第52話 二人の歌ってみた

 皆で夏合宿の詳細な日程を話し合う。

 そうして、夏休みの中間辺りに行くことに決まった。


「これで大体は決まったね。当日まで持っていくものの準備と体調管理をすること! 後は何か質問あるかな?」


 唯菜は俺たちを見回し、特に質問のある者がいないのを確認したら、うんうんと頷く。


「じゃあ、そろそろお昼になってきたし解散する?」

「そうだな。腹減ったし」


 とりあえず白亜の部屋にぞろぞろといるのもあれなので、ひとまず解散する。


 玄関を出ようとする最中、俺の隣で靴を履いていた唯菜が白亜に呼び止められた。


「待って、唯菜。歌ってみたのこと言わなきゃ」

「あっ、そうだ忘れてた!」


 歌ってみたというと、確か唯菜と白亜がデュエット曲を歌うと言っていたな。


「琉衣くんと詩織さんには知らせておきたくて。なんと私と白亜ちゃんが正式にデュエットすることが決まりました~!」

「おお、そうか!」

「なんか珍しく琉衣くんがアガってるんだけど!」

「そりゃ白亜の歌声が聴けるとなればアガるに決まってるだろ!」

「私は!? 白亜ちゃんのソロ曲じゃないんだからね!?」


 分かってるよ。ちょっとボケてみただけだ。

 だけど白亜の歌を聴けるのが楽しみなのは純然たる事実。

 どんな歌声なのか楽しみだ。あと、ついでに唯菜の歌唱力についても少しだけ興味がある。


 先日にまとめサイトでユイユイの歌の上手さが話題になっているような記事をチラッと見かけた。その時はあまり興味が湧かず記事をスルーしてしまったが、よくよく思えば歌が上手いVTuberが多い中で話題になるのだから相当なのではないか。


「歌うのは有名なボカロ曲。男女パートのあるデュエット曲で、私が男性パートで白亜ちゃんが女性パートを歌うよ」

「唯菜さんが男性パートなの? なんだか意外ね。あんまり低い声を出すイメージがないわ」

「ふっふっふっ~私は意外と低い声を出せるのだよ詩織さん。投稿する日には連絡するから、是非聴いてほしいな!」


 俺と詩織は歌ってみたが投稿されたら聴くことを約束した。

 白亜に見送られて家を出る。帰る途中で詩織とコンビニに寄り、昼飯を見繕う。


 ついでにアイスやジュースなんかも買って帰宅すると、玄関までどたばたと駆けてくる愛華の姿が。


「別荘! 海! 美少女たち! これぞラブコメの王道だよね!」

「テンション高いな」

「だって合宿楽しみだし! 琉衣だって期待してるんじゃない? この夏で周りの女子の誰かと関係が進展しちゃうかもって」

「別に。ラブコメ脳のお前と一緒にするなよ」

「シケてんなぁ~うちの兄は。まあ、いいや。琉衣が積極的にならないなら私が皆を寝取ってハーレム作るだけだし」

「兄の脳を破壊しようとするな!」


 レズの妹がはりきっている。

 俺、嫌だよ。知り合いの女子たちが全員、妹の彼女になるなんて。とても気まずいよ。

 

「とまあ、冗談はこのくらいにして。今日から合宿の準備しておかないとね」

「そうだな。あと、唯菜と白亜の歌ってみた投稿が確定したぞ」

「あ~言ってたもんね。二人でデュエットするって。そっちも楽しみだなぁ」


 うきうきな愛華に同意する。

 今年の夏は何かと楽しくなりそうだ。


「とりあえず家にあがっていいかしら? 暑くて汗が止まらないわ」


 置いてけぼりにされていた詩織が額の汗を拭って言う。

 すぐに幼馴染をクーラーの効いた部屋に移動させ、俺たちは一緒に昼食を取るのであった。

 

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