エピローグ

これからの未来を、仲間とともに!

 愛歌と約束したデートの日がやってくる。


 集合場所はフラワーギフト学園ではなく、街中にある小さな時計塔。ハナ以外にも、待ち合わせをしているのだろう人がたくさん立っている。


(うう。なんか緊張する……!)


 愛歌の提案で。集合場所はこの場所に決まった。愛歌曰く、フラワーギフト学園で待ち合わせしたら、せっかくのデートに味気ないとのことだった。そのせいか、ハナは少し緊張してしまった。


(そういえば、都会に出るのも久しぶりだなぁ)


 ハナの実家がある地域は、小さくはないものの、お世辞にも都会とは言えなかった。家族やメグムと遠出をして、都会に出たことはあるが、少しのお出かけ気分でこう遊びにこられるのは、フラワーギフト学園の、都会のすごさだと思った。


 すると、


「ハナ。お待たせしました」


 やってきたのは、いま流行の春コーデに身を包んだ愛歌だった。とても、おしゃれで、大人っぽく見える。


「愛歌! 私服、すごく可愛いね!」


 そして、ハナは、ふと自分の服装と比べてしまう。自分の私服は、フラワーギフト学園に持っていったものから、一生懸命選んだものだけれど、どこか小学生感が抜けていないものだった。


「ハナも、とっても可愛いですよ。良く似合っています」


 それでも、愛歌が褒めてくれて、ハナは嬉しくなる。


「えへへ。ありがとう……。お世辞でも、嬉しいよ!」


「いいえ、お世辞ではありませんよ。それは今日というハナとの初デートに誓います」


 そう言われ、ハナは改めて、今日がデートであること意識してしまう。


「それでは、行きましょうか? 今日は私がエスコートします」


 そう言って愛歌はハナの手を取る。ハナは、少しドキッとする。


「うん!ありがとう、楽しみ!」


 こうして、愛歌とハナのデートが始まった。


☆ ☆ ☆


 愛歌とのデートは、とても刺激的で、ハナはとても楽しんだ。ショッピングモールへ行き、最新のブランドものをチェックする。ファッションブランド店へと入り、二人で試着をして着せ替えっこもした。とても可愛いらしいカフェにも入り、ハナは大好きの甘いスイーツを堪能した。メグム以外の女の子と遊びに行く機会が少なくなっていたハナは、とても新鮮さを感じていた。


「次は、こっちですよハナ」


 愛歌のエスコートに甘えてついて行くと、そこは、


「ここって、ドリームアリーナ、だよね?」


 ハナと愛歌の目の前には、大きな建物がそびえ立っていた。ハナでも知っている有名な建物、ドリームアリーナ。多くのライブやイベントが行われる場所で、ここで歌うことができたら、一流の仲間入りであるとも言われている。どのミュージシャンやアイドルも、最初はこの場所を目指す。


「今日はここで、姉さんのライブが行われるのですよ」


「えっ、姉さんって、歌羽さんが……!」


 ハナは驚いた、歌羽は、こんなところでライブを開ける人気と実力も持っているんだ。


「さぁ、入りましょう。チケットも二枚、持っていますから」


 そう言って、愛歌はハナの手を取り進んでいく。


 会場に入ると、観客の数は、とても多く、会場全体も、フラワーギフト学園の体育館より大きかった。今日のライブは、たっきゅーと!ではなく、歌だけのソロライブ。


(こんなところで、一人でライブをできる、歌羽さんはやっぱりすごい……!)


 そうハナは思った。


 しばらくして、ライブがスタートした。


 ステージに現れた歌羽は、以前会ったときより、とても輝いて見えた。激しいロック、切ないバラード、元気が出るポップソング。歌羽はその全てを見事に歌い分けていた。ハナは、自分がフラワーギフト学園にきて、歌とダンスの練習をしたことで、歌羽のレベルの高さを改めて実感できた気がした。


 途中、歌羽がマイクを持ち、MCとして、話すコーナーがあった。


『みんな、今日はライブにきてくれてありがとう! ところで、先日行われた、フラワーギフト学園のイベント。見た人はいるかな~?』


 そう言うと、会場全体が大きく沸く。


『やっぱり、たくさんの人が見てくれたみたいだね。私も見たよ、後輩のたちの輝きを。すっごく、きらきらしてた。自分にも、あんなときがあったなって』


 歌羽は少し感慨深げになる。


『でもね、まだ、追いつかれるわけにはいかないんだ。私がどんどん前に行くことで、あの子たちも、どんどん私を追い越そうと向かってきてくれる。一緒にどこまでも成長できるんだ。だから私は』


 歌羽は、右手の人差し指を大きく上に掲げる。


『もっと、先の舞台へ行くよ』


 すると、観客から大歓声があがる。ハナは、歌羽のその言葉が、たっきゅーと!のアイドルたちに向けられたものだとすぐにわかった。


 歌羽は卓球では、全日本選手権のジュニア部門で優勝。歌手としては、ドリームアリーナでのソロライブ。たっきゅーと!のアイドルとしては、リーグ覇者のルージュ&ノワールのエース。どの道でも、誰よりも前を進んでいく。


 それに、少しでも近づきたい。


(今度は、歌羽さんとたっきゅーと!の舞台で戦いたい……!)


 ハナはライブを楽しみながらも、静かに燃える心を感じていた。


☆ ☆ ☆


「う~ん、楽しかった!」


 ドリームアリーナから出ると、ハナは空に向けて身体をいっぱいに伸ばす。とても充実した一日だとハナは感じた。


「もう、愛歌。歌羽さんのライブに誘ってくれたのなら、そう言ってくれればよかったのに……。デートって言われたから、びっくりしちゃったよ」


 ハナは少しだけ、愛歌に頬を膨らませる。


「サプライズというやつですよ、ハナ。それに、デートがしたかったのは嘘ではありません。私は、すごく楽しかったですよ」


 そう言って、愛歌はふんわりと笑う。


「うん! 私だって楽しかったよ! 誘ってくれてありがとうね、愛歌」


 そして、ハナは、前方に見知った二人を見つける。あれは、


「メグ、エミ!」


 ハナがそう声をかけると、メグムとエミは、こちらに気がついた。


「ハナ! 愛歌! デートってもしかして、歌羽さんのライブのことだったの!」


「奇遇だね! 私とメグムも、歌羽さんのライブを見に行ってたんだ!」


 偶然の出会いに、四人は驚き、喜び、そして、自然と話は歌羽のライブについてになる。


「えっへへ。すごかったなぁ歌羽さんの歌声」


「ダンスだってキレキレだったよ!」


「あれで、卓球も強いんだもんね!」


「私たちの目指す姿は、あそこにあるでしょう」


 愛歌の言葉に、四人は頷く。


「そうだ、フラワーギフト学園に帰ったら、少し身体を動かさない? 私、なんだか、頑張ろうって気分で!」


 ハナがそう興奮気味に言うと、


「えっへへ。わかるよハナ。私も、こう、うずうずしてる!」


「うん! 私も、いまここで元気に踊り出したいくらいだよ!」


 メグムもエミも賛成する。


「それでは、帰りましょうか。私たちのフラワーギフト学園に」


 愛歌の言葉とともに、四人は進みだす。一歩一歩、確実に。


(この仲間がいれば、私たちは歌羽さんに、きっと追いつける。ううん、いつか、追い越してみせる……!)


 仲間と一緒に、ハナの笑顔が咲く。


 たっきゅーと!のアイドルたちの物語は、まだ、始まったばかりだ。

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