第50話 幼馴染と遊ぶ。Vの配信を観る。
夏休みに入って間もなく、詩織が遊びに来た。
俺の部屋で二人して携帯ゲーム機を握る。
以前に唯菜とプレイしたゲームを詩織もやっていたので、一緒に遊ぼうと思ったわけだ。
「詩織もこのゲームをやってたなんてな」
「乃々花さんに勧められたの。基本無料で気軽にできるっていうからプレイしてみたんだけど、見事にハマっちゃって」
そういえば唯菜におすすめしたのも朱宮だったな。
基本無料を誘い文句に新規を釣るなんて罪なやつだ。ハマったら課金したくなる魅力がこのゲームにはあるのにな。
「スタミナ消費しないと。一緒にダンジョン行ってくれる?」
「ああ、いいぞ」
俺たちはスタミナを消費することで報酬をもらえるダンジョンに挑戦する。広間に湧いた敵に俺のアタッカーキャラが突っ込んでいき、詩織はサポートキャラでバフや回復をしてくれる。
そうして敵の殲滅が終われば、広間の奥にある大樹のもとで報酬の装備を貰う。
この装備が厄介で、攻撃力や会心率などといったステータスがランダムで付与されているわけだが、当たりステータスだけ付いたものは中々手に入らない。
プレイヤーは当たりステータス付きの装備を求めて何度もダンジョンに潜るわけだが……果たして今回の成果は。
「お、会心率と攻撃力ある。結構良いの手に入れたわ」
「私のは……会心率と会心ダメージ、攻撃力とチャージ効率……ステータスが四つも付いてるけど、良いやつなの?」
「か、神すぎる!」
一回目でそんな神装備を引くやつがあるかよ!
廃人が何ヶ月も潜り続けてやっと一つ手に入れるような装備を数分で手に入れてしまった詩織。ビギナーズラックってヤバいな……。
その後もダンジョンに潜り続け、詩織は恐ろしいほどの幸運で当たり装備を引き続けた。
スタミナ消費も済んだところで、ゲームを終了する。
ふと思い立った俺はスマホを取ってSNSを確認した。
「そろそろ白亜の配信が始まるな」
「夏休みになったらたくさん配信するって張り切っていたものね」
白亜と出会った日から今まで彼女の配信は何度か視聴していた。配信だと喋り方が少しだけほわほわしているのが可愛らしく、萌え豚リスナーのキモいコメントにも優しく対応してくれるのが地上に降臨した女神って感じで最高だ。
「白亜さんの配信ばかり観ているようだけど、唯菜さんの配信はどうなの? あの大会の後から一度くらいは観てあげたわよね?」
「あ、忘れてた」
「琉衣……」
呆れたような顔をしないでくれ。
俺だって一度は観ようと思ったさ。だけど白亜の配信時間と重なることが多く、二人の配信を秤にかけたら白亜のほうに傾くのは世界の真理なのでしょうがないじゃないか。
「今すぐ観てあげよ? じゃないと唯菜さん、いい加減に泣くわよ?」
「まあ、そうだな。たまには観てやるのもいいか」
ちょうどユイユイは配信しているようだ。どうせなら大画面で観たいのでPCのほうに移動する。
配信に入ったらケモミミ少女が横にゆらゆら揺れながらご満悦そうに話していた。
『あ~皆に称賛されるの気持ちいいな~ゲーム上手くなって良かったぁ』
さっきまでゲームをやっていたらしく、リスナーに上手いねと褒められて嬉しがっているようだ。
ニコニコと笑顔を浮かべてピクピクとケモミミを動かしながら話し続けるユイユイは可愛かった。ケモミミ美少女だしなー。現実のわがまま女を考慮しなければ普通に推しだったなー。
「何かコメントしてあげたら?」
隣にいる詩織が、とんとんと肩を叩いてくる。
コメントするにしてもな……何を打てばいいか。
ルイルイ:あの程度の腕で調子に乗るな
『うっわ~アンチだ~! ……えへへ』
コメントを読み上げて嬉しそうにニコニコするユイユイ。
やっぱり貶されて喜ぶドMなんだな。
「琉衣は結構性格が悪いと思うの」
「自覚はしてる」
詩織のジト目がキツくなってきたので、そろそろ白亜の配信を観て癒されよう。
ユイユイの配信を出て、始まったばかりのハクアの配信に入る。
『みんなーこんハクアー。待ちに待った配信のお時間』
「うおおおおお! こんハクアー!」
「いきなりテンション上がったわね!?」
俺の勢いに負けじとばかりにコメント欄で豚たちのコメが爆速で流れる。白髪ツインテ色白ゴスロリ美少女が笑顔で話を始め、俺は女神の神託を拝聴するような心持ちで耳朶に神経を集中させた。
『待望の夏休みに入った。今年の夏休みは個人的に熱い。何が熱いのかというと……気温』
そうなんだよ、今年の夏はクソ熱いんだ。
こんなに気温が高い日にも白亜はゴスロリ服を着て配信しているんだろうか。
『なので、いま服を脱いで配信してる……』
な、なんだって――!?
ハクアの衝撃発言にコメント欄が過去最高に湧き立つ。
推しが服を脱いで配信しているなんてことを知ったらイライラしてくるぞ。どこがとは言わんが。
「大胆ね、白亜さん……」
「さすがは箱内でもトップの人気を誇るVTuber。リスナーが喜ぶことを知っていらっしゃる」
「琉衣もすごく嬉しそうね?」
ニヤニヤしているのが幼馴染にバレて恥ずかしかった。
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