第4話 間話 風呂上がりの妹と駄弁る
夜の九時頃、リビングのソファに座ってぼんやりとしていた。
家に帰ってから今までゲームをやって脳が疲労したので、気分転換にリビングまでやってきたが、特にやることもなくソファの背もたれに身体を預けている。
「ふい〜いい湯だった〜」
裸足で床を踏み鳴らしてリビングに姿を現した愛華。風呂上がりで全裸の妹はバスタオルで頭をゴシゴシと拭きながら、気だるそうにしている俺を見る。
「なんかダウナーなオーラが漂ってるんだけど、どしたの?」
「ちょっと学校で面倒なことがあってな……」
「まさか……うう、ついにクラスのいじめっ子たちに目をつけられたんだね……いつかそうなると思ってたけど、ご愁傷様……」
「悲しんでるふりをしているところ悪いが、違うからな。あと兄がいじめられる未来を確定事項だと思うのもやめろ」
目に手を当てて涙を拭うふりをする愛華に突っ込む。こいつだって本気で俺がいじめられるとは思っていないだろう。高校二年生になった現在まで陰キャなりに上手く立ち回って一度もいじめられたことのない兄の器用さを知っているからな。
「まあ、冗談だけど。んで、何があったの?」
「クラスの美少女に絡まれた。ゲーム上手くなりたいから鍛えてくれってさ」
「ラッキーイベントじゃん。ギャルゲーだったら、ここから青春の日々が始まるやつ。何が不満なの?」
「相手が普通の美少女だったら良かったんだ。だけど蓋を開けてみれば、あいつは承認欲求モンスターだった」
全裸のまま俺の隣に座った愛華に美凪について説明する。小ぶりな胸の下に腕を組んだ妹は、ふむふむと頷きながら聞いていた。
「私も美凪さんのことは知ってる。二年生にめちゃくそ可愛い先輩がいるって男子たちが話してた。彼らが言うには後輩の男子にも優しい女神のような人なのだとか。でも実際は女神の顔をしたモンスターだったとはね」
「お前と似てるよな」
「は?」
「お前も猫かぶってるだろ」
「かぶってねーよ学校でも素だよ」
「そうだったか?」
「そうだよ。琉衣は妹の理解度が足りない」
妹はご立腹だったが、頭を撫でてやると猫みたいに擦り寄ってきた。ちょろい奴だ。
「明日から美凪さんのレッスンが始まるの?」
「そうだ。放課後、うちに来るらしい。俺の部屋でゲーミングPCを使ってレッスンする」
「密室に思春期の男女が二人っきり……何も起こらないはずがなく」
「絶対に何もないから安心していいぞ」
「ちぇ、つまんなーい。美凪さんのおっぱい揉むぐらいしろよー。そして揉み心地をレポートに書いて私に提出しろよー」
おっぱいを丸出しにしている奴がおっぱいの良さについて語り始めた。妹は同性愛者で、女性のおっぱいをこよなく愛していた。
美凪のおっぱいを揉むかどうかはともかく、明日の放課後は気疲れしそうだ。部屋に妹以外の女子が入るなんて久しぶりだし、エロ漫画を隠してゴミ箱のティッシュを処分しておかねば。
「ま、頑張りなよ。私もいるから、何かあったら呼んで。すぐ部屋に駆けつけるから」
「何もなくても勝手に部屋に入ってくるんだろうな」
「そうだけど。さすが琉衣、妹に対しての理解度が高い」
さっきと言ってることが真逆だ。
愛華は自分の部屋に戻るのか、ソファから立ち上がると、素っ裸のままリビングを出る。あいつは全裸じゃないと眠れないタイプだった。
俺もそろそろ寝よう。
明日のことは明日になって考える。それでなんとでもなるだろう。人生なんてもんは、なるがままにしかならないのだ。
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