第41話 FPS大会開催!

 決戦の日がやってきた。

 体調は万全。私はPCの前に座り、深呼吸をする。

 やっぱり緊張してて、心臓がドクドクと高鳴っているのを感じる。


 何度か深呼吸をして、ヘッドホンを装着。

 画面の中のユイユイが笑顔を浮かべ、リスナーの皆に挨拶をする。


『皆、聴こえてるー? ついにFPS大会始まるぞー!』


 わっとコメントが流れる。皆も大会を楽しみにしていたみたいで、頑張ってと応援してくれていた。


『今日はなんと! 病欠のハナちゃんの代わりにスペシャルゲストが来てくれました! ボイチャ繋ぐよー!』


 ボイチャソフトを起動させれば、スノウちゃんと助っ人のハクアちゃんが挨拶する。


『お前ら聴こえてるかー!? スノウちゃんのお出ましだぜ、うぇーい!』

『……スノウ、相変わらず元気だね』


 底抜けに明るい声と静かな声にコメントが爆速で流れた。


 スノウちゃんうるせぇ、ハクアちゃんだああああ、スノウちゃん足引っ張るなよ、もっと声聴かせてハクアちゃん、などと大盛況。


『お前ら酷い! 私だってやれるもん! ユイユイちゃんとハクアちゃんを盾にしてハイエナやるもん!』

『スノウちゃん――ちゃんとやらないと許さないよ?』

『ふえぇ、ごめんなさい調子に乗りました!』


 スノウちゃんと私の漫才みたいな会話でコメントに草の嵐が。場が温まったところで、そろそろ大会の開催時間だ。


 まずは司会の子が大会のルールを説明する。


 ゲームモードはバトルロワイヤル。広いマップのどこかにチームがランダムで配置され、エリアに落ちている武器や弾薬を補給しながら戦う。


 自分たち以外のチームを全滅させて、最後に生き残ったチームが優勝。生存時間が長かった順に二位、三位のチームも決められる。


『……ユイユイ、大丈夫?』

『うん、ありがとう。大丈夫だよ』


 私が黙っているのを気にしてくれたハクアちゃんに感謝を伝える。突然の申し出だったのに、今日この場に駆けつけてくれて、本当にありがとう。


『もう始まるねー。ちなみにユイユイちゃんとハクアちゃんは、どのチームが厄介だと思う? 私は恋城兄妹が一番ヤバいと思ってるんだけど』

『言えてるね。理人くんはもちろんのこと、理奈ちゃんも結構ヤバいと思う』

『ん……あの二人は別格』


 恋城れんじょう理人りひとくんと恋城理奈ちゃん。年齢が離れた兄妹のVTuberで、理人くんは元プロゲーマー。理奈ちゃんはプロゲーマーのお兄ちゃんに英才教育されていて、天才ゲーマーと呼ばれている。


 この二人がいるチームを倒せなければ、優勝はできない。

 ……うん、やれるはず。私たちだって、チームワークは負けてないし。


『行こう、スノウちゃん、ハクアちゃん。優勝するのは私たちだよ!』

『よっしゃー! やってやるぜー!』

『二人のサポート、頑張る……』


 待機エリアに移行して、三十人のプレイヤーが集まる。

 理人くんと理奈ちゃんは、もう一人のチームの子と横並びになって動かない。強者の余裕って感じで、敵ながらかっこいい。


 でも、勝つのは私たち!

 

『始まるー! 3、2、1――GO!』


 スノウちゃんの合図と重なり、大会開催のゴングが鳴った。

 初期配置のエリアに転送される。すぐに現在位置を確認。全体マップの左下に私たちはいた。


『おお、ここかぁ。この位置だと、序盤で敵に遭遇することは少ないんだよね。もちろん油断はできないけど!』

『じゃあユイユイちゃん、さっそく私と前に出よ。ハクアちゃん、もし敵が来たらドタマに鉛玉を撃ち込んでやってね!』

『私はサポート役でしょ……?』


 会話しながら、私たちは近くにあった小屋の中に入って武器を探す。運良く使い慣れたアサルトライフルが落ちていたので良かったぁ。


『スノウちゃんとハクアちゃんも良い武器あった?』

『最強武器と名高いアサルトライフルと、あとグレネードめっちゃ拾った!』

『スナイパーライフル、げっと……あと、防弾チョッキ』

『いいね最高!』


 これはいける、いけるよ!

 初期装備でこれだけのものを集められたんだ。完全に私たちの流れが来てる!


『――ユイユイちゃん、聴こえた?』

『うん、ばっちり』


 私とスノウちゃんは小屋の一階の窓際に隠れ、外を見る。

 近くで複数の足音がするのを私の耳は聴き取った。私とスノウちゃんが前に出て索敵、ハクアちゃんは少し離れた場所でスナイパーライフルを構えている。


『絶対近くにいるよユイユイちゃん。こっちは足音立ててないはずだし、奇襲しかける?』

『うん、敵が気づいてないうちにやろう。ハクアちゃん、援護お願い』

『任された』


 私は合図して、スノウちゃんと一緒に小屋を飛び出す。

 小屋の前の草原に敵はいた。数は二人。こっちに気づいていない。


『やああああー!』

『うりゃりゃりゃー!』


 私とスノウちゃんの同時射撃。奇襲で敵の二人は動揺したのか、始動が遅れる。


 琉衣くんが教えてくれたタップ撃ちとリコイル制御を活かして、相手の頭を撃ち抜く。一人ダウン。もう一人は、スノウちゃんが倒してくれてる。


『あと一人――』


 三人一組の戦いだ。もう一人どこかにいる。

 どこ? 視点を回して周囲を探す。いない。どうして? 

 仲間がやられてるのに。


『ユイユイ、上!』


 スノウちゃんの声で私は敵のいる場所に気づく。

 小屋の二階。偶然にも私たちとすれ違うことなく小屋に入ってたんだ。


 二階の窓から、こっちを覗いてるのは……スナイパー。

 まずい!


『どーん』


 スナイパーに撃ち抜かれるのを覚悟したけど、私の耳に響いたのは一つの発砲音と、物静かな声だった。


『ちゃんとサポート、した……』


 キルログにハクアちゃんが敵のスナイパーをキルしたと表示される。


『ありがとう、ハクアちゃん!』

『すごい、上にいるって気づいてたん!?』

『敵の気配を察すのは、得意』


 ちょっと得意げなハクアちゃんが可愛いし、頼りになる。

 この調子で、どんどん行こう!


 エリアが封鎖される前に、私たちは速やかに今いる場所を離れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る