第2話 こっからこっから

  眩しい光が目に入ってくる。朝か、。


 「おーい、起きろー。」


 母さん?じゃあさっきのは全部夢...。


 「あ、起きた。」


 目覚めるとそこには中学生らしい髪の長い綺麗な目をした女が立っていた。そして自分の居場所に驚く。俺は高校の中にいた。寝てた?

ここで?自分の中で疑問符の数が多くて収集がつかない。


 「あの、、俺、、。」


 「俺?」


彼女が驚いたように聞く。当たり前のように返す。


 「俺」


 「今俺って言ったよね?」


俺の周りを飛び回りながら嬉しさを全身で表現している。どうして喜んでいるのだろう。また疑問符が増えていく。


 「言いましたけどどうかしたんですか?」


 絶対に年上ではないことは分かるが念のため敬語で話す。万が一のためだ。


「ちゃんと羽化できてるね。いい子いい子。」


「あのどういう意味ですか?」


 「君はちゃんと人間から進化できたってことだよ。」


 「はあー?」


 とは言ってもギャグ漫画みたいなリアクションはとれないのでこの声はもちろん俺の心の中の声だ。


 「あの何言ってるん...ですか?」


 「教えてあげようか?長くなるけど」


 「手短かにお願いします。」


 ものすごい長かった。いったい何時間話しているのだと周りを見渡すとあることに気がついた。時計が止まっているのだ。どの時計も。9時37分を指して。


 結局彼女から分かったことは俺は人間でなくなってしまったらしい。進化形がどうちゃらこうちゃら長ったらしく話した。それに伴い自分の呼び方が変わったらしい。変化が小さい。


 時計について聞いてみると、ここは実体がある番のVRのような場所らしい。つまり、ここでは時間も人も何も無いのだ。なぜこの場所にいるのか聞くと、上手いぐらいにはぐらかされた。


 「ねえ、私一度君に会っているんだけど、覚えてる?」


 「えっと、会ったことない気がするんですけど、どうかしたんですか?」


 「やっぱ消されてるか...」


 彼女がぼそっと呟く。


 「なにが消されたんですか?」


 「いや、私の勘違いだったみたい!気にしないで!」


 あからさまな嘘を堂々とつけるのだけは評価したいと思う。でもこれ以上話かけるなというオーラを感じて、怖気づいてしまう。


 「まあそう言ってもねー。私も自分の状況あんまり分かってないんだよねー。」


 そう言った彼女ははにかんだ笑顔で笑う。楽観的なのは彼女の本心だろうか。


 「それと、君は私にそのまま敬語でいいからね。」


 「え、なんで?」


 「君言わせてくるねー。まあ君より人生経験長いってことだけ教えてあげる。」


 どう見ても俺より年下にしか見えない彼女が美しく、大人びて見えた。


「あの、俺もっと今の自分のこと知りたいです。」


そうだ。俺は今の自分の現状が分からなすぎる。もっと知りたい。適応したい。俺がちゃんと生きていることをあs…。え?誰?誰のことだ?


「プルルルル。」


 彼女の胸ポケットの携帯電話から無機質な機械の声が聞こえる。なにやら一方的な要件だけを伝え、電話は終了する。


 「新人くん。新たな仲間のお呼びだよ。初仕事だ。張り切って行ってきな。」


 「どこに?」


 「まあまあ安心しなって。あとこれ。」


 彼女は俺に携帯電話を手渡した。緊急時用だろうか。


「それ多分結構使うから大切に使ってねー。それじゃ。」


そう言うと、彼女は背を向け、歩こうとする。


「あの!まだ名前聞いてないんですけど。」


「ちゃんと帰ってきたら教えてあげるー。」


 パン。


 一瞬のうちにまわりの景色がガラリと変わる。高層ビル群に囲まれ、人と人とがひきめしあい交通量の多さに言葉を失う。


「ここ、どこ。」


 


 


 

 















 


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