6話 ダンスの教室!
「奇遇ですね、皆さん」
ハナとメグム、エミの三人がダンスの教室へと向かうと、そこには愛歌がいた。
「愛歌ちゃん、はじめまして! 美甘メグムです。よろしくね!」
「こちらこそです、メグム」
メグムと愛歌がお互いに挨拶をしていると、勢いよく教室の扉が開かれる。
「おっは~! みんな集まってるかしら~ん?」
現れたのは、ピンクのレオタードに身を包み、アフロ頭と大きな唇が特徴的な、
(お、女の人……? でも、男の人のような……その、中間?)
ハナは、急に出会ったインパクトの大きい人物に困惑する。
「アタシはダンスの講師、早乙女乙女よん! さあて、今日もレッツダンシングなう~!」
そう言って乙女は、その場で激しいステップを刻みだす。そして見事なターンを決め、セクシーポーズを取る。
ハナたち生徒から、歓声と拍手が起こる。
「う~ん、ありがとうねん! それではさっそくだけれど、レッスンに入りましょうか? 初めての子もいると思うから、楽しいやつをね?」
そう言い、乙女はCDデッキを取り出す。
「いまから、ランダムに曲が切り替わる音楽を流し続けるわ。それに合わせて、自由に振付をつけて、ダンスを踊ってみて、楽しくねん?」
そして、乙女が再生ボタンを押すと、賑やかなサンバのリズムが流れ出す。
(自由にダンスを踊る……! いままで、やったことないことだ!)
ハナは流れてきたサンバのリズムに、なんとか身体を動かす。決められたダンスをマスターするよりも、想像力を使いなかなか難しい。
(でも、踊るのって、ちょっと楽しいかも……!)
ハナがそう思った瞬間、音楽が切ないバラードへと変わる。
「さぁみんな、ついてきてね~ん」
短時間で、音楽がどんどん切り替わっていく。情熱のタンゴ、クラッシック、演歌。その数はとても膨大だった。その一つ一つに、自分でイメージをつけて、ダンスで表現をする。
ハナはときに変な踊りもしてしまったけれど、なんとか音楽についていった。
「よしそこまで! みんないい踊りっぷりだったわ~ん」
音楽が終わると、ハナは疲れて床にへたってしまった。それでも、
(なんか、すごく気持ちよかった……!)
これが、ダンスの楽しみなんだとハナは思った。
「じゃあ、最後にエクセレントダンスをしましょうか? さっきのように曲が切り替るタイミングで、ノーエクセレントな人を私が指さしていくから、その人はそこでダンス終了。最後まで残れた人が、エクセレントガールよ~ん」
つまり、ダンスが上手な人だけが生き残ることができるサバイバルゲーム。
(よ~し、頑張ろう!)
ハナはできるだけ、最後まで残りたいと思った。
「それでは、ミュージック、スタート!」
音楽が流れ始める。最初はポップな曲調だった。リズムに合わせて、ハナは身体を動かす。そして、また曲が変わる。すると、
「ノーエクセレント!」
乙女は宣言通り、ノーエクセレントな人を指さしていく。指名されたら、そこでダンスは終了だ。
曲が変わるたびに、乙女からノーエクセレントが告げられる。ハナは一生懸命に頑張ったが……。
「ノーエクセレント!」
「ええ! がーん!」
ついに、ノーエクセレントを告げられてしまう。ダンスをやめ、ノーエクセレントガールが集まっているところに移動すると、メグムがいた。
「ハナ、お疲れさま。えっへへ。私もさっきノーエクセレントをもらっちゃった」
「う~ん、悔しいよう」
ハナが悔しそうに体操座りをすると、メグムにちょんちょんと、突かれる。
「見て、ハナ。すごいよ、あの二人のダンス!」
メグムに指をさされ、残ったメンバーを見ると、それは、エミと愛歌の二人だけだった。
流れてくる曲に合わせ、エミは元気いっぱいに身体を動かす。すごく楽しそうに踊っている。
愛歌は、まるで一つ一つの曲の感情を読み取っているかのような、繊細なダンスを表現する。
一見、対照的なダンスの二人だが、その発想力とダンスの技術は、飛びぬけていた。
(やるね、愛歌! でも、負けないよ……!)
(私だって、エクセレントガールを譲るつもりはありません)
二人はお互いに、最後に残った相手を意識し合い、さらに激しいステップを刻む。
「す、すごいなぁ……」
ハナがそう呟いた瞬間、音楽も終わる。そして、二人は最高の決めポーズをとる。一瞬、静まりかえる教室。みんなの視線が乙女に集まる。
「……二人とも、エクセレントガール!」
その宣言と共に、教室内が拍手で包まれる。
エミと愛歌のダンスは、圧巻だった。
「えっへへ。二人ともエクセレントガールだなんて、すごかったね、ハナ。私たちもいつか……」
「うん、エクセレントガールになりたい……!」
ハナとメグムは輝く仲間を見て、自分たちも頑張ろうと、改めて思うことができた。
「今回は引き分けだね、愛歌! 愛歌のダンス、すごく繊細で、綺麗だった! 参考にさせてもらうね!」
「私こそ、エミのダンスは元気いっぱいで、私にはないものがたくさんありました」
エミと愛歌はお互いの健闘を称えあう。
「お疲れさま、二人とも! えっへへ。すごいダンスだったよ!」
「ありがとうメグ。でもちょっと疲れたかな。汗もたくさんかいちゃったし……」
そこで、エミは、ピンと何か思いついたように手を叩く。
「そうだ、いまからみんなで、お風呂にいこうよ!」
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