
「あ、起きましたね。これ、洗っときました」
そう言って私達が使っていたマントのようなコートが出てきた。
ここに来るまでの寒さや日差しを避けるために使われ続けていて、汚れていて端の方はボロボロになりかけていた。
それを私がこんな時間まで寝ている間に洗濯して、多少の修理をしていてくれたようだ。
「わーもう何から何までほんとにありがと。一人の時はこんなことまで手が回ってなかったから助かったよ」
「私もリアさんの料理に感謝してるんですよ。こんな環境でこんな温かくて美味しい料理が食べれているんですから。私一人じゃこんな出来ませんし、出来てもしてませんよ」
「ふふふ、お互いうまく助け合えてるね」
寝起きのボーっとした頭を起こしながら少しの談笑をして、軽い朝食を食べて、私達は後少しとなった目的地へとまた足を進め始めた。
大陸を渡り、たどり着いたアメリカ。
そこにはここに来るまでとは全く別な光景が広がっていた。
人が暮らしていた街にはロボットたちが徘徊して、それぞれの役割を行っていた。
人が暮らしてた建物は取り壊され、工場となり、ロボットを作ったりエネルギーを作ったりしていた。
そこにはかつてアメリカの一大都市として栄えたニューヨークの華やかな姿は見る影を失っていた。
人の姿はなく、ただ中央へと送られるエネルギーを生産するための工業地帯となっていた。
「なに…これ…」
そんなアメリカの姿を見て、ミラちゃんは絶句していた。
私が記憶しているものとも違う、まるで身に余る技術によって自ら崩壊した世界のように感じた。
「とにかくもっと中央へ行ってみよう。まだ何かあるかもしれないから」
私がそう促すと彼女も顔を上げて
「そうですね。まだ全ての希望がないわけではありません」
そう言い、また歩き始めた。
私達はここからニューヨークを目指した。
その道中も景色は山間部に入るまで変わることはなかった。
延々と続く工業地帯。
煙を空へと上げ続け、中でエネルギーを生産し続ける機械達。その周りの環境が壊れたりしないように整備を行うロボット達。その間を縫うように歩いている野生の動物達。
そこに人間の姿は一切なかった。
そんな光景から連想されるモノが私の中に一つだけあった。
幼い頃にテレビで見た技術の究極系。
しかしあの頃から十年以上が経っているがあれ以来その話は一度しか聞いた覚えがない。
その内容も『実験失敗により、数百人が命を失った』というものだった。
果たしてそんなものが残っているとは思えない。きっと別のものなのだろう。と、結論付けようとしていたがずっと頭の中には疑問として残り続けていた。
そしてその疑問が確信へと変わったのは目的地、ニューヨークに辿り着いた時だった。
ニューヨーク、街に入って最初に見えたのは純白の巨大な建物だった。
周りは崩壊した建物ばかりだ。その真ん中に純白の建物は砂漠にあるオアシスのようにも見えた。
「想像しているよりも大分違いますね。もっと華やかで文化の中心のような国だったって思っていたんですか」
そう言う彼女の目からは涙が零れ落ちていた。
私はそんなミラちゃんの頭を撫でながら純白の建物に目を向けていた。
幼い頃にテレビで見た研究。そしてその施設はあの建物と同じような真っ白い建物だったと記憶している。
これは偶然ではないだろう。
「ミラちゃん。まだ全ての文化が失われたわけじゃないのかもしれないよ」
彼女はえ?と不思議そうに私を見つめてきた。
「だってここにはもう人間が残っていない。あるのはあんなにも無機質な建物だけじゃないですか。あれが人類が蘇る希望だとでも言うのですか」
「うん。あんな建物しかないよ。でもきっとあの建物が人類の最後の希望なんだと思う」
「どうして、どうしてあなたはここでもまだ希望を見出そうと出来るの。もう目の前には何もないのに」
「だってまだ全部は見てないじゃん。試してないじゃん。ここに来るまでにたくさんの現実を見て、感じて、もう希望に満ちて生きてる人はいなかった。けど希望をなくすにはまだ足りないよ」
『生きている限り誰でも英雄になれるんだから』
その言葉を聞いた途端彼女は嗚咽を溢しながら泣き始めた。
その急なことに私がオロオロとしていると彼女は言った。
「そっか。それがお母さんの明るさだったんだね。あんな時代でも多くの人がいたのはこれが理由だったんだ」
「???。えっとどういうこと。私があなたのお母さん?」
「最後に少しだけお話しましょう」
そう言って彼女は未来の私のこと、世界のことを話した。
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