第3話 お礼の料理

 彼女からいつも元気ばかりもらっていた。

 そんな彼女に私はお返しがしたくてここに来るまでに集めていた食材を使って一つ料理を作ってあげることにした。

 


 その日は今までと違い、そんなに移動していないタイミングでリアさんが今日はこのあたりの建物で泊まろうと提案してきた。

 インフラが未だに残っているこの辺りなら夜も快適に過ごすことが出来るがそれは郊外に出る前の場所でもいいし、なんでだろうと思いながらもとりあえず適当な建物の中に入っていった。

 建物に入ってからリアさんはすぐにどこかへ消えてしまった。

 その間私は一人で暇を持て余していた。

「急にどうしたんだろう。あっちの部屋には見に来ないでねって言われたし何してようかな」

 ここまでの移動で疲れていた私は倒れて、天井を見上げていた。

 持っていたカバンの中から一枚の写真を取り出した。

 その写真は紙媒体で何でも機械で記録する今の時代には珍しいものだった。

 写真の中には三人の人が写っていた。

 一人は幼い頃の私だ。そして他の二人は私の両親だ。

 母親の部分が劣化で見えなくなってしまっており、見えるのは白髪の混じった艶のある黒い髪だけだ。

 父親はまだ劣化で霞んではいるもののまだ認識できるレベルでは見えていた。

「また、会えるかな」

 今は抱きしめてもらえないあの温もりを思い出しながら私はポツリと溢していた。

 

 気がつくと目の前には2つのカレーが置かれていた。

 いつの間にか眠っていたようだ。

「随分疲れが溜まってるみたいだったね。結構寝てたよ」

 リアさん言われて窓の外を見てみると辺りは真っ暗になっていた。

「あはは、疲れって自分でも気づかないものですね」

 そう言いながら私は席についた。

 目の前には昔からあるカレーライスがあった。

「カレー。でもどうしてこれを?」

「えっとね、私、ここに来るまでミラちゃんにもらってばっかりだったからそのお返しがしたくて。で、私に出来ることっていったらこんな料理くらいしかなかったから」

「そうなんですね。ありがとうございまいます」

「「いただきます」」

 そう言って二人でカレーを食べ始めた。

 美味しい。ただそんな言葉しか出てこなかった。

 この食事が久しぶりの温かい食事だからじゃない。ちゃんとした食材を使っているからでもない。昔から慣れ親しんだ味。幼い頃から食べていた、そんなものを感じる優しい甘い味だった。

 瞳からこぼれ落ちる涙は我慢していた痛みのように溢れてきた。

「だ、大丈夫?」

 リアさんから心配の言葉をかけられてしまった。

「うん。大丈夫。ちょっとだけ懐かしい気持ちがでてきただけだから」

 そう言いなんとか涙を拭った。そして残っているカレーを全力で頬張った。


「「ごちそうさまでした」」

 その日はそれから二人ともすぐに眠った。

 なぜだかその日は安心して深い眠りにつけていた。

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