6話 アンコール!

 ハナが控え室に戻ると、そこに秋風学園長がいた。


「お疲れ様、いいウィナーライブだったよ、ハナちゃん」


「あ、ありがとうございます……!」


 秋風学園長に褒められて、ハナは誇らしい気持ちになる。


「みんなも、本当にお疲れ様。今日のイベントは大成功だったわ」


 秋風学園長は労いの言葉をかける。


「でもね、最後にまだ、やり残してることがあるのよ?」


 そう言って、秋風学園長は、モニターを指さす。そこから、アンコールという観客の声がどんどん大きくなる。それはやがれ、モニターを通さなくても聞こえるほどになる。


「今日の結果は、フラワー組とギフト組、どちらも5勝ずつの引き分けね。それなら、敗者はいない。みんなに、ウィナーライブを行う権利はあるわ」


 秋風学園長の言葉に、一年生たちの目は輝き始める。


「行ってきなさい、みんな。アンコールにはちゃんと答えなきゃだめなのよ、アイドルは」


 そう言って、ウインクを一年生にする。


 ハナたちはお互いに顔を見合わせて、みんなで頷く。そして、笑う。


 ハナたちは控え室を飛び出し、もう一度、光が差すステージへと向かった。


☆ ☆ ☆


 盛大に行われたイベントの打ち上げが終わると、ハナは一人、フラワーギフト学園の中庭のベンチで座っていた。


 興奮で火照った身体を冷ましたいと思ったからだ。


 祭りの後の静けさが、いまはどこか心地よかった。目をつぶれば、今日の出来事を全て思い出せる気がした。


 イベントが終わった後に会った家族は、とても喜んでくれていた。妹は、私もフラワーギフト学園に行く、なんて言い出すくらいだった。


 それでも、そうやって自分も、誰かにたっきゅーと!の楽しさを伝えられる人になりたいと思った。


 ハナがそんなことを考えていると、そこに、


「ハナ。ここにいたんですね」


 ふんわりと、愛歌がやってきた。


「愛歌! どうしたの、こんなところに」


 愛歌はハナの隣にゆっくりと腰を下ろす。


「ここから見る星空は。とても綺麗ですね」


「うん! 晴れてると、遠くまで星空が見えるんだ。たまにここにくると、すごく落ちつく」


 二人は静かに、星空を眺める。すると、愛歌が話だす。


「私がハナのことを知ったのは、姉さんに聞いてからです。面白い子が受験をするから、気にしてみるといいよ言われました」 


 歌羽が自分のことを気にかけてくれたみたいで、ハナは少し嬉しくなる。


「それからハナとは、二度たっきゅーと!を行い、学園生活を過ごしましたが、姉さんの言う通り、本当に面白い、可愛らしい人でした」


 そう言って、愛歌はハナに笑いかける。その優しそうな笑顔を見て、ハナは思わずドキッとする。


「そ、そんなこと……。愛歌の方が、すごく綺麗だし、可愛いよ……!」


 ハナは照れてしまい、愛歌から顔をそむける。


「そ、そうだ、愛歌はどうしてここにきたの? 私に、何か用事?」


 そう尋ねると、愛歌はゆっくりと頷いた。


「はい。私は、ハナにお願いがあってきました」


「お願い……?」


 ハナは心当たりがなくて、首を傾げる。そして、愛歌は、言葉を続ける。


「今度の週末に、私とデートをしませんか?」


 ハナは、一瞬ときが止まるのを感じた。そして、はっとする。


「で、デート……!?」


 ハナの驚きとドキドキが混じった声が、夜の中庭に静かに響いた。

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