プロローグ

新しい風!

「ねぇねぇうさぎ! すごかったよね~一年生の初めてのたっきゅーと!」


「うんうん、ねこ、わかったから少し落ち着いて……!」


 仕事が終わり、フラワーギフト学園へ向かう送迎車の中で、四人のなにやら賑やかな声が響いている。


「確かに、なんだか胸に来るものはあったわねー! なつかしいっていうか、一年前は私たちも、あの舞台に立ってたんだなーって」


「雪解けの中から顔出す新芽のような、力強くも爽やかな、季節の変わり目を感じる」


「しずくー! 季節の変わり目って、私たちがもう古株みたいじゃない! まだまだ私たちだってフレッシュなんだからー!」


「確かに、ナギちゃんはフレッシュ過ぎて……!」


「いまの一年生の子たちに混ざっても、わからないかも……」 


「むむー! そこの双子! 息を合わせて私をばかにしたなー!」


「ぜんぜんそんなことないよ! ナギちゃんがとても小さくてかわいいからって、ばかにしたりなんかしないよ! ね、うさぎ!」


「うんうん、小学生みたいで、頭なでなでしたいなぁなんて、思っても口にしないよね、ねこ?」


「それ、もう口にしてるし、実際に撫でてるしー!」


 ぷりぷりと怒る少女の頭を二人の少女がやさしくなでる。


「もう、みんな私に対するリスペクトが足りないんじゃないかな……私、スーパーアイドルなのに~」


「みんなナギちゃんのことはちゃんとリスペクトしてるよ!」


「うん。可愛がりたい気持ちが、リスペクトを上回っちゃってるだけだよ?」 


「ほんとかなぁ……うん、でもなでなで、気持ちいかも……」


 そう言って、少女は嬉しそうに頬を緩める。


「それにしても、私たちも負けてられないねー! うさぎ!」


「そうね、ねこ。先輩として、しっかりと役目を果たさないと……私たちが先輩たちにしてもらったように」


「新しい時代の波が、私たちの帆を進めてくれる。心地よい風、気持ちいい」


「もうしずく……あんたが言ってること、なんとなくわかるけど、わかりにくい! それに知的キャラで行きたいなら、語彙力が低いんじゃない?」


「……! ナギちゃん、ひどい……!」


 しくしくと落ち込む少女を、よしよしと二人の少女が撫でて励ます。


「簡単な話でしょ、私たちは、ありのままの先輩としての姿を後輩たちに見せればいいの!」


 少女の言葉に、全員が頷く。


「アイドルとしての活動! たっきゅーと!のリーグ戦!」


「プリンセスカップの予選もね、ねこ」


「多くの経験が一年生たちを惑わすであろう」


「そんなときは、私たちの背中を見せつけて、道しるべにしてあげようー!」


 そこに、ピロリンと、四人の携帯電話が同時に音を鳴らす。


「みんな、同時? 秋風学園長からだ……」


 四人は一緒に、送られてきたメールの文章に目を通す。


 そして、少女たち、雪凪ナギ、冬川しずく、白野うさぎ、白野ねこ、四人は顔を見合わせ、笑みをこぼす。


「なんだか、面白そうなことになってきたじゃないー!」

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