第53話 思春期を実感する
「あっちぃ~~……」
蒸し暑すぎて目が覚める。
朝っぱらから寝てもいられない暑さで、ベッドから起き上がった俺は冷房を起動。すぐに涼し気な風が吹いてきて、しばらくクーラーの前に立って冷風を浴びた。
今日もゲームやって唯菜と白亜の配信を観るか。
いつもと変わらなく過ごそうと決め、とりあえず太陽の光を浴びようと窓のカーテンを開ける。
俺の家のすぐ隣には幼馴染の家があり、差し込む日光に目を細めながら何気なく隣家の窓に視線を寄せた。
そして視界に飛び込んできたのは――パジャマのズボンを脱ぎ捨てる詩織の姿だった。
「うおおっ!?」
驚愕と歓喜が入り混じったような変な声が出た。
窓の向こう側に見える詩織は着替えの最中で、まだ眠たいのか半眼だ。うとうとした顔でシャツのボタンを外し、脱ぎ捨てる。
完全に下着姿になった幼馴染は床にある服を取るために前かがみになる。
白色の下着に包まれた小ぶりなお尻が突き出されるようにこちらを向いている。
俺も前かがみになってカーテンを閉めた。
朝から刺激が強いわ。アダルトな動画で幾度となく女性の裸体を見てきたが、知り合いの女子の下着姿ってだけで何故こうにもエロく思えるのか。
純白の薄布が食い込んだお尻を脳裏に再現してしまい、ただでさえ朝で活発な愚息がますますズボンを押し上げる。
「ダメだ……思春期ムーブするな俺!」
幼馴染の下着姿を見て反応してしまうなんて、いかにもな思春期男子じゃないか。こんな陳腐なリアクションをしているところを妹に見られたら笑われてしまう。
深呼吸をして気持ちと股間を落ち着かせた俺は、着替えて部屋を出る。
顔を洗いながら詩織の半裸姿を記憶から洗い流す。
詩織と接する時に思い浮かべてしまったら気まずいからな。
気を取り直してリビングに行くと、先に起きていた愛華の鼻歌が聴こえてきた。陽気な鼻歌はキッチンのほうから流れており、ジュージューと何かが焼ける音も混ざっているので朝食を作ってくれているようだ。
「愛華、今日の朝飯はなんだ?」
キッチンに足を向けると、コンロの前でフライパンを揺らす愛華の姿が。
「んー、卵焼きと味噌汁。物足りないなら私が買い込んだ激辛袋ラーメンでも追加して」
「朝に激辛ラーメンはちょっと……というか、なんて格好してるんだ」
愛華は愛用のエプロンに身を包んでいた……裸で。
全裸の上にエプロン一枚という、いわゆる裸エプロン姿である。愛華はこちらに背を向けているため、なめらかな背中と生尻が丸見えだ。
「だって起きた瞬間あっちぃーって思っちゃったんだもん。こんな日に服なんて着てらんないよ」
「だからって料理してる時に肌を晒すなよ。油が跳ねたら痛いぞ」
「だいじょーぶ、慣れてるし」
お尻をふりふりと振って答える愛華は、俺の視線など全く気にかけずに料理を続ける。
どうしてだろう。こいつの尻をどれだけ直視しても全く感慨が湧かない。詩織の尻は下着に包まれていてもエロいと思ったのに。やっぱり血が繋がってる妹の尻だからか。
「よっし、朝ごはんできた。そんなところに突っ立ってないでお皿並べて」
「はいよ」
妹に命令され、料理の乗った皿を食卓に並べる。
そして朝食を取った。ちなみに愛華は食べ終わるまで裸のままだった。
ようやく服を着た愛華と一緒にリビングのソファでダラダラとゲームをしていたら、チャイムが鳴った。
「詩織かな」
「だろうね。琉衣が出て」
「お前が行けよ。いま離れるとモンスターにやられる」
「それは私も同じだって!」
俺たちがやってるのは狩りゲーだ。マルチプレイの戦闘中に離席するなんてゲーマーとしての矜持が――なんて思っているうちに愛華の蹴りが飛んできた。
「ったく、暴力的なヤツめ……」
蹴られた腰を撫でつつ玄関のドアを開ける。
「朝なのに騒がしいわね、あなたたち兄妹は」
来宅者は、やっぱり詩織だった。白色の清楚なワンピースドレスを着た詩織は柔らかく微笑んでいる。
先ほどの下着姿が思い浮かんできて、ぶんぶんと首を振った。
「どうしたの? 水に濡れた犬みたいに首振って」
「なんでもない。今日もゲームを指南されに来たのか?」
「そうよ。今日こそは死にゲーにチャレンジしてみせるんだから」
ぐっとグーにした両手を胸の前に上げる詩織は気合が入っていた。詩織は死にゲーが苦手で、一度だけ某ダークファンタジーの死にゲーをやってチュートリアルで投げ出したらしい。
今日は死にゲーリベンジというわけで、サンダルを脱いだ詩織は家の中に上がり込んだ。
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