第29話 ユーリヤ=スヴォーロフという少女
すざくは目を覚ます。いつの間にか寝てしまっていたらしい。自分のベッドの横によりかかり、制服のまま寝てしまったらしい。
最初に目に入るのは、直立する
「ユーリ」
「落ち着いて、大丈夫。安心して」
まるで動物でもたしなめるような、
何度も何度もそれを繰り返す。
すざくはなんとかしようと思うものの、手が出せない。
どのくらいそんな時間が過ぎただろうか。
大きな衝撃音。床にはそれまでユーリが握っていた小銃が転がっていた。
そしてユーリは倒れ込むように、
それを受け止める
すざくは目の前の出来事にただ驚くばかりであった――
「ユーリ、この子は」
再び寝てしまったユーリを両手で、抱きながら
「ロシアで出会った子さ」
すざくは思い出す。
「白軍側――つまり反革命側に属していた魔法少女のユーリは、革命側の赤軍と懸命に戦っていた。しかし、白軍が不利なのは明らか。力尽きて倒れていた彼女を匿ったのが僕さ」
「じゃあ......なんで......」
銀色の髪をなでながら、
「この子は感情がうまく表せなくてね。気づいてほしかったんだろうよ。『私はここにいる』って」
なんとも面倒なことだな、とすざくは心で思いつつも安心しきったユーリの寝顔を見るとなんとなく合点がいく気もした。
「ウラジオストックに居たはずなんだけどなぁ、どうやってここまで来たのか。十歳の子供が」
不思議そうに
十歳......?すざくの頭の中に、その数字が回転する。
「今何歳って?」
「十歳だよ。ユーリは。魔法少女はある年齢で成長が固定される。何年前に魔法少女になったかは分からないが、永遠に十二歳さ」
体つきから見ても、どう見ても大人の女性であるユーリ。
自分の体を見比べるすざく。今年十五歳になった自分と比べても――
首を横に振るすざく。
「でも、見た目は――」
「これは魔法少女云々とは関係なく成長が早いいんだろうね。外国人はみんなそうだからね」
ひとまわり大きなユーリを抱きかかえる
すざくは腑に落ちないものを感じつつも、ユーリの無邪気そうな寝顔になにか安心するものを感じていた――
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